CBDは肝臓に悪影響・副作用あり?医療観点から肝臓疾患への作用も解説

CBDは肝臓に悪影響・副作用あり?

CBDとは、カンナビジオールの略で、大麻草から抽出される成分のうちの一つです。
CBDは、大麻草から抽出されているからと言って、大麻でイメージされるような人をハイにする作用などは一切ありません。

CBDは、安全性が高いことがすでに証明されている成分で、様々な健康・治療効果があると今世界中で期待されています。
しかし、CBDが安全性が高いと言われている中で、CBDが肝臓を損傷する原因になるのではないかと結論付けている研究もあります。

もしCBDが肝障害の原因になるのだとしたらCBDは安全ではないということになってしまいますが、果たしてCBDは、肝臓に対して何か悪影響を及ぼすのでしょうか。

この記事では、肝臓に損傷を与える可能性を発表した研究を読み解き、実際にCBDは肝障害を引き起こすかどうかの考察をしていきます。
また、CBDと肝臓について行われた他の研究についても説明していきます。

CBDの効果や副作用の内容については、こちらの記事をご覧ください。
→ CBDの効果や副作用とは?効果を感じない場合の対処法も紹介

目次

CBDは肝障害を起こすのか?

CBDが肝障害を起こすかもしれないことを示している研究は、2019年に海外で行われたマウスの研究です。

この研究結果において、CBDを大量に摂取したマウス(人間に相当すると、一日量で体重1kgあたり200mgのCBD)に、明らかな肝臓毒性の兆候が見られたことが報告されました。※1

また、CBDの摂取量を減らして(人間に相当すると体重1kgあたり50mgのCBD)マウスに繰り返し摂取させたときにも、肝臓の腫れと損傷の兆候が見られたとも発表されています。

この研究結果だけを見れば、CBDが肝臓に悪影響を与える可能性が高いと誰もが思ってしまうと思います。
もしCBDを摂取するだけで肝臓に損傷を起こすのだとしたら大きな問題です。

しかし、結論に飛びつく前に、このマウスの研究において知っておいてほしい点が3つあります。

CBDと肝臓の研究結果において知っていてほしい3つの事実

マウスの肝障害についての研究結果を正確に理解するには3つの事実を知ることが重要です。

1.研究には非常に高用量のCBDが使われた

知っておいてほしいことの一つ目は、マウスに摂取させたCBD量は、人間に換算すると人が通常摂取するよりもはるかに高いCBD用量だったということです。

一般的にCBDは一日に体重1kgあたり0.5mg〜20mgの範囲、またはそれ以下の用量で摂取されています。

マウスの研究に使われたCBD用量を人間の用量に換算すると、CBD大量投与の研究において、体重1kgあたり200mg、用量を減らして繰り返し投与した研究においても、体重1kgあたり50mgで摂取させています。

たとえば、体重60kgの人が、一般的なCBDの治療用量において高用量の体重1kgあたり20mgを摂取するとすると、CBD量は1,200mgです。
これは、一般的なCBDオイルのボトル1本分ほどに相当します。

一日にCBDボトル1本を飲み干してしまうことはあまり考えられませんが、体重1kgあたり20mgでもCBDの治療用量の範囲内であり、人間には悪影響を及ぼさない量とされています。

それでは、マウスの実験で使われた用量に置き換えるとどうでしょうか。
体重60kgの人が体重1kgあたり50mgを摂取すると3,000mg、体重1kgあたり200mgを摂取すると12,000mgものCBDを摂取することになります。

ちなみに、多くの人は、通常一日10mg〜80mgのCBDを摂取しています。
このように比較して見ると、どれほどの高用量のCBDがマウスの研究で使われたかが分かるのではないでしょうか。

臨床試験を終え安全性が確認されている医薬品も、大量に服用すれば思わぬ毒性があらわれたりします。
つまり、CBDオイルのボトルを一日に何本も空けるような量のCBDを摂取して肝障害を起こしたからと言って、通常の摂取量のCBDにも肝毒性があるとは決して言えないのです。

