オーガニックを超える化学物質ゼロのCBDを目指す。「WOW」のOEM・原料販売へのこだわり

さまざまな健康効果をもたらすことが期待されているCBD。CBDの市場拡大に伴って、ますます参入する事業者も増えていくことが予想される。しかし、CBDの商品を開発するにあたって、本当に良い原料は選べているだろうか。

今回インタビューしたのは、有機・自然由来・オーガニックの成分に徹底的にこだわる株式会社WOWの澤田社長。人々の心身の健康を本気で志し、2020年12月にCBDの原料販売・OEM事業を展開するWOW社を設立。自身を「原料オタク」というほど配合成分の質にこだわりを持つ。徹底的に「質」にこだわる思いや知られざる苦悩とはーー?

澤田聡/株式会社WOW 代表取締役
東京都東大和市出身。自身の子供を授かったことをきっかけに、心身の健康への関心が強くに辿り着く。自分の心と身体を大事にすることで、大切なパートナーや家族、仲間、社会、自然環境のためになると考え、「自愛」というテーマに辿り着く。2020年からCBDの原料販売・OEM事業を開始。CBDブランド「御自愛」も展開中。米国カンナビノイド科学博士、分子生物学者、NASAウェルネス研究のメンバー、栄養補助食品技術開発者とともに開発した、米国初USDAオーガニック認証ヘンプの原料を活用して事業を行っている。

CBDの「質」を追求するWOW社のプロセスとその苦悩とは?

ーーそもそもどのような経緯で「健康・ウェルネス」に関心を持ったのでしょうか?

実は、会社を創業するずっと前の生活は、朝も晩もひたすら働いて、夜は当時のお客さんともお酒飲んで、健康とは程遠いような生活をしてました。当時はお金や成功を得るためみたいのが目標だったと思うんですけど、自分の体とか健康を犠牲にして、それと引き換えに対価を得るというような。それを長く続けていくことって難しいと思いますよね。

幸いにも子供を授かったタイミングで、仮にそれでお金を得たとしても、自分の体そのものが健康でなければ何も意味がないですし、家族も幸せにできないなって気づいたんですよね。そこから、「じゃあ健康ってなんだろう」っていう風に考えると、まず自分のライフスタイルを見直して、気づいたら前職では健康食品の事業を立ち上げていました。

ーー実際に前職でも健康系の事業を立ち上げていたのですね。そこからCBD業界に参入しようとしたのはどういう流れだったのですか?

前職での健康食品の事業を進めるにあたって、アメリカのロサンゼルスなどに視察に行く機会があったんですね。やっぱり特にロサンゼルスって、健康志向の人が多いんですよ。ウエストハリウッド近辺から海沿いにかけて、健康意識の高いお店とかがずらっと立ち並ぶような町とか、ストリートが結構あって。健康食品の事業をするにもアイデアや気づきをもらえるかな、という目的で行くようになったって感じですね。

そこで、初めてCBDに出会った、という感じです。初めはよくわかんなかったんですけど、 調べていくうちに、これめっちゃええやんって。別に健康のためになるのはCBDだけではないとは思うんですけど、今考えうる中で健康のためになる最適解はCBDだなって今は思っているので、事業としてやらせてもらってます。

ーー健康のために「最適解はCBD」と考えてるのはどういう理由なんでしょうか?

ポイントは2つかなと思ってまして、1つは「完全に天然の素材」だというところ。もう1つは「健康へアプローチできる幅がすごくが広い」こと。

健康にアプローチできる原料って他にもたくさんあると思うんですけど、特にCBDは、いわば「健康のブルーオーシャン」的なところをカバーできるっていうのは、すごい大きいなと思ってます。CBDの魅力は根本的な治療になるっていうところだと思うんですよね。表面的な枝の部分を直すのではなくて、根底にあるものを整えていくものなので。アプローチできる範囲が広いというところにすごく魅力を感じました。

ーーなるほどですね、ありがとうございます。一方でCBD事業をスタートすることへの抵抗感やためらいといったものはあったのでしょうか?

