なんとなく体の調子が悪い、ストレスがたまって頭痛がひどい…。
その原因はカンナビノイド欠乏症かもしれません。
カンナビノイド欠乏症とは、わたしたちの体内にある身体調節機能がうまく働かなくなることによって、頭痛や疲労感などさまざまな症状が現れてしまう状態です。
欠乏症が慢性的に続くと、がんや糖尿病などの生活習慣病やうつ病などといった精神疾患も引き起こします。
この記事ではカンナビノイド欠乏症について、その原因や症状、欠乏症を避けるための方法を詳しく解説します。
カンナビノイド欠乏症についての理解を深めて、心身の健康を維持しましょう。
カンナビノイド欠乏症とは?
カンナビノイド欠乏症とは、体内で作られる内因性カンナビノイドという成分が不足することによって体の機能に支障が出る症状です。
具体的には頭痛や疲労感、消化器官の不調などといった症状が現れます。
一つ一つは病院に行くほどではないと判断されるような不調ですが、複数の症状が重なると仕事や日常生活に支障をきたしてしまう可能性もあります。
ここまでの話の中で「カンナビノイドとは?」「体の機能や不調とどのような関係があるの?」と思われた方も多いかもしれません。
「カンナビノイド欠乏症」の理解を深めるためには「カンナビノイド」という成分と「エンドカンナビノイドシステム(ECS)」という機能について、まず理解しておく必要があります。
次は「カンナビノイド」について説明します。
そもそもカンナビノイドとは?
カンナビノイドとは、エンドカンナビノイドシステムを正しく機能させるために必要な成分です。
私たちの体内には、脳や心臓、消化器官などさまざまな部分に「カンナビノイド受容体」があります。
カンナビノイドがこのカンナビノイド受容体に結合することによって、エンドカンナビノイドシステムが正常に作用するのです。
現時点で100種類以上のカンナビノイドが発見されており、効果や効能はカンナビノイドの種類によって異なります。
カンナビノイドは、以下の3種類に分けられるため、それぞれについて説明していきます。
- 内因性カンナビノイド
- 植物性カンナビノイド
- 合成カンナビノイド
内因性カンナビノイド
内因性カンナビノイドとは、私たちの体内で生成されているカンナビノイドです。
エンドカンナビノイドシステムは、基本的に内因性カンナビノイドによって機能しています。
内因性カンナビノイドはカンナビノイドのなかで最も大切ですが、加齢や外部からのストレスなどで不足しやすく常に必要な量が供給されているわけではありません。
植物性カンナビノイド
植物性カンナビノイドとは、大麻草に含まれているカンナビノイドです。
さまざまな種類のカンナビノイドがあり、代表的なのはTHC(テトラヒドカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)と呼ばれる成分です。
THCは体内に取り入れると「ハイになる」「気持ちよくなる」などの向精神作用があり、日本国内では大麻取締法で厳しく規制されています。
CBDはリラックス作用や睡眠の質を高める効果があり、近年注目を集めています。
安全性が高くTHCのような向精神作用がないため、日本においても合法です。
合成カンナビノイド
合成カンナビノイドとは、THCやCBDなど天然に存在するカンナビノイドの分子構造を模して人工的に作られたカンナビノイドです。
合成カンナビノイドは「医薬品」と「危険ドラッグ」に分けられます。
元々は医療研究のために開発されましたが、安全性の確認されていない合成カンナビノイドが危険ドラッグに使用されるようになり世界中で問題視されています。
医薬品としての合成カンナビノイドはほとんど市場には流通していないため「合成カンナビノイド=危険なもの」という認識でよいでしょう。
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは?
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは、人間を含むすべての脊椎動物が持っている身体の恒常性を保つ仕組みのことをいいます。
生きているとストレスや不安、細菌などの感染、痛みなど、身体が不都合な状態にさらされることがありますが、健康であれば時間が経つと自然と回復に向かいますよね。これは、身体の中のECSが働いて、身体を元の状態に戻し、心身の健康状態を維持しようとするからだと考えられています。
つまりECSは、生きるために必要な身体調節をしているのです。
ECSは通常、内因性のカンナビノイドであるアナンダミドと2-アラキドノイルグリセロールが、CB1やCB2などと呼ばれるカンナビノイド受容体で結合することで作動しています。また、植物性カンナビノイドや合成カンナビノイドも同じようにカンナビノイド受容体に直接的または間接的に結合します。
内因性のカンナビノイドとあらわれる作用は違いますが、どちらも結果的にECSを活性化します。
エンドカンナビノイドシステムが調整している身体機能とは?
カンナビノイド受容体にECSが作動すると、例として次のような身体機能を調節します。
- ストレスや不安
- 睡眠
- 炎症や痛み
- 免疫
- ホルモンバランス
- 食欲
- 消化
- 吐き気
- 体温
- 精神や神経
カンナビノイド受容体が存在している身体の部分は?