2.マウスの結果と人間の結果は同じとは限らない

もう一つ知っておいてほしい事実は、肝臓とCBDの研究はマウスで行われたもので、人での研究ではないということです。

マウスと人の違いは、体重差だけではありません。
同じ哺乳類でも種差により生理学的に異なるため、マウスで肝障害があらわれたからと言って、その結果がそのまま人間に当てはまるとは限りません。

マウスにあらわれない副作用が人にあらわれることもありますし、逆にマウスで起こった副作用が人にはあらわれなかったということが実際にあります。

医薬品を開発する時でも動物実験の後、必ず人においての臨床試験をして医薬品が安全かどうかを調べます。
CBDが肝障害を起こすかどうかは、人間においての研究結果を見ることも非常に重要なのです。

3.CBDは人において肝臓の損傷を引き起こさないという新しい研究結果も

2021年に、CBDと肝臓毒性を人において調べた研究が発表されました。
研究結果では、年齢、CBD製品の組成、CBD製品の形状、CBDの消費量に関係なく、臨床的に重大な肝疾患を起こす証拠はないと結論付けられました。

この研究は、839人の成人を対象とした臨床研究で、7か月間にわたってCBDと肝臓の状態について調べました。
839人中10%未満の人に肝臓の数値の上昇が見られましたが、臨床的に問題になる数値ではありませんでした。

また、ALTという肝臓の酵素の数値が正常レベルの3倍になった人が3人いましたが、この3人は、肝臓の酵素を上昇させる可能性のある医薬品を服用していたためだと考えられています。

以上のことから、CBDは人において肝臓障害を引き起こさないという研究結果になりました

CBDと肝臓の損傷に対する考察

肝臓とCBDについてのマウスや人での研究結果から考察すると、通常のCBD用量を摂取していれば、肝臓への毒性についての心配はないと考えられます。

海外の研究者も、CBDの肝臓への悪影響はあまり心配しないようにと言及していますし、実際にCBD300mg、600mg、1500mgを摂取しても肝臓に悪影響を与える兆候はなかったという研究結果もあります。

どんなに安全な医薬品やサプリメントでも過剰に摂取することで、身体に悪影響を起こす可能性は十分に考えられます。
過剰に摂取した結果マウスの肝臓が損傷したという研究結果だけを見ると心配になってしまうと思いますが、だからと言って通常量のCBDを摂取することと肝障害を結びつける必要はありません。

大切なのは、CBDを一日体重1kgあたり20mg(この用量でもかなりの高用量ですが)を超えて摂取しなければ大丈夫だということと、通常量のCBDは副作用がほとんどなく安全性が高いということです。

CBDは肝臓の損傷を改善する?

ここまでCBDが肝臓に損傷を与えるか否かを研究結果に基づいて考察してきましたが、逆にCBDは肝臓の損傷を改善するという研究結果も実はあります。

2021年にCBDと肝臓の損傷についての海外研究が行われました。
肝臓は、アルコールや高脂肪・高コレステロール食などにより、炎症が起こることがあります。
CBDは、その炎症から肝臓を保護することにより、肝臓の損傷の予防や軽減をする可能性があることが示唆されました。※2

2019年に行われたCBDと肝臓のアルコール関連の損傷についてのマウスの海外研究では、CBDが脂質の蓄積を減らしたり、炎症や酸化ストレスなどを減らすことにより、アルコール関連の肝臓の損傷を軽減することが報告されました。※3

以上の研究結果を見ると、CBDは適切な用量で摂取することにより、肝臓に損傷を与えるどころかアルコールや高脂肪・高コレステロール食による肝障害を軽減し、肝臓に良い影響をもたらすと考えることができます。

安全で適切な用量を守りさえすれば、CBDは健康維持や治療に大いに活用することができると言えるでしょう。

CBDの安全で適切な投与量とは?

