昨今、CBDに健康・治療効果があることは多くの人に知られています。
最近は日本でも、CBG、CBN、CBCといった、CBD以外のカンナビノイドにも注目が集まってきました。
今回はその中でも「CBDの母」と呼ばれているCBGについて解説していきます。
この記事では、CBGの効果やCBDとの違い、CBGのおすすめの製品などについて説明していきます。
CBGとは?

CBGとはカンナビゲロールとも呼ばれる、大麻草に含まれる成分の一つです。
大麻草の成分といえば、健康・治療効果が注目されているCBDや、人をハイにする作用があるTHCが有名ですね。
実はCBDやTHCなど、大麻草に含まれている全てのカンナビノイドは、CBGが分解してできたものなんです。
CBGは、大麻草に含まれるカンナビノイドの基になっていることから、Mother of Cannabinoids(カンナビノイドの母)とも呼ばれます。
もともとCBGは、CBGA(カンナビゲロール酸)という酸性型で大麻草に含まれています。
大麻草が成長すると、CBGAの大部分が化学変化をし、CBDやTHC、CBCなどの前駆体(※)である酸性型のCBDAや、THCA、CBCAに変わります。
その酸性型が、熱を受けることによって再び化学変化をし、CBD、THC、CBCなどのカンナビノイドに変わるのです。
※前駆体とは、化学物質が生成する前の段階に位置する物質のこと
CBGは希少なカンナビノイド?
CBDなどに変化しなかったCBGAの一部はCBGとして、大麻草に残ります。
しかしほとんどのCBGは、大麻草の成長過程で他のカンナビノイドに変化してしまいます。植物が成長すればするほどCBGの量は少なくなるので、CBGはマイナーカンナビノイドとも言われています。
CBGをできるだけ多く抽出するためには、成長しきる前の若い段階の大麻草から抽出したり、大麻草を品種改良してCBGを多く含む品種を栽培したりなどの工夫が必要です。
ちなみに、大麻草の品種によってCBGがどのくらいの割合でTHCやCBDに変化するのかが変わります。
THCに変化する割合が多い大麻草は、嗜好用大麻であるマリファナ、CBDに変化する割合が多い大麻草は、産業用大麻であるヘンプと呼ばれています。
CBGはハイになる?キマる危険性の有無
CBGが基になってTHCに変化することから、CBGにはTHCと同じような人をハイにする作用などの精神活性作用や中毒性があるのではないか、THCのように違法にならないのかと心配になる人もいると思います。
しかし実際は、CBGは「非精神活性カンナビノイド」であるため、CBGではハイになったりキマったりはしません。
中毒性もないため、日本でも所持・購入が違法ではありません。
CBGはどのような健康・治療効果がある?

代表的な3つの効果
CBGは希少なカンナビノイドなため、研究があまり進んでいませんでした。しかし最近になって、CBGの医学的な効果についての研究が少しずつ行われるようになってきました。
2018年のCBGの作用に関する海外の研究によると、CBGはCB1、CB2と呼ばれるカンナビノイド受容体に作用して、エンドカンナビノイドシステム(ECS)を活性化することが報告されました。※1
CBGは、ECSを活性化し、身体の恒常性を保つことによって様々な医学的効果を身体にもたらすことが期待されます。
実際にCBGがどのような医学的効果をもたらす可能性があるのか、代表的な3つの効果について見ていきましょう。
1.抗炎症効果
CBGには、炎症を抑える効果があることが期待されています。
2011年の研究では、CBGなどのカンナビノイドが抗炎症効果をあらわすことが報告されています。※2
2013年には、腸の炎症とCBGについてのマウスの研究が海外で行われました。その研究の結果、CBGは炎症性腸疾患の症状を軽減するのではないかと結論付けられました。※3
腸の炎症は、腸内に存在する微生物を身体が攻撃しようとして、アレルギー反応を起こすことによって起こります。
この研究において、腸内のアレルギー反応による炎症がECSによって抑えられることが分かりました。
CBGは、ECSを活性化することによって炎症を抑え、腸内が正常に保たれるようにバランスをとっているのではないかと考えられます。
2.抗菌・抗真菌作用
CBGは、細菌による感染症の治療に効果がある可能性があります。
2008年に、カンナビノイドとメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)についての研究が行われました。その結果、CBGを含むカンナビノイドが、MRSAに対して強力な抗菌作用があることが報告されました。※4
MRSAは、メチシリンという強力な抗生物質を始め、他の多くの抗生物質が効かない細菌です。
健康な人が感染をしても自分の免疫力で解決できるため、大きな問題になりませんが、病気を患っていたり、高齢だったりして抵抗力のない人が感染すると、多くの抗生物質が効かないため、治療が難しく、重症化しやすくなります。病気の人が大勢いる病院や高齢者の介護施設などで、MRSAが発生すると院内感染が広がり、深刻な問題になることもめずらしくありません。
CBGなどのカンナビノイドは、MRSAに抗菌作用をあらわすことで、院内感染防止などに役立つことが期待されます。
3.神経保護作用
CBGには神経保護作用が期待され、ハンチントン病などの神経変性疾患に治療効果がある可能性があります。
