CBDの肺疾患への作用とは?VAPEを吸うと肺に悪影響はあるのか?

CBDの肺疾患への作用とは

CBDは、様々な健康・治療効果が期待されている成分の一つです。
CBDは、大麻草の成分の中の一つですが、大麻草と聞いて多くの人が連想するような人をハイにする作用は一切ありません。

CBDは、大麻取締法にも違反せず、安全性が高いことが確認されています。

パンデミックの影響から、新型コロナウイルスに対する予防・治療についてや、肺や肺疾患に関する情報を調べる人が多くなりました。
CBDの健康・治療効果は、肺疾患にも効果があるのでしょうか。

この記事では、CBDの肺疾患に対する効果や肺疾患にCBDを使う際の注意点、おすすめのCBD製品などを紹介していきます。
またVAPE用CBD製品・VAPEペンに関する問題や、それらが引き起こす健康リスクが最近問題になっています。
CBDと肺に関することということで、こちらの危険性についても取り上げていきます。

CBDの危険性や、安全に使う方法については、こちらの記事もご覧ください。
→ CBDやCBDオイルに危険性はあるの?

目次

CBDが肺疾患に期待されている4つの効果

CBDは、いくつかの肺疾患に対し効果を示す可能性があります。次の4つの肺疾患に対するCBDの作用を海外の文献から読み解いていきましょう。

1.CBDの新型コロナウイルスの予防と肺損傷に対する作用

CBDは、初期段階の新型コロナウイルス感染の予防効果と、新型コロナウイルスによる肺損傷の改善効果があると考えられています。

新型コロナウイルスに対して、医薬品ではない安全性の高いCBDを使いたいという人も多いのではないでしょうか。
最新の研究からCBDの新型コロナウイルスに対する作用を探っていきます。

新型コロナウイルス感染の予防効果

2022年に、重症急性呼吸器症候群新型コロナウイルス2(SARS-COV-2)の感染とCBDに関する海外の研究が行われました。
この研究結果において、CBDが新型コロナウイルスの増殖を部分的に抑制することや、経口投与されたCBDによって新型コロナ検査での陽性の数が減ったこと、CBDが細胞やマウスにおける新型コロナウイルス感染を阻害したことが報告されました。※1

CBDを新型コロナウイルスの感染予防や治療に対して使えると証明するには、今後さらなる臨床試験が必要になりますが、この研究結果は、CBDが初期段階の新型コロナウイルス感染の予防薬になる可能性があることを強調しています。

新型コロナウイルスによる肺損傷の改善効果

新型コロナウイルスは、ウイルス性肺炎と、急性呼吸窮迫症候群とよばれる疾患の組み合わせを引き起こすと言われています。
深刻な肺損傷を引き起こすのは、急性呼吸窮迫症候群の可能性が高いです。

2020年に、CBDと急性呼吸窮迫症候群における肺損傷に関する海外の研究が行われ、Journal of Cellular and Molecular Medicineに掲載されました。
この研究結果において、CBDがエンドカンナビノイドシステム(ECS)(※)に作用することにより炎症を抑え、損傷した肺を改善したことが報告されました。※2

※ECSとは、体内の環境を一定に保とうと調節する機能のこと。細菌やストレス、炎症、痛みなどにさらされても、回復し生きていけるのはECSが働いているからと言われている。

CBDの新型コロナウイルスによる肺損傷の改善に関しても、効果を証明するためには更なる研究が必要です。
しかしながら、CBDが新型コロナウイルスの感染予防や、肺損傷の改善に効果を示すことが証明されれば、今後多くの人々の助けになることは間違いありません。

2.CBDの慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する作用

CBDは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状を軽減できる可能性があります。

COPDとは、タバコや汚染された待機などの有害物質を吸入することで起こる肺疾患です。
肺や気管支に炎症を起こすことで呼吸がしづらくなり、患者の生活の質を著しく下げてしまいます。

COPDの一番大きな原因は、長期に渡る喫煙です。
COPD患者の90%以上がタバコによる煙が原因で発症していると言われています。

2015年のCBDと肺の炎症に関してのマウスの海外の研究では、CBDが肺の炎症を抑制し、呼吸がしやすくすることが報告されました。※3

2013年のCBDと喫煙者に関する海外の研究では、CBDが喫煙者を40%減らすことが報告されています。※4

つまりCBDは、COPDの改善効果だけでなく、喫煙を止めさせることで将来的にCOPD患者を減らす効果もあるかもしれないということです。

CBDがCOPDの薬の代替になることや、COPDの薬と一緒に治療に使えることを証明するためには、将来的にさらなる研究が必要になります。
今後の研究結果に期待しましょう。