私の性格かもしれないですけど、正直あんまりなかったです。まあ、失敗したら仕方ないかな?くらいでした(笑)

それよりも、やっぱりアメリカのマーケットも見てたので、これだけユーザーに評価されて、市場が盛り上がっているということへの期待感とか可能性しか考えてなかったので抵抗感はなかったですね。

CBD原料を輸入するために渡米は数回重ねるんですけど、3〜4ヶ月に1回ぐらいのペースで行ってたんですね。 行く度にCBDの専門ショップとか扱われてるお店とか、お店の規模感とかがどんどん増えていっていて。しかも向こうのお店って、めちゃくちゃおしゃれですし、規模も大きいですし。全然日本の比にならないくらいです。

ーー当時もすごくアメリカのマーケットは伸びてたのですね。

どれだけの種類があるのか分からないくらいブランドが増えてましたね。高級オーガニックスーパー、例えばErewhon (エレホン)でもCBD製品を販売しているのですが、店員さんが全部説明してくれるんですよ。結構CBDって高額商品ですし、日本と違ってCBDの含有量が高いものって、どちらかっていうと医療に近い範疇で扱われるんですよね。なので、鍵がかかったショーケースに入れられてて、勝手に手に取れないんです。店員さんに説明を聞く中でも、CBDの良さや体験、市場感を直接聞くことができたのは大きかったですね。

ーーやっぱり、現地に足を運ぶからこそ得られるものは大きいんですね。原料メーカーとの取引のためにアメリカに行っていたとのことですが、大変だったことや苦労したことも多かったのではないでしょうか?

そうですね、2つくらい大変だったことがありまして、1つは今取引をさせてもらってる原料メーカーを見つけるまでの過程がものすごく大変でした。もう1つは初めて日本に原料を仕入れて、輸入した時。この2つがポイントとしては大きかったですね。

原料メーカーを見つけるために、アメリカに行く度に2〜3社ぐらい商談を組んでいってたんですけど、やっぱり日本の法律や規制といったレギュレーションに沿って作ってくれるっていう企業さんはほとんどいないんですよ。

過去大変だったエピソードを楽しそうに語る澤田社長

ーー具体的にどういう企業さんが多かったのですか?

最初は皆さん「茎から作ってますよ」って言うんですよ。なるほどと見てみると「あれ茎から出してないじゃん」みたいな。製造工程を見るとわかるんですよ。実際行くと茎から作ってないんです。

あとはCBD抽出している工場を見せてくれるって言っていたのに、実際現地に行ったら「今は工場を移設中で見せられないんだ」と言って、「新しくこっちに移設する予定の空き地だけ見せてあげるよ」とか。

明らかに嘘だって察しました(笑)

あとはロサンゼルスの工場で商談をしていた業者さんは、オレゴン州かどこかに畑があるって言っていたので、「オレゴンまで行ってその畑をみたいです」といったら、なんか向こうの天候がどうとかで見せてくれなくて。

で、そういうのを10回ぐらい繰り返しまして、ようやく全てフルオープンで見せてくれて、ちゃんと日本のレギュレーションに沿ってやってくれる最高のパートナーさんに出会えたという訳です。

ーーそれって、最終的に今のパートナーさんに決まるまで、かなり時間がかかったんじゃないですか…?

そうですね。2年近くかかりましたね。まあ言ってしまえば、クオリティにここまでこだわらなければ、もっと前から仕入れはできたんですよ。ただ、そこは一切妥協しなかったですね。

ーーそこを妥協しなかったのは、恐らく澤田さんの強い意思があってだと思うんですが、何がモチベーションだったのですか?

真摯に、まっすぐに、事業しようと思っていたんですよ。CBDの印象って「イケてる合法な大麻」だよねという認識が強くて、やはり数年前は特にそういうニーズが強かったですし、アメリカでもその印象はありました。

そういう印象を持たれてる以上、自分がクリーンで全うにやらなかったらCBD全体が正しく広まらずに、業界自体が成長していかないだろうと思ったので、絶対に少しでもネックがある原料は使いたくないという思いがありました。

ーーもう1つ大変だったのが、輸入した時。

そうですね。輸入のアドバイザーのような方にはサポートしてもらってたんですけど、単純な輸入よりもCBDはもっとこうハードル高いんですよね。まずはその麻薬取締部に申請してとか。確かに特殊な成分なので、検疫とか税関でも根掘り葉掘り聞かれまして。

