日本では大麻草に対してネガティブなイメージを持つ人が多く、CBDについて正しい理解がなかなか進まない現状があります。
今回インタビューしたのは株式会社バランスドのマイクさん。日本とアメリカで育ったマイクさんは、昔から大麻に対する考え方や法律の違いに疑問を抱いていました。
「WALALA」は、そんなマイクさんの経験から生まれたCBDブランド。今回は、会社設立までの経緯や、商品開発の際に苦労されたことなどを赤裸々に話してくださいました。
日本とアメリカの大麻に対する違いに違和感を感じていたのが始まり
ーーマイクさんの自己紹介をお願いします。
僕は東京で生まれたんですが、、2、3歳ぐらいの時にカリフォルニアへ家族みんなで移住し、カリフォルニアで育ちました。 日本とアメリカの両方の文化に触れてきて、カリフォルニアと日本のそれぞれの良さを肌で感じていました。
ーー異なる文化に触れ、その中で大麻に出合ったんですね。
アメリカの中でも特にカリフォルニアには大麻文化が根付いています。ただ使われているということではなく敬愛されていて、大麻文化というものが存在しているんです。
僕が中学生や高校生の時の友達の親で、例えば弁護士、お医者さん、ビジネスパーソンといった人でも大麻を扱っていることが多く、そういった環境で育ちました。
大麻を扱うことは「タバコやお酒と比べると健康への悪影響が少ないからそこまで悪いものではない」っていう認識は昔からありました。
ーーなるほど。カリフォルニアに住んでいたからこそ芽生えた考え方なのかもしれないですね。
実は、毎年日本に帰るときに「大麻を日本に絶対に持ってきたらダメ!人生終わるからね!」と言われていました。その時、日本とアメリカで大麻に関する扱いや法律が違うことに違和感をおぼえました。
ーー事業の立ち上げは、そういった違和感も関係しているんですね…
そうですね。ライフスタイルとして「日本とアメリカで大麻の扱い方に差があるのはちょっとおかしいよな」と感じていました。
僕はよく冗談で「フランス人が赤ワインを飲むようにカリフォルニア人は大麻を吸う」と言っています。カリフォルニアではタバコを吸うほうが健康に害があってよくないことだとみんな思っているので、大麻の良さを伝えたいという思いは昔からあったのかもしれないですね。
ーー「大麻は危険なのでは?」と思っている日本人からすると、ユニークな考え方ですね。
では、マイクさんが中学高校を卒業された後のお話も伺ってよろしいでしょうか。
僕は、UC Davisというカリフォルニアの大学で経済と日本語を専攻していました。 将来の目標として金融関係の仕事をするか起業家になるかの2つの選択肢があったのですが、学生時代にインターンシップを経験したことから、金融関係の道に進むことを決意しました。
ーー就職はアメリカと日本のどちらでされたんですか?
英語と日本語が喋れることを活かして、日本の金融関係の会社に就職しました。スーツを着て丸の内でのサラリーマン生活が始まりました。その当時は、社宅のサービスマンションに住んで朝の5時に起きて出社していました。
ーー結構ハードなお仕事をされていたんですね。
そうですね。
そんな生活が続き、良い人にも良い仕事にも恵まれていたんですけど、体力的に限界を感じてきていましたし、日本の会社の文化にも疑問を持っていました。
たとえば、日本のお酒文化です。サラリーマンにとってお酒はストレス解消の道具だと思うんですけど、仕事が終わってからの飲み会は大変でしたね。週に3回くらい誘われていたので…
今振り返ると、当時は睡眠や健康を犠牲にしていました。
ーー他にはありますか?
僕は「トレーダー」の業務をしていたんです。株式市場が終わる3時過ぎには仕事が片付くんですけど、日本は上司が会社にいたら残っていたほうがいいみたいな文化がありますよね。本当なら夜の6時とか7時に帰れるのに、意味もなく夜の9時まで残っているという生活をしていました。
ーー日本の年功序列的な考え方に違和感を持たれたんですね。
最終的には、僕自身が大きな銀行、つまりマシーンエンジンの中のちっちゃいネジとして組み込まれているように感じました。
「若くても責任を持って仕事をしたい」という気持ちは常にあったので、この頃からスタートアップに挑戦してみようかなと思い始めました。
ーー新卒で会社に入り、早い段階で自分のキャリア形成を見直すようになったんですね。すぐに行動に移されたんですか?
