【薬剤師執筆】安全なはずのCBDで健康被害?被害例と安全な使い方

【薬剤師執筆】安全なはずのCBDで健康被害?

CBDは、副作用がほとんどなく安全性が高い成分であることが証明されています。

しかしCBDの人気が高まり、CBD製品の購入者が増えるにつれて、消費総合センターなどに寄せられるCBD製品のトラブルに対しての相談が増加しています。

一体どういうことなのでしょうか。
今回は、CBD製品のトラブルについてその原因や、トラブルを回避する方法などを説明していきます。

CBDの危険性や安全に使う方法については、こちらの記事もご覧ください。
→ CBDやCBDオイルに危険性はあるの?

目次

安全性の高いCBDで健康被害!?

2017年の海外の研究において、大麻草の成分であるCBDは医薬品に比べて副作用がほとんどないことや安全性が高いことが報告されました。※1

にもかからわず、東京都の消費者総合センターによると、CBDのトラブルによる相談件数はここ最近増えています。
2017〜18年には0件だったCBDの相談が、2019年の時点で58件、2020年では316件寄せられたといいます。

CBDの健康被害に対しての相談は、

  • 気分が悪くなった
  • 吐き気がした
  • 湿疹が出た
  • 舌に違和感を感じて頭痛がした
  • 眠気がある
  • 口が渇く

というような訴えが多いです。
また、相談件数の内訳を見ると、CBDを含む健康食品や化粧品の相談よりも、CBDリキッドなどの吸入摂取するCBDベイプ製品に関する相談件数が圧倒的に多いことが分かりました。

海外からの報告では、劣悪なCBDベイプ製品を吸入したことで、意識を失ったり、呼吸不全に陥ったりなど、重篤な症状が起きたりした人もいるようです。(詳しくはこちらの記事でご紹介しています)

CBDで起きる健康被害の原因は?

安全性が高いと言われているCBDに、なぜこのような健康被害やトラブルが起きているのでしょうか。
考えられる3つの原因について解説します。

原因1:劣悪な製品を摂取したため

CBD製品を摂取して健康被害が出てしまった原因のほとんどは、劣悪な製品を買って摂取してしまったことが原因であると考えられます。

CBD製品は個人で輸入しているものも多く、中には品質検査や、法律に則っての輸入がされていない製品もあります。
そのため、日本で禁止されている成分や、身体に有害な成分が入っている劣悪な製品が実際に販売されてしまっていることも少なくありません。

劣悪な製品には、次のようなものが含まれている可能性があります。

  • 日本で大麻取締法違反に指定されているTHC
  • 危険ドラッグなどの合成カンナビノイド
  • 重金属や農薬
  • CBDリキッドなどに含まれる防腐剤や溶剤
  • 加熱すると有害物質に変化する添加物

などです。これらの物質が身体に与える健康被害を詳しく見ていきましょう。

THCが与える健康被害

東京都消費生活総合センターも警告していますが、THCが混入したCBD製品を摂取すると健康被害が発生する恐れがあります。

THCは大麻の作用で良く知られている「人をハイにする作用」を持つ成分です。
THCを摂取すると、幻覚や妄想を引き起こしたり、心拍数が急速に高まったりすることがあります。
またTHCは免疫系に悪影響を与え、感染症にかかりやすくなることも海外の動物実験で報告されています。※2

合成カンナビノイドが与える健康被害

合成カンナビノイドは、危険ドラッグという名前でも知られている人工的に合成されたカンナビノイドです。
合成カンナビノイドを摂取すると、呼吸困難や意識を失うなどの症状が出ることがあります。

海外においてCBDを吸入した後、意識を失い、呼吸不全に陥った症例がありました。
後にこの症状は、合成カンナビノイドが引き起こしたものだと報告されています。

重金属や農薬が与える健康被害

大麻草は、土から重金属を吸収する性質を持っています。
そのため、CBD製品の原料となる大麻草が、重金属が混ざっている土で栽培されたり、農薬を使って栽培されたりすると、抽出される成分にも重金属や農薬が混ざることがあります。

