CBDは、様々な健康・治療効果が期待されている大麻草から抽出される成分です。大麻草の成分と言っても、CBDには中毒性や人をハイにさせる作用はなく、安全性の高い成分であることが証明されています。
また、CBDは副作用がほとんどありません。万が一副作用が起こったとしても症状が軽く、回復が早いことが知られています。このような点も、CBDは安全性が高いと言われる理由の一つです。
しかし、CBDにまれに起こる副作用の症状の中に、下痢があります。その一方で、CBDは下痢を起こす疾患である過敏性腸症候群を治療する効果があるのではないかという、真逆の見解もあります。
一体どういうことなのでしょうか。この記事では、CBDが下痢を引き起こすという見解と、下痢に効果があるという見解の両方の研究を紹介しながら、CBDと下痢との関係を読み解いていきます。
下痢以外の副作用について知りたい方は以下の記事も合わせてご覧ください。
→ CBD・CBDオイル・CBDグミなどの副作用は?
CBDは下痢を引き起こすのか?
CBDが引き起こす可能性のある副作用の一つに、下痢があります。
2019年に海外のクリニックは、CBDが副作用として比較的軽い下痢などを引き起こすかもしれないということを発表しました。※1
同じく2019年に、CBDを成分とした医薬品であるエピディオレックス(※)の副作用や、身体への悪影響を調べた研究が海外で行われました。※2
※エピディオレックスはCBD(カンナビジオール)を成分とする医薬品で、小児の難治性のてんかんの治療薬として海外で承認されている薬
その研究によると、エピディオレックスのもっとも一般的な副作用の一つは、下痢だと報告されました。ただし、エピディオレックスの副作用が起こる確率は、他の治療薬と比べて低かったことも示唆されています。
2018年のCBDと安全性についての海外の研究においても、下痢がCBDの副作用として最も一般的なものだということが示されました。※3
この研究では、プラセボ(※)を服用した人と比べて、CBDを摂取した人において下痢が発生する頻度が高かったという結論が出ました。ただし、下痢の副作用が起こっても重度の症状の症例は一例もなかったことが報告されています。
※プラセボとは、見た目は本物の医薬品やサプリメントと変わらないが、有効成分が入っていない薬。臨床試験において有効成分の入っている薬と効果の比較をするために使用される
これらの研究結果から、CBDは副作用として軽い下痢を引き起こす可能性があると考えることができます。
CBDで下痢が起こるのは…高用量のCBDを摂取した場合?
CBDには下痢の症状を引き起こす可能性がありますが、米国の神経学者は「下痢はCBDを高用量で摂取した場合に起こる症状であり、ほとんどの人が摂取しているCBD用量では下痢は引き起こさない」と述べています。
ちなみに、CBDを低用量で摂取して下痢が生じるという研究結果は今のところありません。
米国の神経学者によると、下痢が起こるのはCBDを一日500mg以上の高用量で摂取した場合とのことです。もちろん、500mg未満のCBD用量でも下痢が起こる可能性はありますが、その場合はもともと身体が小さかったり、食事や運動、健康状態が影響していたりする可能性も考えられます。
通常のCBDオイルは、一本に300mg〜1,500mgのCBDが含まれています。CBDを500mg以上摂取するとなると、1/3本から1本以上を一日で摂取することになります。つまり、下痢が起こりやすくなる500mg以上のCBDは、かなりの高用量だということです。
CBDを摂取して下痢が起こったらどうしようと不安になる人もいると思います。しかし、一般的な用法用量にならい、CBDを500mg未満の低用量で摂取する分には、下痢の副作用はあまり心配しなくてもいいかもしれません。
CBDは下痢症状・過敏性腸症候群を改善できる?
CBDは、下痢症状を起こす過敏性腸症候群(※)を緩和する作用があることが期待されています。
※過敏性腸症候群とは、腸に炎症や潰瘍などが認められないにもかかわらず、腹痛や膨満感、下痢や便秘などの症状が継続的に生じる病気
2020年に行われたCBDと過敏性腸症候群についての研究によると、CBDは過敏性腸症候群のような様々な胃腸の病気の治療に役立つ可能性があることが示唆されました。※4
研究結果を見ると、CBDが「胃腸の病気が原因で起こる下痢症状」を改善できる可能性があると考えることができます。ただし、今の時点では、CBDが胃腸の病気に効果がある証明はできていません。CBDの胃腸への効果を確実なものにするためには、より多くの患者での更なる臨床試験が必要です。
結局CBDは下痢を起こすの?治すの?
