カンナビノイド受容体とは?効果・CBDの作用・医薬品の開発も解説

CBDを健康維持や治療に使う人が多くなるにつれて、CBDについて多くの記事を見かける機会が多くなりました。

多くの記事には、CBDの作用などについて書かれています。

その中で見かける「カンナビノイド受容体」や「エンドカンナビノイド」など普段見慣れない専門用語に戸惑ったことがある人もいるのではないでしょうか。

カンナビノイド受容体やエンドカンナビノイドなどの専門用語は、知っておくとCBDをより深く理解できるようになります。

この記事では、カンナビノイド受容体とエンドカンナビノイドについて詳しく説明していきます。

CBDの作用についての基礎にもなるので、他の記事を読む前にぜひ読んでみてください。

きっと、CBDの健康への作用がより深く理解できるはずです。

目次

まず押さえたい!受容体とリガンドについて

カンナビノイド受容体を理解するには、「受容体」と「リガンド」の意味を知ることが必要です。

まずは、この2つの単語を理解しておきましょう。

1.受容体とは?

受容体とは、細胞の中や表面にあるたんぱく質のことです。

受容体は細胞の外から入ってくる特定の物質(神経伝達物質やホルモン、生理活性物質など)の作用をシグナルとして受け取り、体内に伝える働きをします。

ヒトの身体の中にはカンナビノイド受容体だけでなく、様々な受容体が存在しています。

例えば、幸せホルモンであるセロトニンが結合し、セロトニンの作用を身体に伝える受容体は、セロトニン受容体と言います。

やる気や幸福感に関わっているドーパミンが結合し、その作用を身体に伝える受容体はドーパミン受容体と言います。

受容体がないと、神経伝達物質やホルモンの作用を身体に伝えることができません。

つまり受容体は、人間が生きていく上で非常に重要な役割を果たしているのです。

2.リガンドとは?

受容体について学ぶ上で大事なもう一つの言葉が「リガンド」です。

リガンドとは、受容体に結合する特異的な物質のことを言います。

セロトニン受容体のリガンドは、セロトニン、ドーパミン受容体のリガンドはドーパミンです。

受容体とリガンドは、カギと鍵穴のような関係です。

受容体はリガンドがぴったり当てはまらないと反応しないようになっています。

たとえば、セロトニン受容体はセロトニンのみが結合できる受容体で、ドーパミンがセロトニン受容体に結合することはできないようになっています。

リガンドが正しい受容体と結合することで、身体に正しい作用を伝えることができるのです。

カンナビノイド受容体とは?

受容体とリガンドの関係が分かったところで、今回のテーマであるカンナビノイド受容体について考えてみましょう。

先ほどの説明にあてはめると、カンナビノイド受容体のリガンドは、カンナビノイドということになり、カンナビノイド受容体はカンナビノイドの作用のシグナルを受け取り、体内に伝える働きがあるということになります。

では、カンナビノイドとは何でしょうか。

カンナビノイドとは、人間の体の中にあるシステムであるエンドカンナビノイドシステム(ECS)に作用する物質のことを言います。

ECSとは、体内の環境を一定に保とうと調節する機能(ホメオスタシス(恒常性))のことです。

細菌やストレス、炎症、痛みなどにさらされても、回復し生きていけるのはECSが働いているからと言われています。

カンナビノイドの3つの種類について

カンナビノイドは、身体の恒常性を保つために大切な役割を果たしていると考えられています。

カンナビノイドには、フィトカンナビノイド(植物性カンナビノイド)、エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)、合成カンナビノイドの3つの種類があります。

この3つのカンナビノイドについても説明していきます。

1.フィトカンナビノイドCBDとTHCとは?

フィトカンナビノイドとは、植物由来のカンナビノイドのことです。

カンナビノイドと言うと、一般的にフィトカンナビノイドのことを指すことが多いです。

フィトカンナビノイドが含まれている植物として代表的なものに大麻草があります。大麻草には120種類以上のフィトカンナビノイドが含まれていると言われています。その中でもっとも有名なカンナビノイドは、CBDとTHCと呼ばれる成分です。

中でもTHCには、人を陶酔させたり、痛みを抑制したり、短期記憶を失わせたりするなど様々な作用が知られています。

しかし、様々な作用があることは分かるものの、THCが体内でどのように作用しているかは長い間分からないままでした。

その後の実験により、人間の身体のいたるところにカンナビノイド受容体があることが分かり、THCは、カンナビノイド受容体に結合することで身体に作用していると考えられるようになりました。※1

2.エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)とは?

