CBDやCBDオイルは妊娠中・授乳中に摂取してはダメ?胎児に与える影響

CBDやCBDオイルは妊娠中・授乳中に摂取してはダメ?

妊娠中はつわりや精神的な不安定さに悩まされやすいです。
胎児への影響から服用できる医薬品も限られてくるため、不快な症状を和らげられずに困っている女性も多いでしょう。

そのような状況の中、不快な症状を少しでも緩和するためにCBDを摂取したいと希望する妊婦もいます。
CBDは安全性が確認されているものであり、副作用もほとんどないことから妊娠中でも安全なのではないかと思われがちだからです。

しかし一般の人にとっては安全でも、胎児にとっては安全ではないものは少なからずあります。
特に医薬品やサプリメントの類は胎児に対しての影響が大きいため、安易に摂取する前に胎児への安全性をきちんと確認することが非常に大切です。

この記事では、妊娠中にCBDを摂取することについての安全性について説明していきます。

CBDの危険性や安全に使う方法については、こちらの記事もご覧ください。
→ CBDやCBDオイルに危険性はあるの?

目次

妊婦さんがCBDを摂取しても大丈夫なの?

結論から先に言いますと、CBDは、妊娠している女性に対して安全ではないと言われています。
アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)は、妊娠中や授乳中にはCBD製品を使用しないようにと強く呼びかけているほどです。

妊娠してからCBDの摂取をしたいと思っている方は当然のこと、妊娠前からCBDを摂取していて妊娠後も続けて摂取したいと考えている方も、妊娠中はCBDの摂取を中止してください

CBDオイルやリキッド、グミなどの身体の中に入れるCBD製品はもちろんのこと、CBDバームやクリーム、パッチなどの皮膚から吸収させるタイプの製品も、妊娠中には完全に避ける必要があります。

そのことを踏まえて今回の記事をお読みくださいね。

妊娠中の女性がCBDで和らげたいと思う3つの症状

なぜ妊娠中の女性がCBDの使用をしたくなるのでしょうか。

きっと、CBDが一般の人に対して安全性が高いことが知られていて、かつCBDに期待されている効果が、妊娠中によく起こる複数の症状を改善する可能性が高いからではないでしょうか。

妊娠中によく起こる3つの症状について、CBDの効果と合わせて見ていきましょう。

1.吐き気を緩和したい

吐き気といえば、つわりの症状の中で多くの人が思いつく症状です。
妊娠中の辛い吐き気を安全なもので改善したいと思う妊婦さんはとても多いと思います。

毎日感じる吐き気は、食事や睡眠が十分に摂れないことにもつながるほど、生活に支障をきたす辛い症状だからです。

2011年の動物の研究で、CBDと吐き気を調べた研究がありました。
その研究ではCBDがセロトニン受容体に関与することで、吐き気を緩和できる可能性があることが報告されました。※1

セロトニンは、幸せホルモンとも呼ばれる物質です。
幸福感を調節する働きがある一方で、身体に合わないものを摂取したときに吐き気や下痢を引き起こす作用もあるのが特徴です。

この研究結果を見て、CBDがセロトニン受容体を介して妊娠中の吐き気も抑えてくれるように思ってしまう人もいると思います。

安全性が高いと言われているCBDで妊娠中の吐き気を緩和することができたら、胎児に影響することなく生活の質を上げられるのではないかと期待してしまいます。

2.不安やストレスを軽減し、よく眠れるようになりたい

妊娠中はホルモンのバランスが通常と違うことや、将来への不安などが理由で、いつもは感じない不安やストレスを感じやすくなります。
その結果、眠れないなどの症状が出たり、眠れても眠りが浅く、疲れが取れなかったりするなどの問題が起こります。

母体が疲れてしまうと胎児への悪影響が心配になるため、この問題をなんとか対処したいと思っている人も多いのではないでしょうか。

2019年の研究に、CBDと睡眠・不安を調べた研究がありました。
CBDが睡眠の質の改善や不安の軽減をする作用があるかどうかを調査したところ、79.2%の被験者が不安が軽減したと答え、66.7%の被験者が睡眠の質が上がったと報告しました。※2

この研究結果から、CBDはかなりの高確率で睡眠の質や不安を改善したことが分かります

妊娠中はたとえ眠れない日が続いても、睡眠薬や抗不安薬の服用が難しいです。
そのような状況なので、「安全性が高いCBDが、高確率で睡眠の質を改善できるなら、CBDを試してみたい」、「CBDで睡眠を改善して快適な妊娠生活を送りたい」などと思ってしまうのも無理はありません。

3.痛みを緩和したい

妊娠中は子宮が伸びることで腹痛や腰痛、背中の痛みを感じることがあります。
また、あまり痛みが強いと胎児への影響も気になってしまいがちなため、強い痛みをなんとか対処できたらと望んでいる妊婦もいます。

2007年にCBDと痛みの調査がラットを使って行われました。
結果として、CBDを口から摂取すると坐骨神経痛や炎症を軽減する可能性があると報告されました。※3

妊娠していない人が腰痛などにCBD製品を使って痛みを緩和している例も多いです。

このような研究結果や実例から、妊娠中にもCBDを安全に使用できるのではないかと考えてしまう人も多いのではないでしょうか。

CBDを使用することで痛みが軽減できれば、胎児に影響を及ぼしてしまう可能性の高い鎮痛剤に頼る必要がなくなるため、余計にCBDの使用を希望してしまうのだと思います。

妊娠中のCBD摂取は危険!その2つの理由とは?