ハンチントン病とは、脳の中の大脳基底核という部分の神経が変性していく遺伝性・進行性の疾患で、自分の意志に反して手足や顔面が動いたり、認知機能障害、うつや妄想などの精神症状が起こります。
2015年にハンチントン病とCBGについてのマウスでの研究が海外で行われました。※5
その研究によると、CBGが神経の変性の治療に有効である可能性があることが分かりました。CBGを単独で摂取したり、他の植物性のカンナビノイドと組み合わせることで、ハンチントン病などの神経が変性する疾患の治療ができるのではないかと考えられています。
その他期待される7つの効果
CBGには以下のような効果があることも期待されています。
1.骨形成促進
CBGは骨形成を促進する効果がある可能性があります。
2007年に行われた骨髄細胞とCB2受容体についての研究では、CBGを含むカンナビノイドがCB2受容体を介して骨の形成と吸収を調節する可能性があることが示唆されました。※6
2.腫瘍の抑制
CBGは、結腸・直腸がんの治療に役立つ可能性があります。
2014年にCBGと結腸・直腸がんのラットでの研究が海外で行われました。
結果的にCBGは、ラットのがん細胞や他の腫瘍の進行を抑え、増殖を抑制したことが報告されました。※7
この研究の専門家は、CBGが、結腸・直腸がんの治療だけでなく、予防においても効果があるのではないかと強調しています。
3.鎮痛作用
CBGには鎮痛作用があることが期待されています。
2008年の研究報告では、CBGがTHCよりも強力な鎮痛活性があることが報告されました。※8
4.膀胱機能障害への効果
CBGは、膀胱機能障害に効果がある可能性があります。
2015年に行われたCBGと膀胱機能障害についてのマウスの研究では、CBGが膀胱の収縮を刺激し、膀胱機能を改善することが示唆されました。※9
この研究は、CBGのほかCBDやCBCなど他のカンナビノイドでも行われましたが、CBGの効果が一番高かったとのことです。この結果からCBGが、膀胱機能障害の治療に最も有効であると結論付けられています。
5.不安の緩和
CBGには不安の緩和作用がある可能性があります。
2021年の大規模調査では、不安を抱えた患者の大多数がCBGによって症状が「非常に改善された」「かなり改善した」と報告しました。※10
6.乾癬などの皮膚治療
CBGは、乾癬などの皮膚治療に効果があることが期待されています。乾癬は、ケラチノサイトと呼ばれる表皮細胞の過剰な増殖を特徴とする炎症性の疾患です。
2006年の研究では、CBGを含むカンナビノイドがケラチノサイトの増殖を阻害し、乾癬の治療の重要な役割を果たすのではないかと結論付けています。※11
7.緑内障治療
CBGは緑内障の治療に有効である可能性があります。
2008年に行われたカンナビノイドと緑内障の研究によると、CBGなどのカンナビノイドが緑内障の治療に応用できるのではないかと報告されました。※12
緑内障は眼圧が上がる疾患ですが、数十年にわたる研究から、摂取法に関係なく、カンナビノイドが眼圧を下げる効果があることは証明されています。
CBGがどのように眼圧を下げるのかの詳細はまだ分かっていませんが、眼圧に関係する目の部分にカンナビノイド受容体が存在し、CBGがその受容体に作用することにより眼圧を下げているのではないかと考えられています。
CBGはCBDと何が違うの?
CBGは人をハイにする作用がなく、合法的に使用ができ、様々な健康・治療効果があるため、CBDに似ていると感じる人も多いと思います。CBGとCBDは構造的にも似ているところもありますが、違うところもあります。
CBGとCBDの違いについても見ていきましょう。

作用する過程や強さの違い
CBGは脳内のCB1、CB2という両方のカンナビノイド受容体に直接作用し、ECSを活性化します。
それに対してCBDは、カンナビノイド受容体には直接作用せず、体内で作られるカンナビノイドの分解を防ぐことでECSを活性化すると考えられています。
CBGもCBDも結果的にECSを活性化することに変わりはありませんが、CBGはカンナビノイド受容体に直接作用することができるため、CBDよりも作用が強力だと言われています。
効果の違い
CBGとCBDはいくつかの効果に違いも見られます。
吐き気と嘔吐に対する効果の違い
2014年の海外の研究によると、CBDが、セロトニン受容体である5-HT1Aという受容体を刺激するのに対して、CBGは5-HT1A受容体を抑制する働きがあるということが分かりました。※9
5-HT1A受容体は、吐き気や嘔吐の作用に関わっている受容体で、刺激すると吐き気や嘔吐は軽減しますが、抑制すると吐き気や嘔吐が起こりやすくなります。
つまり、CBDには吐き気を抑制する作用があるのに対して、CBGには吐き気を起こす作用があるということです。
食欲に対する効果の違い
CBGに食欲の増進効果があることは先ほどお話ししましたが、CBDは逆に食事量を減らす働きがあると言われています。
2012年に行われた食欲とCBDについてのラットの研究では、CBDがCBGなど他のカンナビノイドと比較して、食事の摂取量を大幅に減らす作用があることが報告されました。※10
CBGはがんやHIVの患者の食欲増進効果に利用できるのではないかと期待されているのに対し、CBDはダイエットに利用できると考えられています。
このように、CBGとCBDは真逆の効果もあるのです。
CBGに副作用はある?