エンドカンナビノイドとは、人間の体内で作られているカンナビノイドです。

代表的なエンドカンナビノイドとしては、アナンダミドと2-アラキドノイルグリセロールが挙げられます。

エンドカンナビノイドは、カンナビノイド受容体が発見された後に見つかりました。

フィトカンナビノイドであるTHCが結合するカンナビノイド受容体が人間の体内にあるということは、同じような作用を持つ物質が、人間の身体の中で作られているということ。その物質を探したことで、上記の2つのエンドカンナビノイドが発見されました。※1

アナンダミドや2-アラキドノイルグリセロールは脳内マリファナや脳内麻薬とも呼ばれ、痛みを抑制したり、幸福感を感じたり、食欲を増進したりなど、身体にとっての重要な役割を果たしています。

3.合成カンナビノイドとは?

合成カンナビノイドとは、人工的に作られたカンナビノイドです。

医薬品としてや研究などに使われることもありますが、娯楽目的で使用されることもあります。合成カンナビノイドは危険ドラッグにも使われています。

そのため、合成カンナビノイドの多くは法的な規制を受けています。

カンナビノイド受容体のCB1とCB2とは?違いや作用を解説

フィトカンナビノイド、エンドカンナビノイド、合成カンナビノイドは、それぞれ作用が違うカンナビノイドであることが分かりましたね。

成分によって異なる作用を身体に伝える役割をしているのが、カンナビノイド受容体なのです。

カンナビノイド受容体には、CB1受容体とCB2受容体という2つのタイプがあり、それぞれが異なる役割を果たしています。

2種類のカンナビノイド受容体について詳しく見ていきましょう。

主に脳の神経に存在するCB1受容体

CB1受容体は、脳の神経、脂肪細胞、肝細胞、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、小腸、肺、子宮、精巣など様々な臓器や細胞に存在している受容体です。

THCは、CB1受容体に結合して、ECS(恒常性)と作用することにより、精神活性や神経の調節、鎮痛効果、食欲の刺激などの作用があることが知られています。

CB1受容体は特に、脳の神経に多く存在しています。

それでもTHCが脳だけでなく全身に作用するのは、CB1受容体が身体のあらゆるところに存在するからだと考えられています。

主に免疫細胞に存在するCB2受容体

CB2受容体は、脾臓、扁桃腺、リンパ節、マクロファージ、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好酸球などの白血球系の細胞などに多く見られる受容体です。

CB2受容体には、CB1受容体のような精神の活性作用はありません

免疫を調節する作用や、炎症を抑える作用に関わっています。

CBDはカンナビノイド受容体に作用しない?

THCやエンドカンナビノイドなどが、カンナビノイド受容体に結合して身体に作用することは分かりました。

ならば健康・治療効果が注目されているCBDも、カンナビノイド受容体に結合するはず、と考える方が多いのではないでしょうか。

CBDは、THCと同じようにECS(恒常性)に作用すると言われています。

CBDの場合は、ECSに作用した結果、健康を維持したり、治療に役立ったりすることが期待されています。

また、CBDもTHCと同じフィトカンナビノイドの一つです。

これらの事実を見ると、当然CBDもTHCやエンドカンナビノイドと同じようにカンナビノイド受容体に結合するのではないかと多くの人が考えるでしょう。

しかし多くの専門家は、CBDはTHCとは違い、CB1受容体やCB2受容体には結合しないと考えています。

CBDがどのように作用しているかについては、主に2つの意見があります。

1つ目は「CBDはカンナビノイド受容体に結合するのではなく、エンドカンナビノイドが分解されるのを防ぐ作用があるのではないか」という意見です。

この作用によって、エンドカンナビノイドをカンナビノイド受容体に結合しやすくし、結果的にECSを活性化しているという説があります。

2つ目は「CBDがまだ発見されていない受容体に結合して、その結果ECSを活性化している」という意見です。

CBDについてはまだ研究の途中なので、はっきりしたことは言えませんが、今後研究が進むにつれてより詳しいことが分かってくるでしょう。

エンドカンナビノイドが欠乏することで起こる問題

CBDが受容体を介しているかは研究途中ですが、エンドカンナビノイドに作用していることは間違いないのではないかと言われています。

エンドカンナビノイドであるアナンダミド、2-アラキドノイルグリセロールの分泌量が低下すると、ECS(恒常性)を保つのが難しくなります

この症状をエンドカンナビノイド欠乏症と言います。

2016年にエンドカンナビノイド欠乏症のレビューが行われました。

その結果、片頭痛や線維筋痛症(※)、過敏性腸症候群(※)などの明確な原因がなく、治療が難しい疾患は、エンドカンナビノイド欠乏症が原因ではないかと考えられることが報告されました。※3