今は少しマシになっているんですけど、麻薬取締部を通すだけで1ヶ月以上かかるんですね。その後に原料を成田空港に持ってくるんですけど、成田空港の検疫と税関でもやっぱり1ヶ月近く止まってしまいまして。もうあれこれ聞かれます。早くビジネスしたいのに、というもどかしさは感じてましたし、原料も高くてお金払っているのに、本当に手元に入ってくるのかみたいなストレスはずっと抱えていましたね。

試行錯誤を繰り返して、ようやく輸入許可がOKってなった時は、もうめちゃくちゃ感動しました。

ーー原料を選定するために何度も視察して、トータル2年かけたということでしたが、特にここにこだわったぞみたいなポイントをちょっと教えてもらえると嬉しいなと思います。

やっぱり「ヘンプの質」ですよね。具体的には土壌だと思うんですよね。一応、USDAっていうオーガニック認証を取れているんですけど、正直言ってオーガニック認証って分かりやすいだけであって、それだけでは「ヘンプの質」は決まらないなと思ってます。単純に2年間農薬を使わずに、化学肥料も使ってないとなれば、基本的に認証は取得できるんですよね。認証取るのって農家さんにしてみれば大変なことなんですけれども。

農薬や化学肥料を使わないというオーガニックは当たり前品質だと思っていて、その上で農法には本当にこだわりました。それがバイオレメディエーション(*) という手法ですね。簡単に言うと、微生物とか菌によって土壌をキレイにして、元々のその土地にある土の栄養だけで植物を育てましょうねという農法ですね。それ自体がすごく大きいなと思ってます。

(*) 微生物や菌類や植物、あるいはそれらの酵素を用いて、有害物質で汚染された自然環境を、有害物質を含まない元の状態に戻しながら栽培する農法。

当然そこで使われるお水に関しても、枯葉とか虫とかの天然なものをあえて水に入れながら、その菌によって浄化させた天然に近いお水を使うとかっていうのもこだわりがありますね。本当に栄養価が高いヘンプにするためには大切な工程です。ここまでやり切るのって、農家さんの農業に対するマインドだと思うんですよね。ただ作ればいいだけじゃなくて、本当にいいものを作りたいという思いですよね。

ーーちなみに、他にもこだわりがあるのでしょうか?

あとはCBD原料を抽出する工場の「抽出工程」だと思いますね。業界で初だったらしいのですが、ハイドロカーボン・炭化水素って呼ばれる化合物を使って、コールドプレス抽出という低音でじっくりCBDを出していくという手法を取ってます。

ヘンプの素材自体の繊維を壊さないためというのが大きいですね。いい素材をせっかく使っているので、それを壊さないようにしっかりこう抽出していくみたいな。そういうプロセス自体もすごくこだわってますね。

ーー抽出方法をチェックするのも大切ですね。オーガニックというレベルを通りこして、本当の意味での天然に近いものを提供していると思うんですが、それって具体的に体にとってはどういう良いポイントがあるんですか?

基本的には栄養価が高いんですよね。農薬とか化学肥料を使ってるのって現代社会の利便性みたいなところを目的としていると思っていて。本来そういうものを摂取してこなかった人間が、それを体にいれるのはリスクがあるはずですよね。オーガニックがいいよとは世間では言われますが、「オーガニックは人間にとって普通のことだ」と思ってます。

WOW社での商品開発の強みと弱みとは?

ーー実際にOEMとして、どのような商品が製造できて、実際にどういう商品を作ってきたのでしょうか?

商品の形という観点でいうと、ティンクチャー、グミ、キャンディ、 サプリメント、ドリンク、お茶、プロテイン。美容系ですと、ボディオイル、ボディクリーム、化粧水、 乳液、フェイスマスク、バスボム、バスソルトとかでしょうか。今挙げたものが全てではなくてモレもあると思いますが、大体のものは作ってきたかなと思ってます。

ただ、我々の目指すウェルネスの世界とはちょっとズレてしまうので、ベイプの実績はあまりないですね。

米国初USDAオーガニック認証ヘンプの原料を使った、CBDはちみつ

ーーかなり商品のバリュエーションは豊富だと思うのですが、今までお取引した事業者さんはどういった理由で御社にお声がけしていたのですか?

