ヘンプの”メッカ”コロラド州からCBD原料を。公知貿易が多くの障害を乗り越えて得た強みとは?

1985年に創業し、輸出入業を営んできた公知貿易。健康食品の原料を見つけては参入に繰り出してきた。企業としての歴史、経験、上場企業との取引といった実績がある同社が、CBD分野へもいち早く参入。彼らのCBDの出発点は、嗜好品大麻をいち早く合法化した州のコロラドである。CBD原料の輸入だけに留まらず、国内での販売や商品製造のサポートまで携わっている。そんな同社が辿ってきたCBD参入までのプロセス、持っている強み、そして思い描いているCBDの未来とはーー?

杉山公一/株式会社公知貿易 代表取締役社長
アメリカのカルフォルニア州在住。公知貿易を創業した杉山勝巳氏(現会長)より経営を継承し、代表取締役社長に就任。社長として、健康食品・医薬品に関する原料の調達、国内販売、商品開発サポートを推進。同社の強みの1つになっている「各国の優秀なサプライヤーとの密なパートナーシップ体制」を維持・構築することも目的にアメリカに在住し、時には自らの足で世界中の原料生産地や工場への視察・連携を行っている。
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40年弱の歴史がある公知貿易が、話題のCBDに参入した経緯とは?

ーーまず、御社がどのような会社なのかを簡単にお伺いできればと思います。

公知貿易は、健康食品や医薬品に関する原料の輸入、国内での販売、商品開発するときのサポートを主に行っている会社です。もともと1985年に私の父が始めた会社なのですが、実は創業当初とは事業も変わっております。

創業当初は健康食品市場はアメリカでも日本でも規模が小さかったので、ヨーロッパやアメリカなどに対して日本の医薬品関連の製品を輸出していました。その後、1980年代後半から1990年位にかけて、アメリカの健康食品の市場がだんだん大きくなったので、1990年代後半頃までは我々の輸出業の割合が医薬品関連から健康食品といったものにシフトしてきました。しかし健康食品のアメリカの市場が成長し、過当競争の状態になってしまったんですよね。

時を同じくして、日本でも健康食品市場が確立され始め「輸出」と同時に「輸入」へも力を入れ始めました。そこから今のように、北中南米、ヨーロッパ、オセアニアのみならず、中央アジア、南アフリカなど諸外国との取引を積極的に行うようになりました。

ーーCBDへの参入はどのような流れで決めたのでしょうか?

私自身がアメリカに住んでいるということもあり、アメリカで行われる健康食品の展示会にはリサーチのためによく参加しているんですよね。2016年頃の展示会に参加したときに、初めて「CBD」という文字を見まして、今まで聞いたことがなかったのでリサーチしたというのが最初ですね。

扱ってる会社も少なかったので本当にまだ黎明期の時ですね。弊社の事務所がコロラドにあるのですが、コロラドは嗜好品としての大麻を解禁したのが特に早い州で、ヘンプのメッカと呼ばれるくらいCBD産業が盛んな都市です。そこで弊社のスタッフと一緒に市場調査を行ったところ、だんだんとCBDの魅力や事業性も明確になり参入を決意しました。

各国での展示会に参加している

ーーまだヘンプについての理解が今よりも少ないCBDの黎明期に、参入に踏み切れたのはすごいですね。

前提、健康食品を扱ってる企業は傾向として常に新しい素材を探しています。よって、そんなに抵抗がある人は少ないんですよね。

しかし、日本での大麻のイメージは「ダメ、ゼッタイ」であり、犯罪と結びつくような感覚をもっているという点はもちろんありました。社内でも、簡単にはいかないだろうって言う話をしてたんですけども、CBDそのものは違法ではなく、また多くの効果が期待できるため、アメリカ市場を知る我々としては思いとどまる理由はありませんでした。

ーーアメリカ市場を知っているからこそというのはありますね。具体的にはどんなCBDの魅力を感じていたのでしょうか?