CB1受容体は、脳の神経、脂肪細胞、肝細胞、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、小腸、肺、子宮、精巣など様々な臓器や細胞に存在します。
CB2受容体は、脾臓、扁桃腺、リンパ節、マクロファージ、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好酸球などの白血球系の細胞などに多く見られます。
CB1やCB2などのカンナビノイド受容体は、身体のいたるところに存在していて、身体を常に守っています。
カンナビノイド欠乏症になるとどうなる?
カンナビノイドが不足するとエンドカンナビノイドシステムが正常に機能しなくなり、カンナビノイド欠乏症が起こります。
カンナビノイド欠乏症はわたしたちが生きていくうえで必要な身体調節機能がうまく働かなくなるわけですから、さまざまな心身の不調や病気を引き起こします。
具体的には、
- 頭痛
- 体のだるさ
- 疲労感
- 吐き気
- 筋肉の痛み
- 消化器官の不調
- 気持ちの落ち込み
- イライラする
- 肌荒れや肌トラブル
- 記憶力の低下
- 不眠症
などといった症状が出てくる可能性があります。
その結果、がんや心臓病、糖尿病などといった生活習慣病やうつ病などの精神疾患など、さまざまな病気にかかりやすくなってしまうのです。
また、体の不調があるにも関わらず、どの科を受診しても医学的に説明がつかない場合はカンナビノイド欠乏症の可能性があるかもしれません。
特に、過敏性腸症候群、線維筋痛症、片頭痛がカンナビノイド欠乏症によって引き起こされているというエビデンスが多いです。
2016年に行われたカンナビノイド欠乏症の研究では、過敏性腸症候群、線維筋痛症、片頭痛などの明確な原因がなく、治療が難しい疾患は、エンドカンナビノイド欠乏症が原因ではないかと考えられることが報告されています。※1
過敏性腸症候群、線維筋痛症、片頭痛はどんな病気?
過敏性腸症候群とは、腸に炎症や潰瘍などの異常が見られないのに、腸が過敏になり便通の異常が起こる疾患です。ストレスや自律神経の乱れなどが原因ではないかと言われています。
線維筋痛症とは、全身の筋肉や関節などの痛みを特徴とする原因不明の慢性疾患です。中高年の女性に多く、長期に渡って身体の痛みやこわばりが持続したり、再発したりします。
片頭痛とは、こめかみから目にかけて頭の片側や両側に起こる頭痛で、ズキンズキンと脈を打つような痛みが特徴的です。痛みが起きると、光や音、においに敏感になったり、激しい痛みとともに吐き気や嘔吐が生じたりし、生活に支障をきたすことも少なくありません。片頭痛は、脳の血管が拡張することで起こりますが、原因は明確には分かっていません。
カンナビノイド欠乏症の原因とは
カンナビノイド欠乏症の原因は、加齢による老化や睡眠不足、運動不足、食生活の乱れ、アルコールの過剰摂取、ストレスなどです。
心理的なストレスや、疲労などといった体への負担が慢性的に続くと、内因性カンナビノイドはどんどん消費されてしまいます。
これらによって体内で作られる内因性カンナビノイドが不足したり、エンドカンナビノイドシステムの機能が低下したりなどといったことが起こります。
カンナビノイド欠乏症を避けるための方法
体内で作られる内因性カンナビノイドは、生活習慣を見直すことで生成を促すことが期待できます。
ここでは、カンナビノイド欠乏症を避けるための方法について解説します。
1.適度な運動を心がける
適度な運動はカンナビノイド受容体が活性化され、エンドカンナビノイドシステムの刺激や内因性カンナビノイドの生成につながります。
ランニング後に多幸感が得られる「ランナーズハイ」も、神経伝達物質のエンドルフィンだけでなく内因性カンナビノイドが分泌されていることによると言われています。
適度に体を動かすことは、カンナビノイド欠乏症の原因であるストレスを軽減する効果も期待できます。
運動を強制してしまうと逆にストレスになるため、無理のなく楽しめる範囲で取り入れていきましょう。
2.睡眠をしっかりと取る
睡眠不足はエンドカンナビノイドシステムの働きを低下させます。
睡眠をしっかりとって心身の疲労を取り除くことは、身体調節機能を整えるために重要です。
ただ寝ればよいというわけでなく、夜に寝て朝起きるという規則正しい生活が理想的です。
エンドカンナビノイドシステムの働きを保つためには、1日7時間ほどの睡眠が必要と言われています。
3.良質な脂質を摂取する
内因性カンナビノイドの原料は、オメガ3、オメガ6などといった脂質です。
良質な脂質を摂取することは、内因性カンナビノイドの生成を促すことにつながるでしょう。
オメガ3はイワシやサンマなどの青魚や、エゴマ油、アマニ油などに含まれており、オメガ6はコーン油、大豆油、ひまわりの油やくるみ、動物性脂肪などに含まれています。