3.CBDの肺がんに対する作用

CBDは、肺がんに対して抗腫瘍効果を持つ可能性があると考えられています。

2019年のCBDと肺腺癌の患者についての海外の症例報告によると、化学療法や放射線療法をせず、CBDを一か月間摂取した結果、腫瘍が小さくなり安定していることが確認されました。
この結果は、CBDが肺がんに対して抗腫瘍効果を示す可能性を示唆しています。※5

肺がんとCBDの研究は、まだ数多くは行われていません。
2019年の研究において、海外の研究者たちはCBDを悪性腫瘍における治療に応用するには、更なる研究が必要であると述べています。

4.CBDの肺炎に対する作用

CBDは、体内の環境を一定に保とうと調節するECSを活性化させることにより、抗炎症作用を示すと考えられています。

肺炎は、細菌やウイルスなどにより肺に炎症が起こる病気です。
CBDの抗炎症作用を考えると、CBDが肺炎の症状を緩和させることができるのではないかと期待してしまうかもしれません。

しかし、CBDが肺炎に効果があるとする文献がまだないため、今の時点では、肺の炎症に効く可能性があると言うことはできません。

肺が痛い?VAPE用CBD製品を肺で吸ったときに起こる3つの危険性

CBDが肺疾患を改善する可能性があることは分かりましたが、その一方で、VAPE用のCBD製品(※)が原因で健康被害が出ているという事実があります。

※VAPE用のCBD製品とは、吸入用に作られたCBD製品のこと。VAPE用CBDは、電子タバコやVAPEペンなどのヴェポライザーを使って気体にすることで、肺から吸収される。VAPEでの吸入摂取は、CBDの吸収率が高く、効果があらわれやすいことがメリットと言われている。

VAPE用のCBD製品を吸入した後、意識を失い呼吸器不全に陥り、人工呼吸で一命をとりとめたという症例があります。
また、アメリカの医療センターでは、VAPE用のCBD製品によって60件の健康被害があったと報告しました。

本来は安全性が高いことで知られているCBD製品に、なぜこのような健康被害が出てしまっているのでしょうか。

VAPE用のCBD製品の危険性を考えられる3つの原因から探っていきます。

1.CBD製品に有害物質がが含まれている危険性

VAPE用CBD製品には、有害な不純物が含まれている可能性があります。

海外の研究チームがCBD製品を調査した際、いくつかのVAPE用CBD製品にパッケージには記載されていない有害物質が含まれていたことが分かりました。

CBDの吸入摂取は、吸収率が高く、CBDの効果を体感しやすくできることがメリットと言われていますが、有害な物質に対しても、効率よく吸収してしまいます。
その結果、健康被害もそれだけ大きくなる可能性があるのです。

パッケージに記載されていない有害物質には様々なものがありますが、例として2つの物質を取り上げていきます。

日本では違法のTHC

CBD製品だと思って購入しても、中には日本では違法のTHCが含まれている場合もあります。
THCは大麻草の中の、人をハイにさせる作用を持つ成分です。

日本で販売することは禁止されていますが、海外からの輸入品の中には、THC入りのVAPE用CBD製品が混ざっていることもあるため注意が必要です。

THCは人をハイにさせる作用に加えて、記憶障害や心拍数の増加、不安感などの副作用が起こる可能性があります。

吸収率の高い吸入摂取でTHCを摂取してしまうと、有害な作用に加えて副作用が起こる可能性も高くなることが考えられます。

健康被害を引き起こす合成カンナビノイド

合成カンナビノイドとは、研究のために合成されたカンナビノイドで、いわゆる危険ドラッグと呼ばれているものです。
この合成カンナビノイドが含まれているVEPE用CBD製品が、闇市場に出回っていると言われています。

合成カンナビノイドを摂取した結果、呼吸困難を起こし、緊急治療室に運ばれた症例が海外には多数あります。
先ほどのVAPE用のCBDを吸入した後、意識を失い呼吸器不全に陥った症例も、合成カンナビノイドが原因であると報告されました。

多くのCBD製品が販売されているアメリカの市場ですが、CBD製品に合成カンナビノイドが含まれていないことを証明する検査は義務付けられていません。
つまり、危険ドラッグが含まれている製品が直輸入で日本に入ってくる可能性は十分にあるということです。

THCや合成カンナビノイド以外の身体に有毒な成分が、製品に混入している場合もあります。
CBD製品を購入するときに、製品の検査結果をよく見て、身体に害になる物質が入っていないことを確認することは、非常に重要です。