2017年の研究で、CBDは副作用がほとんどない、かつ安全性が高いものであることが示されました。※4

CBDは安全性が高いはずなのに、なぜ妊娠している女性に対しては危険であると考えられているのでしょうか。

理由1:CBDは妊婦には危険な可能性があるという研究がある

今まで行われたいくつかの研究では、CBDが胎児に悪影響を与えるような結果が出ています

1986年のラットの研究によると、妊娠中や出生後に摂取したCBDにより、雄のラットの精子数と精巣機能に影響を与えたことが報告されています。※5

2019年の調査では、胎児がCBDなどのカンナビノイドにさらされることにより、免疫系の発達が弱まり、身体の防御機能が低下した結果、がんや感染症にかかりやすくなる可能性があることを示唆しています。※6

専門家の中には、CBDが妊娠中や授乳中に他の発達や健康に影響を与える可能性についても言及している人もいます。

以上のようにCBDは、胎児の健康に悪影響を及ぼす恐れがあるとされています。

妊娠中にCBDを摂取する危険性の詳細はまだ分かっていないことが多いですが、胎児にとって危険であるという研究結果が出ている以上、妊娠中のCBD摂取は避けるべきだということになっているのです。

CBDが胎児に与える影響の詳細については今後の研究が進むにつれて、明らかになっていくでしょう。

ちなみに、妊娠中ではなく産後ならCBDを摂取しても問題ないのではないかと思う人もいるかもしれませんが、CBDは乳児にも悪影響を与える可能性がありますので、授乳中も摂取は避けるようにしてください。

理由2:CBDの製品の中には汚染された製品もある

CBDを妊娠中に摂取してはいけない理由は、胎児に与える危険性だけではありません。
CBDの製品の質が悪いと、胎児だけでなく妊婦にも悪影響を与えます。

CBD製品は、様々なものが出回っています。
中には海外から輸入して安全性の基準を満たしていない質の悪い製品を扱っている会社が存在していることも否定できません。

質の悪いCBD製品の中には、日本では違法のTHCが含まれているものがあります

2016年の研究では、妊娠中にTHCを含む大麻を週に一回使用した女性は、早産の可能性や低体重の赤ちゃんを産む可能性が高いと報告されました。※7

2020年の研究では、妊娠中に大麻を使用した女性は自閉症の子どもが生まれる可能性が一般の1.5倍も高いことを示唆しています。※8

このようにTHCは妊婦や子どもに対して危険性が高いため、万が一質の悪いCBDを摂取してしまった場合は、CBD単独の製品を使用する以上の悪影響が懸念されます。

さらに、質の悪いCBD製品には、THC以外にカビや農薬、重金属、細菌など身体に悪影響を及ぼすものが混入していることも考えられます。

このような悪質な製品を摂取してしまった場合は、妊娠をしていない一般の人の健康さえも脅かされる可能性があります。
妊婦や胎児が摂取した場合は、より大きな悪影響を受けてしまう可能性が高いことは簡単に想像できるのではないでしょうか。

一般の人には安全性が高くても、妊婦や胎児にとっては危険性があるものはCBDだけではありません。
安全だと言われているサプリメントや食品などを摂る前に、本当に安全かどうか確かめる癖をつけてください。
小さな努力が自分の身体と子どもを守ることに繋がります。

まとめ

今回は、妊娠中のCBD摂取について説明してきました。

妊娠中のCBD摂取は、どのCBD製品であっても避ける必要があります。

妊娠中は、胎児への影響から服用できる医薬品が限られています。
そのような状況で、吐き気や不安などのストレス、痛みを感じることが多いため、一般的に安全とされているCBDを使用し、不快な症状を和らげたいと希望する女性もいるようです。

しかし、CBDは、胎児の生殖機能や免疫に対して悪影響を及ぼすという研究結果がでています。
一般の人にとって安全であっても胎児にとっては安全性が低いということです。

また、違法なTHCが含まれている悪質なCBD製品も中には存在しています。
もしもそのような製品を妊娠中に摂取してしまったら、THCによる早産の危険性や、自閉症の子どもが生まれる可能性も高まってしまうかもしれません。

一般の人には安全性が高くても、妊婦や胎児にとっては危険性の高いものはCBDだけではなく、サプリメントや食品にもあります。
なんでも安全だと決めつけずに、安全性をその都度確かめるようにしてください。

【参考資料】
※1 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3165951/
※2 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6326553/
※3 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17157290/
※4 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5569602/
※5 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3026968/
※6 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30374520/
※7 https://journals.lww.com/greenjournal/Abstract/2016/10000/Maternal_Marijuana_Use_and_Adverse_Neonatal.6.aspx
※8 https://www.nature.com/articles/s41591-020-1002-5

この記事を書いた人

安藤 恵美のアバター 安藤 恵美 薬剤師/臨床試験コーディネーター

星薬科大学薬学部を卒業後、薬剤師国家免許を取得。横浜市の大型総合病院の薬剤部で、調剤・服薬指導業務を学んだあと、薬剤師や臨床試験コーディネーターとして勤務しながら、医療機関のソフトウェア開発やグラフィックデザインなどにも携わる。
結婚を機にアメリカにわたり、CBDについて知る。その後CBDを実際に試しながらCBDについて学ぶ。

現在は医薬品、サプリメントについて等、ヘルスケアに特化した薬剤師ライターとして活躍。同時に医療コンサルタントとして、オンラインで健康相談も行っている他、Webデザイナー、グラフィックデザイナーとして、企業やコミュニティーからの仕事も行っている。

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