しかし、脂質の摂りすぎは肥満や生活習慣病などの原因となるため、適度な量を摂取することを意識してください。
4.CBDを摂取する
エンドカンナビノイドシステムは基本的に内因性カンナビノイドによって機能していますが、常に充分な量の内因性カンナビノイドが供給できるわけではありません。
そのため、植物性カンナビノイドであるCBDを摂取することはカンナビノイド欠乏症を防ぐために効果的です。
CBDを摂取したとしても、劇的にエンドカンナビノイドシステムの機能が向上するわけではありません。
しかし、心身がストレスにさらされたときにCBDは身体調節機能を維持するサポートをしてくれます。
CBD製品を選ぶときの注意点
CBD製品を選ぶときは、2つのポイントに注意してみてください。
1.質の良い製品を選ぶ
日本で販売されているCBD製品の中には、残念ながら劣悪な製品があります。劣悪な製品には以下のようなものが含まれている可能性があります。
- 日本で大麻取締法違反に指定されているTHC
- 危険ドラッグなどの合成カンナビノイド
- 重金属や農薬
- CBDリキッドなどに含まれる防腐剤や溶剤
- 加熱すると有害物質に変化する添加物
また、CBDと書いてあるのにもかかわらずCBDが全く含まれていない製品や、表示されている濃度がでたらめな製品もあります。
そのような製品を避けるためには、購入したいCBD製品のウェブサイトや説明書をよく読んで、第三者機関によって製品の成分検査が行われているかどうかと、成分検査の結果、CBD濃度、CBD以外の原料、栽培法、抽出法などを自分で確認するようにしましょう。
信頼できるメーカーの製品は、第三者機関による検査結果を公表しています。
2.医薬品を飲んでいる人は医療従事者に相談する
医薬品の中には、CBDと相互作用を起こすものがあります。CBDと併用すると、医薬品の効果が出過ぎてしまったりする恐れがあるため、CBD製品を購入する前にかかりつけの医師や薬剤師に相談し、指示に従いましょう。
CBDを摂取したいからといって、普段服用している薬を勝手に中断したりはしないでください。
CBDの摂取方法
CBDの摂取方法には、以下のようなものがあります。
- CBDオイル(舌下摂取)
- CBDグミ・サプリメント(経口摂取)
- CBDべイプ(気化吸収)
- CBDクリーム・バーム(経皮吸収)
さまざまな方法がありますが、CBDは継続して摂取することで効果を感じるものです。
自分に合った方法でライススタイルに取り入れましょう。
初めての方には、舌の下にオイルを垂らすCBDオイルや、お菓子のグミやサプリメントにCBDが配合されたCBDグミ・サプリメントなど手軽に摂取できるCBD製品がおすすめです。
まとめ
カンナビノイド欠乏症は、体内で生成される内因性カンナビノイドが不足することによって体の機能(エンドカンナビノイドシステム)に不調が生じる状態です。
具体的には頭痛や疲労感、消化器官の不調などといった症状が起こります。
内因性カンナビノイドは慢性的なストレスにさらされることでどんどん消費され、睡眠不足や運動不足、食生活の乱れ、アルコールの過剰摂取などといった生活習慣の乱れもカンナビノイド欠乏症の原因となります。
カンナビノイド欠乏症は適度な運動や睡眠など生活習慣を見直すことで予防できますが、植物性カンナビノイドであるCBDの摂取も効果的です。
規則的な生活とCBDをうまく取り入れることで、カンナビノイド欠乏症を予防しましょう。
よくある質問
カンナビノイド欠乏症にならないようにするためにはどうしたらいい?
カンナビノイド欠乏症にならないようにするためには、適度な運動を心掛けたり、睡眠をしっかりとったり、良質な脂質を摂取したりするなど生活習慣を見直すと良いでしょう。また、CBDを摂取することもカンナビノイド欠乏症の予防に効果が期待できます。
カンナビノイド欠乏症になるとどんな症状がでる?
カンナビノイド欠乏症になると、頭痛やだるさ、疲労感、吐き気、筋肉痛、消化不良、気分の落ち込み、イライラ、肌トラブル、記憶力の低下、不眠症などの症状があらわれます。特に、過敏性腸症候群、線維筋痛症、片頭痛は、カンナビノイド欠乏症によって引き起こされているというエビデンスが多いです。
CBDがカンナビノイド欠乏症にいいのはなぜですか?
CBDは植物性のカンナビノイドで、直接カンナビノイド受容体に結合はしませんが、間接的にECSを活性化します。
内因性のカンナビノイドが欠乏するとECSがあまり刺激されず、身体機能の調節が落ちた状態になるため、身体に不調が出ます。CBDは、ECSを活性化することで身体機能調節をサポートします。その結果、カンナビノイド欠乏症の症状の改善が期待できます。