2.VAPEペンに問題がある場合の危険性

健康被害が出ている第二の理由は、VAPEペン自体に問題があることが考えられています。

VAPEペンは、CBDを燃焼しない温度で気化させるのが通常ですが、多くのVAPEペンは中国製のもので、中には法的な規制を受けないままの質が悪いVAPEペンが販売されているのも事実です。

質が悪いVAPEペンは、CBD製品を必要以上の高熱で燃焼させてしまう可能性があります。

CBD製品を燃焼するということは、CBDだけでなくCBD製品に含まれているプロピレングリコールという溶剤や、CBD製品にフレーバーをつけるための人工香料、ビタミンEなども燃焼されるということです。
その結果、これらの添加物が、熱により身体に有毒物質に変化してしまうかもしれません。

プロピレングリコールは熱によって発がん性物質に代わると言われています。※6 ※7
本来は安全なはずの香料やビタミンEも、高温で加熱されると身体に有害な物質に代わる可能性があります。
高温加熱された香料は、呼吸器疾患を起こす可能性があり、高温加熱されたビタミンEは、リポイド肺炎と言われる肺炎の一種の原因になる可能性があります。

このように通常は安全だと言われているものでさえ、加熱すると性質が変わり、人間の体に害を与える物質になりかねません。
VAPE用のCBDを吸入して起こる健康被害は、このような質の悪いVAPEペンなどが原因の一つであると考えられます。

3.相互作用が出る危険性

第三に考えられる原因は、VAPE用のCBDを吸入することにより、副作用や服用薬との相互作用などが起こりやすくなってしまうことが考えられます。

CBD製品の摂取法は、大きく分けて4つあります。経口摂取、舌下摂取、経皮摂取、そして吸入摂取です。

吸入摂取は他の摂取法に比べて吸収率が高いのが特徴です。吸収率が高いと体感する効果も高くなります。

吸収率や効果が高いということは、メリットでもありますが、相互作用の面から見るとデメリットにもなります。
CBDは副作用が軽度で、安全性が高いと証明されていますが、吸収率が高いことで副作用も起こる確率も高くなるかもしれません。
副作用が万が一起こったとしても、早いうちに用量を少なくしたり、摂取を止めたりすれば問題ないとされています。

また、CBDは肝臓の薬物の代謝酵素を阻害する作用を持っています。
その結果、服用している薬の解毒を遅らせ、薬の作用を過剰にしてしまったり、必要以上に体内に薬が長く残ってしまうということが起きます。

CBDを肺疾患に使う際の2つの注意点

CBDを肺疾患に用いる際に注意しなければいけないことをまとめていきます。

1.質の高いCBD製品を購入するようにする

先ほどお話ししたように、質の悪いCBD製品も市場には出回っていて、そのような製品を摂取することにより、深刻な健康被害を起こす可能性があります。

CBDで肺疾患を改善したいと思っているのに、劣悪な製品に含まれている有害物質を摂取し、呼吸困難を起こしてしまったら本末転倒です。

安価な商品や、高い効果をうたっている商品は、確かに魅力的ですが、それだけで商品を選んでしまうと劣悪な商品を摂取することにもなりかねません。
CBD製品を購入する際は、必ず商品の品質を確かめて安全性が高いことを確認してから購入してください。

信頼できるメーカーの製品は、第三者機関に検査を依頼していたり、検査結果の詳細を公開したりしています
そのような記載が何もない商品の場合は、メーカーに検査結果を直接問い合わせ、検査の詳細などを聞いてください。

2.医師や薬剤師にしっかり確認する

CBDは、医薬品と相互作用を起こす可能性があります。

もし、今服用している薬にCBDの効果を加えたいということで、同時期に医薬品とCBD製品を摂取する場合には、CBDが服用薬に対して相互作用を起こすかどうか必ず確認してください。

相互作用を起こす可能性があれば、CBD摂取ができないこともありますし、服用薬の用量を減らさなければいけないこともあります。
もしくは、服用薬を止めてCBDに切り替えることも考えられますので、主治医やかかりつけの薬局の薬剤師などの専門家に、CBDの相互作用について確認することが必要です。

肺疾患の治療にCBDを使用したい旨を、主治医に確認することも重要なことです。
医師には医師の治療プランがありますし、患者の状態を把握する必要があるからです。

CBDは、人や身体の状態によって効果の出方が違うという特徴があります。
CBDを摂取することで肺疾患に効果を示す人もいれば、思ったような効果が出ない人もいるということです。

CBDを使うことが医師の治療プランと大きくかけ離れていたり、医師が患者の状態からCBDの効果が出にくいと判断したり、服用している薬との相互作用からCBDの摂取は控えてほしいと言われたりすることもあります。

