CBDやCBDオイルの認知症への効果・作用は?研究結果をご紹介

CBDやCBDオイルの認知症への効果・作用は?

認知症は病気や障害により脳内が変化し、重度の記憶障害や精神機能障害を引き起こす病気です。
一般的に高齢者に多くみられると言われていますが、若年性アルツハイマー型認知症など比較的若い世代の人たちに発症する認知症もあります。

人生は記憶で成り立っているといっても過言ではありません。
大切な記憶を奪ってしまう認知症にかかると、患者の普段の生活の質は著しく下げられてしまいます。
また、症状が悪化すると本人だけでなく家族の生活に悪影響を与えてしまうのも認知症の残酷な特徴の一つです。

現在、多数の製薬会社が認知症の治療薬の研究をしている最中です。

認知症の症状に悩んでいる人や、将来認知症にかかることを心配している人など、大勢の人が認知症の治療薬が出来上がることを待ち望んでいますが、今のところ承認されている認知症の治療薬はありません。
認知症の症状を抑えたり、進行を遅らせたりする薬のみが処方されているのが現状です。

このような状況のため、様々な健康・治療効果が期待されているCBDに認知症の改善効果を期待したいという声はかなり多いのではないでしょうか。

この記事では、今の時点でのCBDと認知症に関する研究とその結果を紹介しながら、認知症に関するCBDの効果を探っていきます。

CBDの効果や副作用の内容については、こちらの記事をご覧ください。
→ CBDの効果や副作用とは?効果を感じない場合の対処法も紹介

目次

そもそもCBDとは?

CBD(カンナビジオール)とは、様々な健康・治療効果が期待できると今世界中の人たちが注目している成分です。

CBDは主に大麻草から抽出されます。
CBDが大麻草の成分の一つということで、大麻取締法違反や、人をハイにする精神作用を連想する人も中にはいるかもしれませんが、CBDには精神作用は一切なく、安全性が高い成分であることがすでに証明されています。
もちろん所持・購入・使用をしても大麻取締法違反にはなりません。

大麻草の成分の中で、違法や精神作用などで問題となる成分は、THC(テトラヒドロカンナビノール)と呼ばれる成分です。
CBDとTHCは同じ大麻草の成分ですが、構造も性質も全く異なる別々の成分ですので混同しないようにしてください。

今、多くの人が健康を維持する目的でCBDを摂取しています。
医薬品よりも副作用が少なく、軽度ということで医薬品の代わりにCBDで持病の治療している人もいます。
中には医薬品では改善できない病気の症状にCBDを使っている人もいます。

CBDは認知症の治療や予防に役立つ?CBDに期待できる認知症への5つの効果とは?

CBDが認知症の治療や予防に効果があるかどうかが一番知りたいところですが、現時点ではCBDの研究者によっても見解が分かれているというのが正直なところです。

今まで行われてきた数々の研究が、認知症の原因や症状をCBDが取り除いたり軽減したりすることができたと報告していることから、CBDは認知症への治療効果があるのではないかという意見があります。

それに対して、前向きな結果が出ているとはいえ今の時点では人での大規模な調査研究が行われておらず、効果があるという証明がないため、CBDに認知症の予防や回復効果はあるとは言えないという意見もあるのです。

たしかに認知症への効果を証明するには今後、大規模な臨床試験などを行う必要はあります。
しかし、大規模な臨床試験の結果が出るには時間がかかることも事実であり、症状が進行している中で待っていられないという人もいるでしょう。

CBDは、副作用がほとんどなく、安全性の高い成分であるため、ご自身や家族の認知症に効果があるかどうかとにかく試してみたいという人も中にはいるのではないでしょうか。

この項目では、今までの研究が示唆しているCBDに期待できる認知症への5つの効果を、認知症に関する研究とその結果とともに詳しく見ていきますので、参考にしてください。
ちなみに認知症には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの種類がありますが、CBDの研究はアルツハイマー型認知症に関するものが多いです。

1.CBDがアルツハイマー型認知症の脳神経の炎症や行動障害を改善する可能性

CBDは、アルツハイマー型認知症において変性してしまった脳内の神経の治療ができる可能性や、認知障害がもとで起きる行動障害を改善する可能性があります。

2010年にCBDと認知症に関する研究が、海外で行われました。
その研究によるとCBDは、アルツハイマー型認知症の脳の神経の炎症を軽減することにより、神経の変性を改善する可能性があることが示唆されました。※1

また、小規模の人での研究では、CBDが認知症による行動障害を改善する可能性を秘めていることも発表されました。

この結果を証明するためには今後、長期間の調査ができる大規模な研究が必要ですが、今の時点の研究結果において、CBDは行動障害を伴うアルツハイマー型認知症などの補助治療となるかもしれないと結論付けられています。

2.CBDが脳細胞から認知症を起こす物質を取り除く可能性

CBDは、脳細胞からアミロイドβと呼ばれるタンパク質を取り除くことができる可能性があります。

アミロイドβとは、脳内で作られるたんぱく質の一種で、脳内に蓄積してしまうと脳細胞を死滅させる作用があると言われています。
アルツハイマー型認知症の発症は、アミロイドβが深く関わっていると考えられています。