リサーチのときに効果効能を見てみると、睡眠改善、リラックス、痛みの緩和などのさまざまものがあると。もちろん健康食品で睡眠やリラックス効果があるものは当然あるんですが、ここまで効果に幅が広くて、実感もあるCBDには期待感を当時から持ってました

あとは、てんかん治療にも使われていて、ペットにも効果があると。人間であれば思い込みで効果が出てしまうこともありますが、犬や猫はそういったプラシーボ効果もないので本当に効果があるんだなというのを実感してました。

アメリカは土地がら車で長距離を移動するケースが多い国です。犬との移動は、そのストレスから吠えたりナーバスになったり、尿の頻度が増えたりしてしまうと言います。でも、犬にCBDが入ったグミを食べさせると落ち着いて、吠えるのが減ったというエピソードはよく聞いてました。

やはりストレスが多い現代社会にはすごくニーズが期待できるものなのかなとは当時から思っていました。

日本在住の社員も現地アメリカへリサーチに行っている

ーーありがとうございます。実際にCBDに魅力があったとしても、事業化するために苦労したポイントも多かったのではないでしょうか?

弊社は長い間輸入を生業としているので、もちろん輸入手続きの経験はありますし、貿易担当者も日常的にそういう経験をしていました。

ただ、一筋縄ではいきません。CBDとなると色々と法的な部分が絡みますので、輸入と言う形でひとくくりにはできない。厚生労働省、関東信越厚生局、麻薬取締部の輸入許可を得る必要があり、書類等を提出していかなければいけないのは大変でした。アメリカの原料メーカーに理解していただきながら、時間をかけてトライをして、ようやく許可を得ることができたというのが輸入までの経緯でしたね。

ーー輸入業を行っていてもCBDの輸入には苦労するのですね…

CBDの輸入は大変です。輸入のためにアメリカの第三者機関での検査が必要なのですが、その方法にも時間をかけましたね。

輸入開始した当時、CBD市場の盛り上がりに乗っかって、アメリカでは本当にたくさんの分析機関が乱立していました。そうなると分析のやり方もバラバラで、各機関において検出される値が異なっていたり、分析方法が異なっていたりといった状況です。話を聞くだけでは不十分ですから、実際に複数の分析機関に依頼をかけた上で、分析精度が高くかつCBD業界の中でも信頼性がある機関にお願いすることとなりました。

THCやCBDの含有量はもちろん、重金属、農薬などの試験も行ってます。安全で、日本の規格にあっていて、良い原料を仕入れるためにはしっかりしたテストが必要だと当時から考えてました。

日米の垣根を超えるパートナーシップ。コロラド州と日本にオフィスを構えている公知貿易ならではの強み。

ーー御社とお取引がある事業者さんは、御社のどういった点を魅力に感じているんでしょうか?

ありがとうございます。よくお客様からいただく声としては「アメリカのリアルな情報をもとに伴走してくれるのは嬉しい」という点ですね。

我々はコロラド州に事務所があるので車で1時間半程度走れば、取引をしている原料メーカーと細かくやり取りできます。CBDは100%輸入品ですから、現地にいってすぐに産地や工場を見たり、メーカーと直でやり取りできるというのは重要だと考えてます。私自身もずっとアメリカにいて取引先と顔を合わせることも多いですが、やっぱり日本にいるとどうしても見えない部分があるんですよね。日本にいる弊社の社員にアメリカに来てもらって、彼らが日本に帰った後は「実際に現地を見れることで、日本のお客さんに語る言葉にリアルさが増す」と言いますね。

数日間アメリカにいるだけで解像度が高まるのですから、コロラド州に事務所を構えていることは本当に意味のあることだと思ってます。原料メーカーとすぐにやり取りできますし、CBD先進国であるアメリカの最新のトレンドも追えるという訳です。

加えて、日本のお客様が直接的にメリットを感じるものではないかもしれませんが、日本の情報をアメリカの取引先に細かくフィードバックできるということも大切だと思っています。アメリカでは、CBDに対する規制が日本とは異なるので、現地の取引先は頭で理解できても、ついついアメリカの感覚に頼ってしまいがちです。現地の企業任せにしてしまうと、あとあと問題が生じる可能性があるので、そこを弊社の社員がコミュニケーションを取ってリスクを回避しているという形です。