それから3ヶ月後ぐらいに仕事を辞め、カリフォルニアに戻ってスタートアップをやり始めました。
最初に始めたのは、実はアプリの事業だったんです。大学時代の友達と共同創業で、一般ユーザー向けの ペットのsnsから始めました。友人がエンジニアで僕はデザインをやって、ユーザーが何万人かになったタイミングで資金調達に挑戦しようと思っていました。
ーーその後資金調達はうまくいったんですか?
面白いことに、カリフォルニアに住んでた日本人の企業家方と偶然会う機会があり、その方から「日本のほうが簡単だから、日本で資金調達してみなよ」と言われたんですよ。それからまた東京に戻って、いろんな紹介を経て資金調達をやり始めました。
ーーその方との出会いが、事業を拡大していくうえで大きなターニングポイントになったんですね。それからどのくらいアプリ開発に時間をかけたんですか?
4年間アプリの事業をやっていました。エンジェル投資家の方や日本のベンチャー投資家の方から出資していただき、その4年間で合計8,500万円という結構大きな額の資金調達をしています。
その後もマッチングとビデオチャットの融合アプリを開発したのですが、このときは資金調達がうまくいかず、事業を断念しました。
ーーそれから方向転換していったのですか?
2019年にロサンゼルスに住んでいたんですが「企業家として4年間やったから、ここからはベンチャー投資家になろうかな」といったイメージを持っていました。
個人的に、1回ゼロからエグジットまでいった企業家がシードのベンチャー投資家になるのが1番いい流れなのかなと思っていたので「もう1回やるんだったらアプリじゃなくて物作りに挑戦してみたい」という思いがありました。
ーーなるほど。システムや商品を全て変えていこうとしたんですね。
ここまで僕がやってきたアプリは、ユーザーを集めてそこからマネタイズっていうスタイルだったので、もしもその段階で結構売り上げを立てておけば、資金調達の額を抑えることができたのかもしれないなと思い、顧客直結型のDtoC(メーカー直販)をやろうと決めました。
ーー日本とアメリカのどっちでやっていこうと悩まれたんですか?
実は、どっちでやろうかなと悩んでいたタイミングで、偶然、東京に住んでる先輩から「CBDって日本で合法らしい」といった連絡が来たんですよ。
ーーまたまた人とのつながりが、大きな転機になったんですね。
「CBDは大麻由来の成分だし日本ではダメなんじゃないの」と思いつつ、個人的にはこれは面白いかもと思い始めていました。
実は、先輩から電話をもらう少し前から、アメリカで大麻系のDtoCブランドがいくつか立ち上がり始めていたんです。
もしも僕がアメリカでCBDの事業をやるんだったら既に出遅れているけれど、日本ならまだ誰も始めていないからチャンスかも…と思っていました。その時は行動に移さなかったんですけどね。
ーー最終的にCBDで事業を始めようと決めたきっかけはどのようなものですか?
先輩の話を聞いた直後、googleで「CBD Japan」と検索してみたんです。そしたら、CBDが合法っていう記事がいくつか出てきたんですよ。
偶然、法律事務所に友達がいたので聞いてみると、 その当時はまだ厚生労働省がガイドラインを作る前だったので明確ではなかったんですが「大麻草の茎と種から抽出してて、 THCが入ってなければ大丈夫」ということを教えていただきました。
そこでまた先輩に連絡して、CBDを使った事業を立ち上げる宣言をしましたね。
ーーこれだ!と思ったら行動に移すのが早いですね。実際に、何から取り掛かっていったんですか?
僕はまだロサンゼルスに住んでたので、いろんな大麻農家の人たちに電話しました。農家の方々も「種だったら絶対みんな捨ててるだろう」とおっしゃっていましたし、チャンスだろうとみんなワクワクしていました。
ただ、日本とアメリカで大麻に関する法律が違うので苦戦しましたね。
ーー先輩からCBDの情報をもらい農家さんに駆け寄ってみて…実際にどのくらい時間が経過していたんですか?
