日本社会は、諸外国に比べてストレスが多い社会と言われています。
上下関係や厳しいマナー、仕事のプレッシャーや同調圧力などでストレスをため、体調を崩してしまっている人も少なくないのではないでしょうか。
過度のストレスは、自律神経のバランスを崩し、自律神経失調症になる可能性を高めます。
自律神経失調症には、決まった薬や治療がないため、起こった症状に応じて様々な治療が行われます。
しかし、複雑な要因が自律神経失調症の原因になっていることも多く、処方された薬を飲んでいるのになかなか治りにくいと悩んでいる人もめずらしくありません。
CBDは自律神経失調症に対して効果はあるのでしょうか。
この記事では、自律神経におけるCBDの作用や、CBDを自律神経失調症に使うメリット・注意点などについて解説していきます。
CBDの効果や副作用の内容については、こちらの記事をご覧ください。
→ CBDの効果や副作用とは?効果を感じない場合の対処法も紹介
そもそも自律神経とは?
自律神経はその名の通り、自分の意志とは無関係に働く神経のことで、内臓や体温などをコントロールし、24時間365日休むことなく生命を維持するために働いています。
自律神経は、真逆の作用を持つ交感神経と副交感神経が交互に活性化することで成り立っています。
健康を保つには、この交感神経と副交感神経のバランスを保つことが重要です。
交感神経と副交感神経が実際にどのような働きをしているのか詳しく見ていきましょう。
活動時に働く交感神経とは?
交感神経とは、身体が活動・闘争するときに働く神経です。
交感神経は通常、昼間の活動時に活性化し、エネルギーを体中に届けるために血圧や心拍数を上げたり、酸素を多く取り入れるために呼吸を早くしたり、消化でエネルギーを消費しないように胃腸の働きを弱くしたりします。
このように交感神経は、活動や闘争時に身を守るための適切な身体の状態を作っているのです。
ちなみにストレスを受けると身体が戦闘態勢だと認識し、交感神経が働きます。
緊張したり、びっくりしたりするときに心臓がどきどきするのは交感神経が活性化している証拠です。
リラックス時に働く副交感神経とは?
副交感神経とは、身体がリラックスしている時に働く神経です。
副交感神経は通常、休息や睡眠時に活性化します。
副交感神経は、交感神経の真逆の働きをします。
副交感神経が優位になると身体がリラックスモードになり、血圧が下がったり、呼吸が深くなったり、胃腸の働きが活発になったりします。
自律神経のバランスが崩れるとどうなる?
自律神経のバランスが崩れるということは、交感神経または副交感神経が必要以上に活性化してしまう状態のことを言います。
副交感神経が活性化し過ぎると、
- 胃痛
- 腹痛
- 吐き気
- 免疫力の低下
- やる気の低下
- アレルギー
などが起きます。
交感神経が活性化し過ぎると、
- 不安
- うつ症状
- 動悸
- 不眠
- 頭痛
- 肩こり
- 多汗
- めまい
など、様々な症状が起こります。
今、交感神経が過剰に活性化し、副交感神経の働きが弱くなっている人が多いです。
交感神経は、過度のストレスや、生活習慣の乱れなどが原因で優位になり過ぎてしまうため、現代の日本人が抱えやすい問題と言えます。
厄介なのは、自律神経の問題は血液や臓器の問題ではないので、血液検査や、レントゲン、MRIなど通常の検査では異常が見つからないという点です。
「様々な検査をしても何も異常が見つからないのに、具合が悪い状態が続く」という問題を引き起こします。
そのため、本人はとても苦しんでいるにもかかわらず、周りからは大したことはないと判断されやすく、そのことが余計に患者を苦しめるのです。
自律神経失調症に通常行われている治療とは?