いずれにせよ、治療をスムーズに進ませるためにも、CBDの摂取について主治医と相談することが大切です。

CBDを肺疾患に使う際のおすすめの製品

肺疾患にCBDを使う際のおすすめの製品は、舌下摂取をするCBDオイルです。

CBDオイルは舌下で摂取することで、舌の裏側の太い血管から直接CBDを吸収することができます。
その結果、カプセルや錠剤、食品に含まれたCBDのように、飲み込んだり、噛んだりして摂取するよりも高い吸収率で摂取でき、その分高い効果が期待できます。

吸収率の面を見ると、吸入摂取をするVAPE用のCBDオイルや、CBDリキッドは、舌下摂取のCBDオイルよりも高い吸収率が見込めます。

しかし、先ほど説明したように、効果が高い分、他の製品以上に商品の質に注意しなければいけませんし、吸入摂取は、タバコの様に見えるため、禁煙場所や人混みなどで気軽に摂取できないというデメリットもあります。
それらのことを総合して考えると、舌下摂取のCBDオイルの方が使いやすいのではないかと思います。

CBDと肺についてのよくある質問

Q.新型コロナウイルスの予防のためにCBDを摂取しても良いですか?

今まで行われた研究から、CBDが新型コロナウイルスの予防や、新型コロナウイルスによる肺損傷の改善に効果がある可能性が考えられます。

CBDは安全性の高い物であることが証明されているので、今服用している薬がなく、相互作用の心配がない場合には、新型コロナウイルスの予防に試しに摂取してみても良いのではないでしょうか。

ただし、まだ研究段階のため、必ず効果があると証明されているわけではありませんので、手洗いうがいなど、ご自身でできる予防は続けてするようにしてください。

Q.劣悪なVAPE用CBD製品を選ばなければ吸入摂取は安全ですか?

高品質の純粋なCBDオイルやVAPEペンを使えば、吸入摂取をしても身体への悪影響の心配はほぼないと言えます。

ただし、吸入摂取は吸収率が高いため、CBDの作用が想像以上に出るかもしれません。
いくら安全なものとは言え、作用が強すぎたり、副作用が出てしまったりすると不快な思いをする可能性もあります。
そのような問題を避けるため、最初は少用量から様子を見て摂取をすることをおすすめします。

用量を少なくして摂取し始めることによって、効果の出方を確認しながら摂取できるのでより安心です。

Q.服用薬とCBDが相互作用を起こす可能性があると薬剤師に言われたのですが、どちらを摂取すると良いですか?

まずは肺疾患でおかかりの主治医の意見を聞いてください。

医師の治療プランによっては、CBDを治療に取り入れることが難しい場合もあります。
またもしCBDを取り入れた治療をするにしても、今服用されている医薬品の用量を減らして対応するのか、もしくは服用を止めるのかなども医師の指示に従う必要がありますので、主治医の先生とよく相談をして下さい。

【参考資料】
※1 Cannabidiol inhibits SARS-CoV-2 replication through induction of the host ER stress and innate immune responses
※2 Cannabidiol (CBD) modulation of apelin in acute respiratory distress syndrome
※3 Cannabidiol improves lung function and inflammation in mice submitted to LPS-induced acute lung injury
※4 Cannabidiol reduces cigarette consumption in tobacco smokers: preliminary findings
※5 Striking lung cancer response to self-administration of cannabidiol: A case report and literature review
※6 Larsen BT et al. “Pathology of Vaping-Associated Lung Injury,” N Engl J Med (2019) 
※7 Marcu, Jahan. “How Safe Is Your Vape Pen?” Project CBD: Medical Marijuana & Cannabinoid Science, 14 July 2015,

この記事を書いた人

安藤 恵美のアバター 安藤 恵美 薬剤師/臨床試験コーディネーター

星薬科大学薬学部を卒業後、薬剤師国家免許を取得。横浜市の大型総合病院の薬剤部で、調剤・服薬指導業務を学んだあと、薬剤師や臨床試験コーディネーターとして勤務しながら、医療機関のソフトウェア開発やグラフィックデザインなどにも携わる。
結婚を機にアメリカにわたり、CBDについて知る。その後CBDを実際に試しながらCBDについて学ぶ。

現在は医薬品、サプリメントについて等、ヘルスケアに特化した薬剤師ライターとして活躍。同時に医療コンサルタントとして、オンラインで健康相談も行っている他、Webデザイナー、グラフィックデザイナーとして、企業やコミュニティーからの仕事も行っている。

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