重金属は、鉛、水銀、カドミウム、クロム、ヒ素などのことを言います。
これらの物質は身体に蓄積されることで、がんやアレルギー、頭痛、吐き気などを引き起こす有毒な物質です。

防腐剤や溶剤、添加物が与える健康被害

防腐剤や溶剤などで起こる健康被害は、吸入摂取をするCBDリキッドなどで起こることが多いです。

CBDリキッドなどのCBDベイプ製品には、プロピレングリコールと呼ばれる溶剤・防腐剤や、人工香料、ビタミンEアセテートなど、熱によって有毒物質に変わる物質が含まれています。

たとえばプロピレングリコールは、熱によって発がん性物質に変わると報告されています。※3 ※4

人工香料は、加熱されると呼吸器疾患を起こす可能性があり、高熱加熱されたビタミンEアセテートは、リポイド肺炎と呼ばれる肺炎の一種の原因になる可能性があると言われています。

質の悪い吸入器具などでCBDリキッドを加熱し過ぎてしまうと、有毒物質の量が増えてしまうため、健康被害のリスクも高まります。

原因2:医薬品との相互作用が起きたため

CBDが服用している医薬品と相互作用を起こしてしまうと体調に異変が出ることも考えられます。

CBDは、医薬品やアルコールなどを分解・解毒してくれる、肝臓の薬物代謝酵素と呼ばれるものを阻害してしまう作用があることが報告されています。

ある特定の薬を服用していて、同時にCBDを摂取すると、CBDによってその薬を分解する作用が弱まってしまいます。
その結果、必要以上に薬の作用が強まってしまったり、薬が体内に残ってしまったりということが起こります。

医薬品の作用が強まれば、それが体調不良につながる可能性もあるため気をつけなければいけません。

すでに薬を服用している人がCBD摂取をする場合は、必ず主治医やかかりつけの薬剤師に相談し、医薬品との相互作用が起こらないかどうかを確認してください。

原因3:口の喝きなどの軽い症状はCBDの副作用の可能性も

健康被害の三つ目の原因は、CBDの副作用です。
ただし、CBDの副作用はあまりなく、起こったとしても症状が軽いことが知られています。

CBDの副作用として報告されているのは、口の渇きや下痢、体重・食欲の変化などです。

口の渇きは、CBD製品と一緒に水分を補給することで予防ができます。
他の症状に関しては、万が一起こったら、CBD摂取を中止すれば治まると言われています。

健康被害を起こさないためにはどうすればいい?

CBDはそもそも安全性が高いことが証明されている成分です。WHO(世界保健機関)もCBDの安全性の高さを認めています。

今回紹介したような健康被害が起こってしまった原因のほとんどは、CBD自体の問題ではなく、劣悪な製品を購入し、摂取したことが原因だと考えられます。
つまり、信頼できるメーカーで高品質の製品を購入することが健康被害を起こさないことにつながると言えます。

それでは、信頼できるメーカーかどうかはどのように見分ければよいのでしょうか。

信頼できるメーカーや高品質のCBD製品を見分ける5つのポイントを紹介します。

1.第三者機関に依頼した検査結果をチェック

信頼性の高いメーカーは、販売している製品の検査を第三者機関に依頼し、検査結果を公開しています

第三者機関で検査を実施しているかや、検査結果からTHCや重金属、農薬、汚染物質など身体に有害な成分が含まれていないかを、自分の目で確認することによって劣悪な製品を避けることができます。

2.麻の栽培環境をチェック

CBDの原料となる麻の栽培環境も、高品質の製品を見極めるためのポイントになります。

最近は農薬や除草剤、化学肥料などを含まないオーガニックな環境で栽培した麻を原料として使っているメーカーも増えてきました。
オーガニックな製品であれば、商品のページや店頭にそのことが書いてあると思いますのでチェックしてみてください。

3.日本の法律を守って輸入しているかチェック

製品の輸入時に日本の法律を守っているかどうかは、メーカーを信頼する上で重要なポイントです。

法律に準拠していれば、そのことがきちんと記載されているはずなので、商品ページなどを確認しましょう。
また、厚生労働省へ確認を行っているかや、正規の輸入手続きをしっかり行っているかも確認しておくと安心です。