自律神経のアンバランスが起こす体調不良のことを自律神経失調症と呼びます。
今のところ自律神経を直接整える薬や治療法は残念ながら存在しません。
自律神経失調症は、人によって現れる症状が違うため、症状に応じた治療を行うのが一般的です。
不安が続く場合には抗不安薬、頭痛が続く場合には頭痛薬というように、起こっている症状を抑える薬を服用したり、運動や食事の指導を受けたりすることもあります。
また、自律神経がアンバランスになった原因が生活習慣なら、生活習慣を整える生活指導をすることもありますし、精神的な問題を抱えている場合は、認知行動療法や音楽療法などカウンセリングを用いる場合もあります。
自律神経失調症の治療は様々な種類がありますが、自律神経失調症は、治療をすればすぐに回復するものではないため、どの治療を受けるにしても、根気よく続けることが回復のキーポイントです。
CBDの自律神経に期待できる作用を解説
では、CBDは様々な健康・治療効果が期待されていますが、果たして自律神経失調症に効果があるのでしょうか。
CBDには、自律神経のバランスを整える3つの効果が期待できます。
1.ECSにより自律神経のバランスを整える作用
自律神経のバランスを整えるには、エンドカンナビノイドシステム(ECS)を活性化することが重要です。
ECSとは、体内の環境を一定に保とうと調節する機能のことです。
細菌やストレス、不安、炎症、痛みなどにさらされても、回復し生きていけるのはECSが働いているからだと言われています。
ECSは、神経を再生したり、神経の損傷を緩和したりする作用もあるため、ECSを活性化すると結果的に自律神経のバランスが整います。
CBDにはECSを活性化する作用があると言われています。
2019年のCBDとECSに関する海外研究では、CBDがECSを調節しており、様々な疾患に大きな治療効果をもたらす可能性があると結論付けられました。※1
この研究結果からCBDは、ECSを活性化することで、自律神経のバランスを整える作用があることが考えられます。
ECSを活性化する作用を持つ自律神経失調症の治療薬はまだありません。
CBDが自律神経失調症を改善する効果を証明をするには、今後のさらなる研究が必要ですが、CBDの効果が証明されれば医薬品とは違う作用により自律神経を治療できることが期待できます。
2.セロトニン作用により副交感神経を活性化する
自律神経失調症で悩んでいる多くの人は、交感神経の過剰活性に悩んでいることは先ほどお話ししました。
交感神経が過剰に活性化している状態ということは、副交感神経がうまく活性化していない状態とも言えます。
つまり、自律神経失調症の症状を改善するためには、副交感神経を活性化することが必要です。
2020年のCBDと脳の海外研究では、CBDが、脳内の5-HT1A受容体というセロトニン受容体(※)に作用することが分かりました。※2
※セロトニン受容体とは、セロトニンの刺激を受け、セロトニンの作用を伝達するたんぱく質のこと。
セロトニン5-HT1A受容体が刺激されると、リラックス神経である副交感神経を活性化し、不安を軽減したり、交感神経を逆に抑制したりすることが分かっています。※3
つまり、CBDにはセロトニン5-HT1A受容体を刺激することで、副交感神経を活性化し、交感神経の活性を抑えることが期待できるということです。
3.GABA受容体への作用により副交感神経を活性化する
GABAという物質の名前を聞いたことがあるでしょうか。
GABAとは、興奮した脳や神経をリラックスさせる働きがあるアミノ酸で、私たちの身体の中に存在しているものです。
落ち着きたい時に食べるGABA入りのチョコレートなどを見たことがある人もいるかもしれません。
GABAにもセロトニンと同じように副交感神経を活性化させる作用があります。
2017年のCBDとGABAに関する海外研究では、CBDがGABAの受容体を活性化する作用があることが示唆されました。
以上のことからCBDは、副交感神経を活性化し、交感神経の過剰活性を抑える可能性が高いことが分かります。
CBDで自律神経を整える3つのメリットとは?
