CBD(カンナビジオール)は、大麻草から抽出される成分の一つです。
CBDにはさまざまな健康・治療効果が期待されています。そのため、CBDを日常の生活に取り入れ、生活の質を少しでも向上させたいという人が今世界中で増えています。
CBDは安全性が高い成分として知られていますが、CBDを摂取する際に注意すべき点がいくつかあります。その中の一つがCBDと医薬品の相互作用です。
今回は、CBDと経口避妊薬(ピル)の相互作用について取り上げます。CBDとピルを一緒に使っても大丈夫なのかや、CBDと併用する場合の安全な避妊法などについて解説していきます。
経口避妊薬(ピル)の作用
経口避妊薬(ピル)は、避妊するための薬です。
ピルには大きく分けて、混合型経口避妊薬とプロゲスチン単剤経口避妊薬の2つの種類があります。
それぞれ紹介していきます。
混合型経口避妊薬
混合型経口避妊薬は、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が配合されているピルです。
混合型経口避妊薬の作用は、エストロゲンとプロゲステロンで妊娠している時と同じホルモン環境を体内に作ることで、脳に「今妊娠している」と勘違いさせるという作用です。
妊娠している時には排卵は起こりません。実際に妊娠していなくても、脳が妊娠していると誤解することによって、排卵を起こさなくなります。その結果、妊娠を防ぐことができます。
プロゲスチン単剤経口避妊薬
プロゲスチン単剤経口避妊薬は、その名の通りプロゲステロン(プロゲスチン)を成分とするピルです。卵胞ホルモンであるエストロゲンは配合されていません。プロゲスチン単剤経口避妊薬は、通常エストロゲンが投与できない女性や、エストロゲンの投与に抵抗がある女性などに投与されます。
プロゲスチン単剤経口避妊薬は、プロゲスチンの働きで頸管粘液の粘度を高めるように作用します。頸管粘液の粘度が高められた結果、精子が子宮口と子宮腔を通過しにくくなり、受精を防ぐことができます。
周期によってはプロゲスチン単剤経口避妊薬が排卵を抑制することもあります。しかし、排卵抑制はプロゲスチン単剤経口避妊薬の主な作用ではありません。
ちなみにプロゲスチン単剤経口避妊薬と混合型経口避妊薬の避妊成功率はほぼ同じです。
CBDは肝臓の代謝酵素を抑制する
CBDはハイになるような精神活性作用が一切なく、副作用も軽度なため安全性の高い成分だといわれています。しかし、CBDと医薬品を一緒に服用する場合は注意が必要です。
CBDは肝臓の代謝酵素を阻害する作用があるため、服用している医薬品の代謝に影響を与えてしまう可能性があるのです。
肝臓の代謝酵素は、一部の医薬品などを解毒する働きがあります。CBDが肝臓の代謝酵素を阻害してしまうと、医薬品が解毒されずに効果や副作用が出過ぎてしまったり、必要以上に体内に残ってしまったりする原因になるので気をつけましょう。
CBDと同じように肝臓の代謝酵素を阻害するものとして知られているのが、グレープフルーツジュースです。「血圧を下げる薬などは、グレープフルーツジュースを一緒に服用すると効果が出過ぎてしまう恐れがあるため、一緒に服用すべきではない」と聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
CBDと相互作用を起こす医薬品はいくつかあります。すでに服用している医薬品がある方は、CBDの摂取を始める前に医師や薬剤師にCBDとの相互作用について相談しておいたほうがいいでしょう。目安としてですが、グレープフルーツジュースが影響を与える医薬品は、CBDとも相互作用を起こす可能性が高いです。
CBDと混合型経口避妊薬を一緒に使っても大丈夫?
CBDとピルは一緒に使っても相互作用を起こさないのでしょうか。
実は、混合型経口避妊薬はCBDと相互作用を起こす可能性があります。相互作用には2つの可能性があるので解説していきましょう。
1.CBDは混合型経口避妊薬の避妊効果を低下させる可能性がある
CBDは、混合型経口避妊薬の避妊効果を低下させてしまう恐れがあります。
1983年の海外の研究では、女性がCBDを摂取するとCBDがエストロゲン受容体と結合することが報告されました。CBDがエストロゲン受容体に結合することで、エストロゲンの一つであるエストラジオールの働きを弱めてしまう可能性があることも報告されています。
この研究結果から、CBDはエストロゲンが配合されている混合型経口避妊薬の避妊効果を弱め、望まない妊娠を招いてしまう恐れがあると考えられます。
2.CBDは混合型経口避妊薬の副作用である血栓症のリスクを高める可能性がある
CBDがエストロゲンの作用を弱める可能性とは逆に、CBDがエストロゲンの作用や副作用を高めすぎてしまう可能性もあります。
エストロゲンを配合した医薬品は、グレープフルーツやグレープフルーツジュースと相互作用を起こすという症例報告があります。
グレープフルーツでエストロゲン配合医薬品の代謝が阻害されたことによって、血中のエストロゲン濃度が高くなってしまい、エストロゲンの副作用である血栓症のリスクを高めてしまったというのです。
血栓症は血液の中に血の塊ができた結果、血管が塞がれて細胞に栄養が届かなくなる症状です。栄養を得られなくなった細胞は壊死してしまい、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる恐ろしい病気を引き起こす可能性があります。
エストロゲン配合医薬品がグレープフルーツと相互作用を起こすということは、エストロゲンが配合されている混合型経口避妊薬とCBDも同じような相互作用を起こす恐れがあるということです。
併用することで血栓症など、恐ろしい副作用を起こす可能性が高まりますので、くれぐれも注意してください。
CBDを服用しながら安全に避妊するには
「CBDと混合型経口避妊薬の併用が難しいなら、CBD摂取中の避妊はできないの?」と思う人もいるかもしれません。CBDを服用しながら安全に避妊する方法について考えていきましょう。
プロゲスチン単剤経口避妊薬を使用する
混合型経口避妊薬の服用が難しいなら、プロゲスチン単剤経口避妊薬を使用することを考えてみるとよいかもしれません。
いまのところ、プロゲスチン単剤経口避妊薬とCBDを併用する研究はほとんど行われていないため、併用するリスクや安全性が証明されているわけではありません。しかし、プロゲスチンはエストロゲンと同じ肝臓の代謝酵素では代謝されないため、CBDと相互作用を起こす可能性はとても低いと考えられます。
プロゲスチン単剤経口避妊薬は、エストロゲンが投与できない方や、エストロゲンの服用に抵抗がある方に処方されるピルです。CBDと一緒に服用したいという場合は、医師に相談してみるとよいでしょう。
ホルモン剤以外の避妊法を選ぶ
ホルモン剤以外の避妊法でCBDを摂取しながら避妊するのも一つの方法です。
コンドームや、内部コンドーム、ペッサリー、避妊スポンジ、殺精子剤などの使用や、排卵検査薬や基礎体温計などを使って排卵日を避けたりする方法などがあります。
ただし、これらの方法はピルを服用するよりも避妊効果が低いということも知っておいてください。
医師に相談する
CBDをピルと一緒に摂取したい場合は、その旨を医師に相談してみるのもいいでしょう。
CBDがピルに与える影響を最小限に抑えるために、CBDの量を減らすなど医師からのアドバイスが得られる可能性があります。CBD量をどのくらい減らしたらよいかは医師の指示に従ってください。