※線維筋痛症とは、全身の筋肉や関節などの痛みを特徴とする中高年の女性に多い疾患。
※過敏性腸症候群とは、腸が過敏になり便通の異常が起こる疾患。ストレスや自律神経の乱れなどが原因と言われている。

これらの疾患の原因が、エンドカンナビノイドの欠乏と関係がある場合は、ECSを強化したり、エンドカンナビノイドの分泌量を増やすことによって、効果的な治療ができるようになる可能性があると考えられています。

CB1受容体を強化してエンドカンナビノイドを増やすための健康維持の方法

身体を健康に保つためには、エンドカンナビノイドの欠乏を防いだり、ECSを活性化して恒常性を保ったりすることが必要です。

ECSを活性化するには、リガンドであるエンドカンナビノイドの分泌量を増やしたり、エンドカンナビノイドの作用を身体に伝える働きをするカンナビノイド受容体を強化することが必要になります。

ECSを活性化するために、私たちが努力できることがいくつかあります。効果的な5つの方法について見ていきましょう。

1.オメガ3脂肪酸を摂る

ヘンプシードやチアシード、亜麻仁油などに含まれているオメガ3は、CB1受容体を形成するのに不可欠な成分です。

オメガ3でCB1受容体を強化することによって、ECSがより活性化することが期待できます。

他に、イワシやサンマなどの青魚、卵、くるみなどにもオメガ3が豊富に含まれているので、これらの食品を積極的に摂取すると良いでしょう。

また、ウコン茶やエキナセア茶などには、CB2受容体を刺激し、エンドカンナビノイドの分泌量を上げる性質もありますので、CB2受容体を活性化したい場合は参考にしてみてください。

2.定期的に運動する

定期的な運動は、エンドカンナビノイドであるアナンダミドの分泌量を増やすことが知られています。

アナンダミドは、カンナビノイド受容体に結合することで幸福感をもたらす物質です。

ウォーキングやヨガなど、無理のない適度な運動を楽しむことでECSの活性化につながります。

3.ストレスを解消する

ストレスは万病のもとと言われますが、カンナビノイド受容体においても悪い影響をもたらします。

ストレスが、カンナビノイド受容体の修復や発達をストップしてしまうと言われているのです。また、ストレスホルモンの量が増えることで、CB1受容体が正常に働きづらくなるとも考えられています。

ネガティブなことを考えすぎない、適度に体を動かす、睡眠を十分にとるなど、ストレスを慢性的にためない工夫が必要です。

4.飲酒量を減らす

お酒の飲みすぎも結果的にECSの働きを悪くする可能性があります。

適度な量のお酒はあまり問題ないですが、大量のお酒はカンナビノイド受容体の働きを極度に悪くしてしまうと言われています。

カンナビノイド受容体の働きを正常にし、健康を維持するためには、適度な飲酒量を守ることが重要です。

5.CBDを上手に利用する

CBDを摂取することでも、エンドカンナビノイドの作用を強化し、ECSを活性化できます。

今、世界中の多くの人が、健康や治療のためにCBDを毎日の生活に取り入れていることで、この方法を試しています。

リラックスをしたい、睡眠の質を良くしたい、持病を緩和させたいなど、CBDを摂取する理由は人によって異なりますが、全ての人に共通する目的は、ECSを活性化することにより、健康を維持することです。

今後に期待!カンナビノイド受容体に作用する医薬品の開発

海外では、カンナビノイド受容体に作用する次のような大麻由来の医薬品が承認・処方されています。

医薬品名作用
セサメット(ナビロン)抗がん剤が引き起こす吐き気や嘔吐の改善、エイズの消耗症候群の改善作用
マリノール(ドロナビノール)抗がん剤が引き起こす吐き気や嘔吐の改善、食欲の刺激、エイズの消耗症候群の改善作用
サティベックス(ナビキシモルス)多発性硬化症(※)の神経因性疼痛と痙攣を治療する作用 ※2
※多発性硬化症とは、免疫の異常により脳や脊髄、目の神経に炎症を起こし、神経組織を損傷する自己免疫疾患。