CBDを自律神経失調症の治療に使う場合にメリットはあるのでしょうか。
現在の自律神経失調症の治療と比べたときに考えられるCBDのメリットを3つ紹介していきます。
1.今までの治療と違うアプローチで治療ができる
まず第一に考えられるメリットは、CBDを治療に使うことで今までと違ったアプローチで治療ができるという点です。
先ほどお話ししたように、CBDにはECSを活性化させる作用があり、ECSによって自律神経を整えられる可能性があります。
この作用は、今使われている自律神経の治療薬にはない作用です。
自律神経失調症の患者の中には、薬を飲み続けてもなかなか症状が改善しないという人も少なくないのではないでしょうか。
治療薬を服用し続けてもなかなか治らない、他のアプローチを試してみたいという場合に、CBDが治療の選択肢になり得るかもしれません。
2.副作用が少ない
CBDは医薬品に比べて副作用が少なく、安全性が高いものと言われています。※5
患者の中には、医薬品の副作用が怖くて、薬を飲み始めることができない人もいますし、自律神経失調症の治療は長期に渡ることが多いため、薬を長い時間飲み続けるのが不安だという人もいます。
CBDで治療することができれば、このような方たちの悩みを解決に導くことができるでしょう。
CBDに報告されている副作用は、食欲の減退、下痢、疲労、体重の変化などですが、どれも軽度なものであることが知られています。
万が一副作用が起こった場合は、CBDの摂取を中止すれば副作用症状が治癒することがほとんどです。
もし、摂取を中止しても症状が治まらない場合は、他に原因があることも考えられるので、医師の診察を受けてください。
3.医薬品に見られる問題が起こりにくい
自律神経失調症を患っている多くの人は、不安症状やうつ症状を抱えています。
そのような場合に処方される治療薬は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗うつ剤というタイプの薬です。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、結果的にGABA受容体を活性化し、抗うつ剤は通常、セロトニン作用を増強することで、不安やうつ症状、不眠症などを改善します。
これらの薬で問題になるのは「離脱症状」です。
離脱症状とは、長期に薬を服用したせいで身体が薬が効いている状態に慣れてしまい、薬を急に中断することで身体がびっくりして様々な症状を起こすことを言います。
特に、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、離脱症状が強く現れる可能性があるので注意が必要です。
長期にベンゾジアゼピン系抗不安薬を服用した後、急に中断すると、何日も一睡もできなくなったり、動悸がしたり、幻覚・幻聴に襲われたりといった離脱症状が起こる可能性があります。
また、ベンゾジアゼピン系抗不安薬には他にも依存、耐性といった問題もあります。
依存とは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を飲まなければいられなくなってしまうこと、耐性とは、今までに服用していた用量では効かなくなってしまうことを言います。
それに対してCBDは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬と同じGABA受容体の刺激作用があることが期待されているにもかかわらず、離脱症状、依存、耐性の問題はありません。
たしかに、CBDがベンゾジアゼピン系抗不安薬と同程度のGABA受容体の刺激作用があるかどうかは人にもよるので何とも言えませんが、中断したときでも離脱症状で苦しむ必要がない点はかなりのメリットと言えるのではないでしょうか。
CBDを自律神経に使う際の4つの注意点
自律神経失調症の症状が軽い人など、人によっては薬の代わりにCBDで症状を緩和しているという人も実際にいます。
CBDを自律神経治療に使う際に注意点が4つほどあるので説明していきます。
1.勝手に判断しない
まずは、何事も自分一人で勝手に判断しないということを守ってください。
たとえば、自律神経失調症のような症状があるからといって、自分は自律神経失調症だと勝手に決めつけてはいけません。
他の疾患が原因になっている場合もあり、その治療を早急にしなければいけないこともあります。
自分で判断せず、医師の診断を受けることが大切です。
また、自律神経失調症だと診断されたとしても、処方された薬を飲まずに勝手にCBDで治療をしようと決めてしまうことも危険です。