2016年のアミロイドβとCBDに関する海外の研究では、CBDなどのカンナビノイドが脳細胞からアミロイドβを除去できる可能性があることが報告されました ※2
アミロイドβを除去できれば、認知症の進行を抑えることにつながります。
2016年の研究は、CBDに認知症の治療効果がある可能性を示していると言えます。

しかしその一方で研究結果はまだ不十分であり、CBDが認知症の進行を止めたり、予防したりする具体的な証拠がないと言及するCBDの研究者もいます。

認知症に対するCBDの作用は、エンドカンナビノイドシステム(ECS)(※)を介しているのではないかと考えられます。
しかしECSとアミロイドβの除去の関係性などまだ分からないことも多いため、CBDの認知症への効果を証明するためには、今後明らかにすべきことが沢山あると研究者は強調しています。

※ECSとは、体内の環境を一定に保とうと調節する機能のこと。細菌やストレス、炎症、痛みなどにさらされても、回復し生きていけるのはECSが働いているからと言われている。CBDは、ECSを活性化する作用があり、ECSは認知症に関与しているとされている。

3.CBDがアルツハイマー型認知症の記憶や脳の機能低下を改善する可能性

CBDは、アルツハイマー型認知症の患者の記憶や脳の機能低下を改善する可能性があります。

2011年に行われたアルツハイマー型認知症とCBDのマウスでの海外研究によると、CBDは脳細胞の成長や発達を促進することで、記憶と脳の機能を改善し、結果的に認知障害の治療や予防ができるのではないかということが示唆されました。※3

また、CBDが脳の組織を刺激する可能性があることも報告されていますし、臨床試験においては、CBDがアルツハイマー型認知症への悪影響を改善することで予防効果があるかもしれないという結果も出ています。

4.CBDにアルツハイマー型認知症の思考能力の改善効果がある可能性

最新の研究によると、CBDにはアルツハイマー型認知症における思考能力を大幅に改善する可能性があります。

2021年に、アルツハイマー型認知症のマウスにおけるCBDの研究が行われました。
その結果、CBDは認知機能を低下させる原因となる死滅した細胞やアミロイドβを除去し、代わりに認知機能を維持するたんぱく質を増加させることが報告されました。※4

アルツハイマー型認知症のマウスにCBDを定期的に注射すると、古いものと新しいものとの違いが良く区別できるようになるなど、思考能力が大幅に改善したとのことです。
またアルツハイマー型認知症は、筋肉のこわばりを発症するなど歩行能力に障害を与えることがありますが、CBDを投与した後、マウスの不自然な動きが改善されたことも発表されました。

この研究結果から、CBDがアルツハイマー型認知症の症状を改善し、認知機能の低下を遅らせたと考えることができます。

5.脳の血流を改善し血管性認知症を軽減する可能性

アルツハイマー型認知症だけでなく血管性認知症とCBDの研究もあります。
血管性認知症は、脳への血流が障害を受けることにより、脳細胞に損傷が起きる認知症です。

2016年の米国国立衛生研究所(NIH)による研究において、CBDがCB2と呼ばれる脳内のカンナビノイド受容体を活性化することにより、脳の血流が改善することが報告されました。

CB2受容体が活性化することで、脳細胞が活動的になり、血管性認知症の症状である脳細胞の損傷を軽減しました。

CBDと認知症の研究は、人においての大規模な調査など、さらに多くの研究が必要となりますが、今までに行われた研究結果だけを見ても、CBDが認知症の治療に役立つ可能性は十分にあると言えるのではないでしょうか。

今後のさらなる研究結果に期待しましょう。

CBDは認知症が引き起こす不安や運動能力の症状を緩和できる?

CBDは、認知障害が引き起こす精神的な症状や、身体的な症状を改善する効果があると考えられています。

認知症は、脳神経や脳細胞の変化が引き起こす認知や記憶障害ですが、患者が悩まされるのはそれだけではありません。
認知障害が原因で起こる精神的な症状や、身体的な症状に苦しむこともめずらしくないのです。

認知障害による精神的な症状として有名なのは、うつや不安障害です。
身体的な症状としては運動機能の低下などがあらわれることがあります。

2019年に行われた認知症とCBDの海外の研究において、CBDが認知症によって引き起こされる不安や運動能力の低下を緩和できる可能性があることが報告されました。※6

2018年に行われたCBDと抗うつ作用、抗不安作用についての海外の研究では、CBDに抗うつ作用、抗不安作用があることが示唆されています。※7

2015年に行われた国立薬物乱用研究所(NIDA)のCBDオイルとラットの海外の研究では、CBDオイルがラットなどの動物のストレスを軽減したことが発表されました。※8

2010年のCBDと不安障害における海外の研究では、患者に毎日400mgのCBDを経口投与したところ、不安が軽減したことが報告されました。※9

様々な研究がCBDは不安軽減作用があることを結論付けているため、認知障害が起こす不安やうつもCBDが軽減できると考えることができます。
また、身体的な運動能力の低下についてもCBDで改善することが期待できます。

認知症によって起こる症状をCBDが改善することによって、認知症患者やその家族の生活の質(QOL)を向上させることにつながるかもしれません。

CBDと認知症に関するよくある質問

Q.CBDは認知症に効果がありますか?