プロダクト面でいうと、やっぱりオーガニックとか原料そのものの良さに魅力を感じていただいた、というケースはよくあります。

サービス面で言うと、本気で人のためになるものを作りたいって思っている企業さんは、弊社の商品開発へのこだわりに共感してくれます。できる限り添加物とか科学的な原料を使用しないっていう形で、我々も処方を組みますし、そういうご提案をさせてもらうことが多いですね。

ーーなるほどですね。例えばこういう風な商品を作りたいってなったら、商談の時にご相談に乗って下さるという形ですか?

そうですね。商品開発に対して踏み込んだ提案ができるっていうのは、我々の強みかもしれませんね。

健康食品の商品開発をして数十億の売上を作った経験のあるメンバーがいたりと、持っている経験や知識は豊富ですね。改めてさらに勉強してるので日々アップデートもされてます。勉強って言いましたけど、それを楽しんじゃってるメンバーなんですよね。

ーー「好きこそものの上手なれ」とも言いますもんね。

はい、そこはやっぱり強みですね。やっぱりいい商品をつくるために踏み込んだ提案をすることはかなり意識していますね。

ただ、いい商品を作ることでデメリットもあって、企画からその製品ローンチまでのリードタイムが長くなってしまうことが起こります。試作を何度も繰り返しますし、我々が提案したからと言って、それがバチっと製品化できるかっていうと、そういうわけでもない。 いろんな課題が出てくるんです。で、その課題をクリアしていくっていうプロセスを得ると、やっぱ時間かかっちゃうんです。そこは弱みというか、課題かなとは思っていますね。

これまでもコンペになるケースも多くあって、「とにかく早く作りたい」みたいなご希望でしたら負けてしまうこともあります。仮にお客さんが「いい商品を作りたい」という方であれば、我々が負けることはなかったですね。

ーーそれはすごいですね。踏み込んだ提案で言うと、具体的にはどういった提案することが多かったですか?

商品を実際に買う消費者、エンドユーザーさんのペルソナ(*) の設計から、そのユーザーさんが抱えている課題みたいなところをあぶり出して、その課題解決のためのアプローチはなにか?みたいなところの要素を出していって、それ自体を処方に組み込んでいくみたいな形です。

嬉しいことに「ユーザーが本当にほしい商品を作るというプロセスまで伴走してくれるのは心強い」という言葉は、お取引をしてくださっている会社さんからはよくいただきますね。

(*) 商品を買ったり使ったりする典型的なユーザー像のこと

健康の切り口でCBD産業を盛り上げていく澤田社長の、思い描く未来とは?

CBDの未来を語る澤田社長

ーーぜひ、CBDそれ自体にどんな可能性や未来があるのか、というのを聞いてみたいです。

そうですね、簡単に言うと、医薬品の代替品になると思ってます。これまで医薬品じゃないと解決できなかった部分を、自然の天然成分で解決ができるようになるっていうのは、すごく大きなことだと思いますし、世の中はどんどんその方向に向かっていくんだろうなっていう可能性は大きく感じてます。

「一家に一台」という言葉もありますが、3年後くらいには「一家に一CBD」という世の中になったらいいなと思いますし、本当にそうなる可能性もあるなと思ってます。

ーー「一家に一CBD」というのは夢がありますね。今後の御社の事業展開はどのように考えているのですか?

言えないこともたくさんあるので、ちょっとカジュアルに言わせてもらいますね。わかりやすく言うと、日本国内でヘンプの畑を持ちたいんですよね。そして、できれば日本産のCBDを作りたい。

あとはもっとこう大きい意味で言うと、CBDに囚われすぎなくてもいいかなと思ってるんですよね。ウェルネスっていう観点でみるとCBDだけじゃなくて選択肢はたくさんあると思うので、もう少しこう視野を広げていけたら理想的だなと思ってます。

ーーありがとうございます。それでは最後に、読者の方へ一言お願いします。

CBDの商品開発を検討している方、特に本当にこだわって「良いものを作りたい」という気持ちを持っているのであれば、きと我々がお役に立てると思っています。まずはカジュアルにご相談に乗らせていただきたいなと思っているので、ぜひお気軽にお問い合せください。