今まで行われた研究や、海外の専門家の意見から考察すると、CBDには下痢を起こす作用があることが考えられます。
ただし万が一下痢症状が起こっても、症状が軽く済むことや、高用量のCBDを摂取しない限りは下痢症状はあまり起こらないことは、頭に入れておいてください。通常の摂取量で摂取する分には下痢の副作用を過剰に心配する必要はないでしょう。
また、CBDは過敏性腸症候群など、胃腸の病気で起こる下痢症状などを和らげる可能性があります。しかし、CBDと胃腸の病気についてはまだ十分な研究が行われていません。現在は胃腸の病気へのCBDの効果を証明するために、今後の研究結果が期待されている状況です。
CBD製品に含まれるキャリアオイルが下痢の原因の場合も
CBDオイルを摂取して下痢を起こした場合は、CBDではなくキャリアオイルが下痢の原因である可能性もあります。
CBDオイルにはCBDだけでなく、CBDを溶かすためのキャリアオイルが含まれています。
たとえば、CBDのキャリアオイルとして使われることがあるココナッツオイルは、非常に早く身体へ消化・吸収されるという性質があります。早く吸収された結果、小腸内の水分量が多くなり、下痢や腹痛を起こすことが考えられるのです。
ただし、キャリアオイルが原因で起こる下痢も、症状が軽く、一過性のものだと言われています。
CBDで下痢症状を起こさないための4つの注意点
キャリアオイルで起こす下痢が軽い症状だとしても、外出するときなどは気になりますよね。そこで、下痢症状を極力起こさないための注意点を4つ紹介していきます。
1. 適切な最小用量で摂取する
適切な用量を摂取することで、下痢が起こる可能性を減らすことができます。
必要以上のCBDを摂取すると、キャリアオイルもそれだけ多く摂取することになり、下痢を起こしやすくなります。そのため、CBDオイルは効果が出る最少の量で摂取することが大切です。
外出の予定がある際は、効果をより高めたいからと過剰に摂取しすぎないようにしましょう。
2. 用量を増やす時は少しずつ増やす
用量を増やす必要がある時には、少しずつ増やしていくと下痢を予防しやすくなります。
たとえば一日量を1滴増やし、下痢が起こらなければもう1滴増やすというように増やしていきます。少しずつ量を増やすことで、身体がキャリアオイルに慣れることができ、下痢を起こしにくくなります。
ただしいくら体を慣らしていくとしても、高用量のCBDオイルは下痢が起こる可能性を高めるので注意しましょう。
3. 下痢を起こさない製品を見つけておく
キャリアオイルによって、下痢を起こしにくいオイルもあります。キャリアオイルには、オリーブオイルが使われることもありますが、ココナッツオイルに比べると一般的に下痢を起こしにくいと言われています。
使われているキャリアオイルが自分の身体に合うかどうかも、おなかの調子に影響を与えるでしょう。
もしCBDオイルで下痢を起こしてしまったら、別のキャリアオイルが使われている製品を試し、下痢を起こさない製品を見つけておくと良いかもしれません。下痢を起こすかどうか様子を見るときは、外出しない日を選んで試すことをおすすめします。
4. 食後に摂取をする
CBDを食後に摂取することによって、下痢を起こしにくくなります。
食べ物が胃や腸に入っている状態でCBDオイルを摂取すると、キャリアオイルの吸収率を遅らせることができるからです。キャリアオイルは、消化・吸収が早いという性質が下痢を起こしやすくしています。吸収を遅らせることで下痢を予防できるのです。
CBDと下痢についてよくある質問
Q.CBDには下痢の副作用があるそうですが、摂取して外出しても大丈夫ですか?
CBDの下痢の副作用はまれで、全員に起こるわけではありません。また、万が一起こったとしても重症化はせず、症状が軽く済むことが報告されています。専門家の中には、CBDを高用量で摂取しない限り、下痢の副作用はほとんど起きないと指摘している人もいます。つまり下痢症状については、過剰に心配しなくても大丈夫だと考えられるでしょう。
ただし、CBDオイルに含まれているキャリアオイルの種類によっては、下痢を起こす可能性が高まります。心配な場合は、家にいる日を選んで、CBDをご自身の適量で摂取して様子を見てみてください。下痢が起こってしまった場合は、別のキャリアオイルが使われている製品を選んだり、食後に摂取したりすることによって下痢を予防できます。
Q.CBDは下痢症状を改善することはできますか?
CBDは、下痢症状を起こす胃腸の病気を改善する効果があると期待されています。ただし、今のところ可能性があるというだけで、確実に証明されているわけではありません。CBDが下痢症状を改善することを証明するためには、今後のさらなる研究が必要です。
また、CBDは人によって効果の出方が違うという特徴があります。胃腸の病気で起こる下痢に効果があるかどうかは「人による」というのが本当のところです。今の時点で胃腸の病気にCBDを使いたい場合は、実際に摂取してみて、ご自身の症状に効果があるかどうか試してみることをおすすめします。
Q.過敏性腸症候群を患っています。CBDを摂取すると下痢が悪化しますか?
CBDには抗炎症作用があり、過敏性腸症候群の症状を和らげる働きがあると考えられています。しかし、CBDには下痢を起こす副作用もあるため、万が一下痢の副作用が起こってしまうと症状が悪化したように感じてしまうかもしれません。
ただし、CBDで起こる下痢の症状は軽いことが知られています。また下痢が起こったとしても、CBDの摂取を中止すれば症状は改善することがほとんどです。
過敏性腸症候群にCBDを使いたい場合は事前に、主治医にCBDを摂取することを相談してください。下痢の症状についての不安も主治医に話しておくことをおすすめします。
【参考資料】
※1 What are the benefits of CBD — and is it safe to use?
※2 Cannabidiol Adverse Effects and Toxicity
※3 A Phase I, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Single Ascending Dose, Multiple Dose, and Food Effect Trial of the Safety, Tolerability and Pharmacokinetics of Highly Purified Cannabidiol in Healthy Subjects
※4 Cannabidiol and Other Non-Psychoactive Cannabinoids for Prevention and Treatment of Gastrointestinal Disorders: Useful Nutraceuticals?