CBDを過剰に摂取しなければ肝臓に悪影響を与えないことを説明してきましたが、自分にとって安全で適切なCBD用量はどのようにして見つければよいのでしょうか。

おすすめは、少用量から始めて効果が見られるまで少しずつ用量を増やしていくということです。
まずは5〜10mgくらいから始めて数日間その用量で様子を見てみてください。

もし、効果を感じなければCBDの用量をさらに10mg増やして、1週間ほど続けて様子を見ましょう。

少しずつ増やして効果を感じ始めたところが、その人にとっての適量ということになります。

肝臓とCBDに関するよくある質問

Q.CBDは肝臓にダメージを与えると聞きましたが本当ですか?

たしかにCBDが肝臓にダメージを与えたという研究結果は実際にあります。
しかし、その研究を正しく理解するにするには、人間が摂取するCBD用量の何倍、何十倍ものCBDが使われていたことや、人間ではなくマウスでの研究結果だったということを考慮しなければなりません。

人におけるCBDの肝臓への悪影響を観察した研究では、CBDが肝臓に悪影響を与えないという結果が出ていますし、CBDを過剰に摂取しなければ安全に摂取できるという研究結果もあります。
また、海外のCBDの専門家も肝臓への悪影響を心配する必要がないことを発表しています。

以上のことや今までの研究結果を総合して考えると、通常のCBD用量で摂取していれば肝臓に悪影響を与えることはないと言えます。
CBDは安全性が高いことが証明されていますので、安心して摂取できます。

Q.CBDはどのくらいの用量で摂取すれば安全ですか?

一日量として体重1kgあたり20mgを越えなければ安全とされています。

しかし、体重1kgあたり20mgは、60kgの人ですとCBD1,200mgに相当しますので、通常のCBDボトルでは約1本分になります。
一日に1本のCBDオイルのボトルを飲み干してしまうのはちょっと考えづらいですよね。

自分の適量が分からなければ最初は、5〜10mgで数日間摂取をして、様子を見てください。
その量で効果がなく、用量が不十分だと感じた場合には、10mgほど増やして一週間ほどまた様子を見ると言うことを繰り返します。

効果を感じ始めたら、その量がその人にとっての適量ということです。

Q.アルコール性肝障害がありますが、CBDを摂取すると悪化しますか?

CBDはアルコール性肝障害を軽減する効果が期待できると言われています。

CBDが肝臓の炎症を軽減し、脂肪肝の発症を遅らせ、アルコール性肝障害の損傷を軽減したという研究結果も出ています。

ただし、アルコールとCBDを同時に摂取するとお互いの効果が増幅する可能性があるため、注意が必要です。
眠気が増したり、身体の感覚が狂ったり、忘れやすくなったりすることが考えられますので気を付けてください。

【参考資料】
※1 Hepatotoxicity of a Cannabidiol-Rich Cannabis Extract in the Mouse Model
※2 CBD Alleviates Liver Injuries in Alcoholics With High-Fat High-Cholesterol Diet Through Regulating NLRP3 Inflammasome–Pyroptosis Pathway
※3 Therapeutic Prospects of Cannabidiol for Alcohol Use Disorder and Alcohol-Related Damages on the Liver and the Brain

この記事を書いた人

安藤 恵美のアバター 安藤 恵美 薬剤師/臨床試験コーディネーター

星薬科大学薬学部を卒業後、薬剤師国家免許を取得。横浜市の大型総合病院の薬剤部で、調剤・服薬指導業務を学んだあと、薬剤師や臨床試験コーディネーターとして勤務しながら、医療機関のソフトウェア開発やグラフィックデザインなどにも携わる。
結婚を機にアメリカにわたり、CBDについて知る。その後CBDを実際に試しながらCBDについて学ぶ。

現在は医薬品、サプリメントについて等、ヘルスケアに特化した薬剤師ライターとして活躍。同時に医療コンサルタントとして、オンラインで健康相談も行っている他、Webデザイナー、グラフィックデザイナーとして、企業やコミュニティーからの仕事も行っている。

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