すでに数ヶ月間ぐらいは動いていましたね。
大麻から抽出したCBDは使えない可能性も考えて「他の植物にCBDが含まれているのか」「合成CBDは安全なのか」といったところを中心に調べていきました。
ーー合成CBDについてもう少し詳しく教えてください。
合成CBDは、有機化学合成で作られた非大麻草由来のCBDのことを言うんです。
当時アメリカのUCLAでカンナビスリサーチアソシエーションっていうのがあったので、大麻研究団体の先生に合成CBDについて質問してみました。
すると先生は「合成CBDと天然由来のCBDは同じで、大麻から抽出してもラボで作っても同じCBDには変わりない」と教えてくれました。
たとえば、レモンから抽出するビタミンCと合成したビタミンCが違う働きをするなら、そもそも成分自体が変わってしまっているから、名前も変わっていると言われて…
ーーなるほど。合成のビタミンCと天然のビタミンCが違う成分だったら、ビタミンCと言えないじゃんってことですね。
天然CBDを使う案もいろいろ考えましが、私たちは非大麻由来の合成CBDを使うことに決めました。
サラリーマンとして仕事をしていたころに感じていたことが会社名につながっている
ーーその後のお話もぜひ聞かせてください。
そこから2019年ぐらいに、カリフォルニアから日本に引っ越し、株式会社バランスドを設立しました。会社名は、丸の内で働いていた時代に、お金を稼ぐために自分の健康を崩していることに危険を感じ、バランスを保つことの大切さを表しています。
これは人生にも言えることですよね。
「心と体のバランスを取り戻す商品を開発し人々に届ける」というミッションを持って、会社を設立しました。
ーー過去の経験や体験が会社名につながっているんですね。
CBDはストレス緩和効果や睡眠の質の向上効果といった働きだけでなく、肌に塗れば抗炎症効果や肌トラブルなどにも効果が期待できるといわれているので、そういったさまざまな魅力を知って、CBDを使えば心と体のバランスを取り戻す商品が作れるかもしれないと思いました。
ご自身のバックボーンから「WALALA」という名前に。ロゴやイメージカラーにもこだわり。
ーーブランド名の由来を教えてください。
WALALAの「WA」は、メイドインジャパンということで、日本の「和」。「LA」は大麻文化やウェルネス文化があり、僕が住んでいた場所でもあるロサンゼルスの「LA」。そしてもう一つ「LA」を足して、楽しい気持ちを表現する「ラララ」と語感を似せて、WALALAに決めました。
CBDを使ってウェルネス文化も大切にしたいというコンセプトのもと活動しています。
ーーロゴはどうやって決めていったんですか?
ロゴは、高級ブランドという立ち位置やイメージを持ってもらうために、欧文書体であるセリフ(serif)を使おうと決めました。たとえば、ルイヴィトンやシャネルも、セリフを使ってるんですよ。
CBDって怪しがられる可能性が非常に高いから、高級ブランドというコンセプトを大事にして安心感を持たせようとしましたね。
ーーマイクさんにとってロゴは結構重要なポイントだったんですね。
それからいろいろなロゴを見てアイデアを出していこうとしていたとき、高級ブランドがよくロゴに動物を使うことに気づいたんですね。
「日本の動物ってなんだろう」と考えたときに日本の干支を思い出し、「トラがウェルネスを守り、猿が気軽で楽しい気分を持っている」といった意味でWALALAのロゴにはトラと猿が描かれています。
ーー箱の色やデザインなどは、ロゴが確定してから決まっていったのでしょうか?
そうですね。最終的に箱の色は薄緑に決まったんですけど、オレンジや紫などの色も試してみました。
植物っていうところで緑色に決まったというのもあるんですけど、人間は緑を見るとリラックスするって言われているんですよ。
箱の色が薄緑に確定する前、商品によって色を変えようみたいなアイデアもあったんですけど、美容室をやってる方が「1つの色に絞ったほうが覚えてもらいやすいよ」って教えてくれたんです。
たとえば、エルメスのオレンジ・ティファニーのブルーって、もうブランドと色がセットになってますよね。なので、この緑をすごく大事にしています。
こうやって、ブランドを立ち上げるうえで、ロゴや色などいろいろこだわって作りましたね。
ーー数あるCBD商品のジャンルの中で化粧品を作ろうと決めた理由はありますか?