アメリカの現地で交渉もできるしパートナーシップも組みやすいという強みですね。日本からアメリカ、アメリカから日本と双方向に情報を渡すことは心がけていることです。

ーーやはりアメリカ現地の情報を教えてくれるのは心強いですね。臨機応変に対応できるイメージが湧きます。

ありがとうございます。臨機応変という意味でいうと、お客様のご予算やニーズに合わせて、各社に合った原料を提供するようにもしていますね。本当に品質にこだわってオーガニックのものを使いたいお客様にはオーガニックのものを提供しますし、一方でやはり有機栽培となると原料も高価になってしまうので、その時はご予算に合わせた原料をご提案するようにしています。もちろん農薬や重金属といったものが残留してないかのテストはすべてのロットで必ず行うので、オーガニックではなくても安全性には問題ありません。

ーー予算に合わせた原料の提案も嬉しいですね。実際に商品開発したいとなった際はどのような対応をしているのでしょうか?

こちらは日本で営業をしてくれている武藤からご説明いたしますね。

ーーありがとうございます。武藤さん、御社で行う商品開発について伺えますでしょうか?

東京営業所を拠点に営業を行う武藤慎三さん

弊社のコネクションを活かして、適切な工場をご紹介をするようにしています。やはりCBDという特性上、製造を引き受けてくれる工場が極めて限られるんですね。例えばソフトカプセル化したいとなっても、会社的なイメージ、何かあったときのリスクを考えると、製造会社の内部事情として受け入れができない。そういう中で製造してくれる工場を探すということは非常に難しいポイントですので、そこを弊社がサポートするという訳です。

商品の種類という意味でいくと、ティクンチャーを起点にしながら、ソフトカプセル、ハードカプセル、グミ、などを主に対応していますね。今後は、ガム、化粧品関連、ベイプの商品化も視野に入れています。後は、水溶性のナノ化された原料もあるので、それを使ってドリンクを作ることもどんどん増えていくのでは、と予測しています。

大手企業様がCBDドリンクを検討しているという話はよく聞くところですので、それに向けて弊社でも準備を進めていますね。

CBDビジネスをリードする「コロラド州(アメリカ中西部)」にオフィスを持つ公知貿易が捉える、CBDの未来とは?

ーーCBDへの期待値はどのように考えてますでしょうか?

やはり期待できる効果の幅が大きいことで、本当にさまざまな人が、さまざまな用途で利用していくことがより加速していくでしょう。

すでに、日本でもCBDは医薬品としての治験が開始されています。それだけ効果への期待も大きいということです。睡眠の質を高めるニーズは急激に高まっていますが、CBDはその可能性を秘めていると思います。また、ストレスは年齢性別関係なく多くの人々が抱える悩みです。そのようなストレス社会への対応にもCBDは期待できます。

スポーツの分野においてもCBDはドーピングに抵触しません。(2018年世界アンチドーピング機構により除外)

人と共存するペットも同様です。ストレスや生活習慣病を抱えている可能性があり、その改善も期待できます。アメリカでは、ペット保険の約款内にCBD使用への優遇が明記されてるケースさえあるほどです。本当にいい成分なのだなと実感していますね。

ーー御社としてはどのように事業展開をしていくのでしょうか?

大学との共同研究を開始しました。CBD単体の論文は複数存在するとしても、ブロードスペクトラムのアントラージュ効果(*) 検証などはまだ不十分だと思っていますので、専門家と共同しながらCBDの魅力を探りたいと思います。

また、CBDは水に溶解しないためドリンクへの対応は不向きですが、今回ナノ化されたエマルジョンタイプのCBD原料も上市しました。このようにご提供できる幅を広げ、より多くのニーズに答えられるように事業を展開していきたいと考えています。

* アントラージュ効果とは、複数のカンナビノイドやテルペン類などを併用することで得られる相乗効果のこと

ーーありがとうございます。最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。

日本ではまだまだCBDがヘンプ由来ということに対して敏感に反応する傾向にあります。CBDはハードルが高い、怖いものと思う人も多いですが、そうではない。アメリカではティーンエイジャーや老人、ペットの飼い主など、ごく一般的に受け入れられています。我々が啓蒙を行うというのは少しおこがましいですが、CBDは良いものであるという発信は引き続き行っていきたいです。ついに法改正も現実的となり、日本でもCBDが多くの人々に理解され受け入れられる未来の実現を夢みています。我々の思いに共感し、公知貿易に魅力を感じていただけたのでしたら、一度お話できれば嬉しいなと思っています。

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