4.製品の特徴をチェック

CBD製品の説明書などには製品の特徴が書かれています。

たとえば、CBDリキッドに溶剤・防腐剤として含まれているプロピレングリコールは、発がん性がある物質としても知られていますが、CBDリキッド製品の中には、「プロピレングリコール不使用」という製品もあります。

このような製品を選ぶことで、健康被害のリスクを減らすことができます。

5.メーカーの住所や連絡先をチェック

購入後、万が一問題が起きた時の連絡先を調べておくことも大切です。

CBDの販売先は、海外の会社であったり、個人販売であったりすることも多いです。
そのため、連絡しても連絡がつかない、言葉が通じない、時差があるなどさまざまなトラブルを招きかねません。

そのようなトラブルを防ぐためにも日本の会社かどうか、問い合わせできる連絡先があるかどうかを調べておきましょう。

CBD健康被害に関するよくある質問

Q.CBDは安全なもののはずなのに健康被害が起きているのはなぜですか?

CBD製品で健康被害が起きているのは、CBDそのものが原因ではなく、劣悪な製品を摂取してしまったことが大きな原因であると考えられます。

劣悪なCBD製品には、日本では違法のTHCや、合成カンナビノイド、重金属や農薬、溶剤・防腐剤などが含まれていることがあります。
これらの成分により身体に有害な作用が起こっている可能性が高いです。

Q.CBDの摂取で健康被害を起こさないためにはどうしたらよいですか?

CBDで健康被害にあわないために一番大切なことは、信頼性の高いメーカーで、高品質のCBD製品を購入することです。

たとえば、身体に有害なプロピレングリコールなどを使っていない製品も販売されています。
CBD製品を購入するときは、メーカーや製品を良く調べることが必要です。

また、医薬品との相互作用によって健康被害が起こることも考えられます。
医薬品をすでに服用している場合には、その医薬品がCBDと相互作用を起こさないかどうかを、あらかじめ医師や薬剤師などに確認しておくことで健康被害を避けられるでしょう。

Q.信頼できるメーカーを見極める方法を教えてください。

信頼できるメーカーを見極めるためには、

  • 第三者機関に依頼した検査結果を公表しているか
  • 麻の栽培環境は安全か
  • 日本の法律に準拠しているか

などをチェックして信頼できるメーカーかどうかを見極めてください。

また、万が一問題が起きた時の連絡先も確認しておくとより安心です。
言語や時差などでトラブルにならないように、問い合わせ先が日本の会社であるかや、日本の連絡先かを確かめておくと良いでしょう。

【参考資料】
※1  An Update on Safety and Side Effects of Cannabidiol: A Review of Clinical Data and Relevant Animal Studies
※2 Cannabis and Cannabinoids (PDQ®)–Health Professional Version
※3 Larsen BT et al. “Pathology of Vaping-Associated Lung Injury,” N Engl J Med (2019) 
※4 Marcu, Jahan. “How Safe Is Your Vape Pen?” Project CBD: Medical Marijuana & Cannabinoid Science, 14 July 2015,

この記事を書いた人

安藤 恵美のアバター 安藤 恵美 薬剤師/臨床試験コーディネーター

星薬科大学薬学部を卒業後、薬剤師国家免許を取得。横浜市の大型総合病院の薬剤部で、調剤・服薬指導業務を学んだあと、薬剤師や臨床試験コーディネーターとして勤務しながら、医療機関のソフトウェア開発やグラフィックデザインなどにも携わる。
結婚を機にアメリカにわたり、CBDについて知る。その後CBDを実際に試しながらCBDについて学ぶ。

現在は医薬品、サプリメントについて等、ヘルスケアに特化した薬剤師ライターとして活躍。同時に医療コンサルタントとして、オンラインで健康相談も行っている他、Webデザイナー、グラフィックデザイナーとして、企業やコミュニティーからの仕事も行っている。

目次