CBGを使用している患者の調査によって報告された副作用には、口の渇き、眠気、空腹感、ドライアイなどがありました。※11
調査された患者は、不眠症や慢性の疼痛、うつ病、不安障害を改善するためにCBGを使用しましたが、CBGが医薬品よりもよく効いたとも述べています。
CBGはまだ研究が少ないため、副作用の詳細はまだ分からないことも多いです。
今後のさらなる研究を待ちましょう。
CBGのデメリット
CBGは、マイナーカンナビノイドと呼ばれるほど、CBDなどのカンナビノイドに比べて採れる量が少ないため、価格が高くなってしまうことがデメリットの一つです。
また、希少であるがゆえにCBGの臨床試験も少ないため、効果や副作用についてはっきり分かっていないことが多いこともデメリットと言えるでしょう。
CBGは他のカンナビノイドと摂取してアントラージュ効果を狙うのがおすすめ

CBG単独でも効果は期待できますが、CBG単独の商品は残念ながら少ないです。
他のカンナビノイドと組み合わせれば、アントラージュ効果と呼ばれる相乗効果が期待できるので、CBGは、CBDやCBNのような他のカンナビノイドと摂取してアントラージュ効果を狙うのがおすすめです。CBGだけでなく、他のカンナビノイドが配合されている商品を選ぶと良いでしょう。
CBGに関するよくある質問
Q.CBGオイルは日本で購入できますか?
ネイチャーカンがCBGオイルを販売しています。
CBG単体の商品はとても少ないですし、効果も限られます。CBG以外のカンナビノイドも配合されている商品でアントラージュ効果を狙うのがおすすめです。
Q.CBDにはないCBGのメリットを教えてください
CBGはCBDよりも効果が強力だと言われています。
CBGは食欲の増進効果があるのに対してCBDは食欲を抑える効果があるなど、真逆の効果もあるため、ご自身の希望に合ったものを選ぶことが大切です。
Q.CBGはどのような効果がありますか?
CBGには、消化器系の炎症を抑える効果、がん細胞を減らす効果、緑内障を改善する効果、抗菌効果、神経保護作用などがあることが期待されています。
まだCBGについての研究数は少ないですが、今後研究が進むにつれて他の効果も分かってくるものと思われますので、さらなる研究に期待しましょう。
【参考資料】
※1 Cannabigerol Action at Cannabinoid CB1 and CB2 Receptors and at CB1–CB2 Heteroreceptor Complexe
※2 Evaluation of the Cyclooxygenase Inhibiting Effects of Six Major Cannabinoids Isolated from Cannabis sativa
※3 Beneficial effect of the non-psychotropic plant cannabinoid cannabigerol on experimental inflammatory bowel disease
※4 Antibacterial cannabinoids from Cannabis sativa: a structure-activity study
※5 Neuroprotective properties of cannabigerol in Huntington’s disease: studies in R6/2 mice and 3-nitropropionate-lesioned mice
※6 Cannabinoids stimulate fibroblastic colony formation by bone marrow cells indirectly via CB2 receptors
※7 Colon carcinogenesis is inhibited by the TRPM8 antagonist cannabigerol, a Cannabis-derived non-psychotropic cannabinoid
※8 Cannabinoids in the management of difficult to treat pain
※9 Effect of Non-psychotropic Plant-derived Cannabinoids on Bladder Contractility: Focus on Cannabigerol
※10 Survey of Patients Employing Cannabigerol-Predominant Cannabis Preparations: Perceived Medical Effects, Adverse Events, and Withdrawal Symptoms
※11 Cannabinoids inhibit human keratinocyte proliferation through a non-CB1/CB2 mechanism and have a potential therapeutic value in the treatment of psoriasis
※12 Possibilities of applying cannabinoids’ in the treatment of glaucoma
※13 Effect of Phytocannabinoids on Nausea and Vomiting
※14 Cannabinol and cannabidiol exert opposing effects on rat feeding pattern
※15 Survey of Patients Employing Cannabigerol-Predominant Cannabis Preparations: Perceived Medical Effects, Adverse Events, and Withdrawal Symptoms