しかし、日本では大麻取締法により大麻草由来の医薬品の使用、輸入、臨床試験などを禁止しているため、これらの医薬品について使用が承認されるかはいまだはっきりしていません。

唯一CBDが成分となっているエピディオレックスという医薬品は、日本でも治験が始まっています。

カンナビノイド受容体を介した医薬品は、他にもアルツハイマー病、パーキンソン病(※)、ハンチントン病(※)、脳血管障害、がん、薬物依存、緑内障、骨粗鬆症、肝障害、心血管障害など、幅広い治療に応用できる可能性があると期待されています。※1 ※2

※パーキンソン病とは、脳の黒質と呼ばれる部分にあるドーパミン神経がなくなることによって、ふるえ、筋肉の固縮、動作が遅くなる、転びやすくなるなどの症状があらわれる疾患。
※ハンチントン病とは、脳の中の大脳基底核という部分の神経細胞が失われていく遺伝性・進行性の疾患。自分の意志に反して手足や顔面が動いたり、認知機能障害、うつや妄想などの精神症状が起こる。

治療が難しいと言われている疾患にも効果が期待できるということであれば、大麻草由来の医薬品を服用したいと願う患者は日本にも大勢いるはずです。

お隣の国韓国では、すでにサティベックスやマリノールが認められました。

果たして日本は今後、どのような決断をするのでしょうか。

将来的に他の疾患の治療薬として大麻由来の医薬品が海外で承認されるということがあれば、そのたびに日本でも承認してほしいと願う患者の声が高まっていくことが予想されます。

大麻解禁に向かって進んでいる世界の流れに、厚生労働省がどう対応していくのか……。

今後も注目していきましょう。

カンナビノイド受容体に関してよくある質問

Q.CBDはカンナビノイド受容体に結合しますか?

CBDは、カンナビノイド受容体に結合するという意見もありますが、CBDは直接作用しないと考えている専門家が多いです。
CBDは、エンドカンナビノイドの分解を防いで、エンドカンナビノイドをカンナビノイド受容体に結合しやすくする、または、カンナビノイド受容体以外の受容体に結合することで、健康・治療効果をあらわすのではないかと言われています。

Q.エンドカンナビノイドシステムを活性化するにはどうすればいいですか?

オメガ3を含んだ食品を積極的に摂ったり、適度な運動をしたり、ストレスを極力避けたり、大量のアルコールを飲まないようにしたり、CBDを摂取したりすることでエンドカンナビノイドシステムは活性化しやすくなるので試してみてください。

Q.海外で承認されている大麻草由来の医薬品は、日本で承認されますか?

日本で臨床試験が行われている大麻草由来の医薬品は、小児の難治性てんかんの治療薬であるエピディオレックスです。
治験が終わり承認されれば、治療に使うことができます。

しかし、海外で承認されている他の大麻草由来の医薬品は、大麻取締法により、使用、輸入、臨床試験などが禁止されているため、承認のめどは立っていません。

今後、法律を改正すれば承認される可能性はありますが、法改正については残念ながら今のところまだ何とも言えない状況です。

【参考資料】
※1 Endogenous Cannabinoid Receptor Ligands―Anandamide and 2-Arachidonoylglycerol
※2 Targeting the endocannabinoid system with cannabinoid receptor agonists: pharmacological strategies and therapeutic possibilities
※3 Clinical Endocannabinoid Deficiency Reconsidered: Current Research Supports the Theory in Migraine, Fibromyalgia, Irritable Bowel, and Other Treatment-Resistant Syndromes

この記事を書いた人

安藤 恵美のアバター 安藤 恵美 薬剤師/臨床試験コーディネーター

星薬科大学薬学部を卒業後、薬剤師国家免許を取得。横浜市の大型総合病院の薬剤部で、調剤・服薬指導業務を学んだあと、薬剤師や臨床試験コーディネーターとして勤務しながら、医療機関のソフトウェア開発やグラフィックデザインなどにも携わる。
結婚を機にアメリカにわたり、CBDについて知る。その後CBDを実際に試しながらCBDについて学ぶ。

現在は医薬品、サプリメントについて等、ヘルスケアに特化した薬剤師ライターとして活躍。同時に医療コンサルタントとして、オンラインで健康相談も行っている他、Webデザイナー、グラフィックデザイナーとして、企業やコミュニティーからの仕事も行っている。

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