CBDと認知症に関しての人においての大規模な試験はまだないため、CBDが認知症に効果があるという証拠は、残念ながらまだありません。

しかし、動物や少人数の人間においての認知症とCBDの効果については、今まで様々な研究が行われています。
その研究結果を見ると、CBDが認知症の治療や予防に役立つ可能性は十分にあると言えます。

また、認知障害によって引き起こされる不安や、運動能力の低下が、CBDによって改善する可能性があることを報告した研究もあります。

今後の研究が待たれますが、大規模研究をして証明をするまでにはそれなりの時間がかかることが予想されます。

もし、少しでも早く効果があるかどうか確かめてみたいという場合には、試しに摂取してみて、認知症の辛い症状が改善するかどうか様子を見るという選択もできるので考えてみて下さい。

CBDは安全性の高さが証明されている成分ですので、気軽に試せると思います。

ただし、今服用している薬がある場合には、CBDとの相互作用があるかを、医師や薬剤師に確認してから摂取してください

Q.認知症にCBDを試す場合、気を付けるべき副作用はありますか?

CBDにも軽度ですが副作用が報告されています。中でも一般的なものは、下痢、体重の変化、食欲の変化、口の渇きです。

しかし、CBDに副作用が報告されているからと言って過剰に心配する必要はありません。
副作用が書いてあるからと言って、必ず起こるということではないからです。

CBDに報告されている副作用は、軽度なものとして知られていて、万が一起こったとしても、CBDの摂取を中止すれば副作用症状が回復することがほとんどです。

また、病院で処方される医薬品も安全性が確認されているものですが、副作用がない医薬品はないということも覚えておきましょう。
副作用があることと安全ではないことは同じではないため、副作用だけに注目して必要以上に不安になる必要はありません。大事なのは、不安にならないように副作用が起こった時の対処法を知っておくことです。

もし副作用が起こったら、CBDを中止して様子を見るようにしてください。
中止しても症状が治まらない場合は、CBDの副作用以外に問題がある可能性もあるので、医師の診察を受けるようにしましょう。

Q.認知症にCBDを使う場合、どのような製品がおすすめですか?

CBD製品には様々な種類があります。
全身作用のあるCBDオイルやリキッド、錠剤、グミやクッキー、飲み物などもありますし、局所作用のあるCBDクリームやバームなども販売されています。

認知症のためにCBDを摂取する場合は、脳内での作用が必要になるので、全身作用のあるCBD製品をおすすめします。
ただし、舌下摂取する必要があるCBDオイルや、吸入摂取する必要があるCBDリキッドは、吸収率は良いのですが、摂取にもコツが必要だったり、タバコのように場所を選んだりします。

もし、舌下摂取などが難しいといった場合は、CBDカプセルやCBDグミなどの食品を経口摂取することをおすすめします。
特にCBDが含まれている食品は、普段食べているものと同じようにおいしく食べられるので、患者様に負担なく摂取していただけるかもしれません。

【参考資料】
※1 Cannabinoids and Dementia: A Review of Clinical and Preclinical Data
※2  Amyloid proteotoxicity initiates an inflammatory response blocked by cannabinoids
※3 In vivo Evidence for Therapeutic Properties of Cannabidiol (CBD) for Alzheimer’s Disease
※4 Cannabidiol Ameliorates Cognitive Function via Regulation of IL-33 and TREM2 Upregulation in a Murine Model of Alzheimer’s Disease
※5 Endocannabinoids in cerebrovascular regulation
※6 Medical Cannabis for the Treatment of Dementia: A Review of Clinical Effectiveness and Guidelines
※7 Translational Investigation of the Therapeutic Potential of Cannabidiol (CBD): Toward a New Age
※8 The Biology and Potential Therapeutic Effects of Cannabidiol
※9 Neural basis of anxiolytic effects of cannabidiol (CBD) in generalized social anxiety disorder: a preliminary report

この記事を書いた人

安藤 恵美のアバター 安藤 恵美 薬剤師/臨床試験コーディネーター

星薬科大学薬学部を卒業後、薬剤師国家免許を取得。横浜市の大型総合病院の薬剤部で、調剤・服薬指導業務を学んだあと、薬剤師や臨床試験コーディネーターとして勤務しながら、医療機関のソフトウェア開発やグラフィックデザインなどにも携わる。
結婚を機にアメリカにわたり、CBDについて知る。その後CBDを実際に試しながらCBDについて学ぶ。

現在は医薬品、サプリメントについて等、ヘルスケアに特化した薬剤師ライターとして活躍。同時に医療コンサルタントとして、オンラインで健康相談も行っている他、Webデザイナー、グラフィックデザイナーとして、企業やコミュニティーからの仕事も行っている。

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