僕は女性の悩みが解決できれば日本に”バランス”が生まれるのではないかと思っていたので、母親や女性が欲しがる製品の開発に絞ろうと思ったんです。だから、化粧品の開発に注力しました。
ーー化粧品の知識などはどうやって身につけていったんですか?
当時は全く分からなかったので、化粧品に詳しい共同創業者の方と一緒に会社を立ち上げました。
僕はCBDやビジネスの知識と、彼女のもつ化粧品の知識を合わせて”WALALA”というブランドを立ち上げました。
最初はクリームの販売から始めました。
CBDはスキンケアにも肩こりにも関節炎にも効果が期待できるといわれているので、貴重な体のあらゆるポイントに使いましょうといったコンセプトを元に、”WALALAポイントクリーム”という名前をつけたんです。
多くの苦労の末最高の工場との出会いが。安心して使える商品開発に成功。
ーー2019年に動き出して、実際に販売をスタートされたのはいつ頃ですか?
約1年の準備期間があって、2020年8月に「WALALA」をリリースしました。
2019年に会社を設立し、2020年の8月にリリースしましたが、まず僕たちがやらなくてはいけなかったことは日本でCBDを扱ってくれる工場探しでした。半分以上の工場から「CBDはNG」って言われましたね。
そんな中、CBDを扱うことに前向きな回答をしてくれたところが数社ありました。
ーー断られなかった理由はなんでしょう。
化粧品の成分には、インキ名(INCI)という国際名称があるんですけど「CBDにインキ名があって法律で認められているなら問題ない。あとは厚生労働省からの輸入許可書があるならOK。」と言ってもらえましたね。
数社に試作品を作ってもらって、その試作品を比べたりCBDの配合率を実験したりモニター検査をしたりして、最終的に1つの工場を選びました。
ーー他社と比較して、御社のブランドのCBD商品の強みを教えてください
WALALAの商品は安心して使っていただけるというところが強みだと思っています。
この工場を選んだ理由にも関係しているんですが、最終的に決めた工場は自社ブランドとして赤ちゃんのための化粧品製品も作っています。
もともと敏感肌向けの製品を作っているから、誰でも安心して使えるものが作れるというメリットはありますね。
届けたい人に届いている「WALALA」。その裏にはマイクさんの地道な努力。
ーーどんな人がよくWALALAの商品を買っていきますか?
WALALAのコアファンは、20代ではなく40代女性です。
日頃からCBDを説明する際に伝えているのが「CBDはマイナスをゼロにしてくれる成分」ということです。
やっぱり年を取ると、身体や心にマイナスなことが若いころよりも出始めるんですよね。関節が痛くなったり肌が荒れ始めたり。だから、やっぱり40代とか50代の方こそCBDの効果をより早く感じてくれます。
ーー広告が出せないという壁があると思いますが、WALALAの販売戦略はどうされているんですか?
人との関係性を築くことを大事にしています。やっぱり人とのつながりを作ってそこから人の輪を広げ、また新たに人を紹介していただくことが重要だと思っています。
WALALAの商品はトゥモローランドさん・ビームスさんのオンライン・ 阪急有楽町さん・ホテルニューオータニさんなどで取り扱っていただいているんですけど、これも地道な活動の結果だと思っています。
広告を出せないからこそコミュニティを作って、WALALAと相性がよさそうなインフルエンサーの方を紹介していただいたり、そのインフルエンサーの方が誰をフォローしてるかを見て、またその友達を紹介してもらったりしています。
紹介してもらった人にWALALAの商品を説明するときは、WALALAのコンセプトやストーリーに共感してもらえるかどうかも大事にしています。ほんとに1歩1歩地道に築き上げているって感じです。
ーー商品を使ってほしい人に届くように、相当な努力をされているんですね。最後に、読者へ一言お願いします。
WALALAは誰でも安心して使ってもらえる商品だと自信をもっています。
ぜひ一度試してもらえたら嬉しいです。