CBDには健康・治療効果が期待されてはいますが、まだ研究段階で、自律神経失調症に効果があるという証明はまだできていません。
処方薬を飲まずにCBDの摂取のみで勝手に治療したりすると、医師の治療プランが台無しになったり、症状が悪化したりする可能性も考えられます。
CBDを治療に使いたい場合は、必ず医師に相談し、指示に従ってください。
2.CBDは人や身体の状態によって効果が違うことを認識しておく
CBDは人によって効果の出方が違うという特徴があります。
他の人には効果が十分に出たけれど、自分は何も効果を感じなかったということもあり得ます。
またストレスが強い状態でCBDを摂取すると、ストレスがCBDの効果をマスキングしてしまい、効果を感じられないこともあるようです。
効果があると期待してCBDを自律神経失調症に使用し、思ったような効果が出なかった場合を想像してみてください。
自律神経失調症の症状が悪化し、今まで以上に治療が必要になることも考えられます。
もちろん、効果が出る可能性も十分にありますが、効果が出ない場合を考えてどのような対策をとっておけば良いのかなどを一度医師に相談することも大切です。
3.相互作用を確認する
CBDは重度の副作用がなく、安全性が高いものであることが報告されていますが、CBDは医薬品と相互作用を起こす可能性があります。
相互作用は、CBDがCYP2D6やCYP3A4などと呼ばれている肝臓の薬物代謝に関係している酵素を阻害することによって起こっています。
CBDが肝臓の代謝を遅らせることによって、服用している医薬品の作用を増強してしまったり、解毒の機能が弱まって、身体の中に必要以上に医薬品をとどめる結果になったりすることが考えられます。
先ほど、ベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗うつ剤についてお話ししましたが、CBDは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗うつ剤とも相互作用を起こす恐れがあるので注意してください。
4.相互作用を避けるために服用薬を中断する
CBDを摂取したいけれど、ベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗うつ剤との相互作用が心配なため、服用薬の方を中断したいと思う人もいるかもしれません。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗うつ剤は急に服用を中止すると離脱症状を起こす可能性があるため、自分自身の判断で中止することは絶対にしないでください。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗うつ剤を中止する場合は、離脱症状を防ぐために医師のプランのもと、徐々に用量を減らしながら止めていくことが必要です。
今服用している薬があり、CBDの摂取も考えている人は、相互作用についても、今まで服用している処方薬を止める件についても必ず医師に確認しましょう。
専門家の意見を聞くことは、自分を守ることにもつながります。
CBDと自律神経に関するよくある質問
Q.CBDは自律神経失調症に効きますか?
CBDは自律神経失調症を改善する作用があることが期待されています。
実際にいくつかの研究で、CBDが自律神経を整えたり、副交感神経を優位にさせたりする作用があることが報告されています。
ただし、CBDは今はまだ研究段階にあるため、自律神経失調症に必ず効くという証明は今のところできていません。
またCBDは人や体の状態によって効果の出方が違うときもあります。
以上のことからCBDが、あなたの自律神経失調症の症状に効果があるかどうかは、実際に試してみないと何とも言えないというのが実際のところです。
主治医の先生に相談をして、CBDを試すことができそうな場合は、効果を見るために摂取して様子を見てみると良いかもしれませんね。
Q.自律神経失調症で複数の薬を服用しています。CBDと服用薬の相互作用が知りたい場合はどうすればよいですか?
インターネットでご自分で調べてみるのも良いかもしれませんが、CBDは複数の医薬品と相互作用を起こす可能性があるので、専門家の確認を取るようにしてください。
主治医に直接聞くのも良いでしょう。
もしくはかかりつけの薬局の薬剤師に聞いてみることもおすすめです。
薬局によっては、「かかりつけ薬剤師」という制度がある薬局もあります。
かかりつけ薬剤師制度に登録をすると、処方された薬だけでなく、ドラッグストアなどで購入した医薬品や、サプリメントなどとの相互作用も管理してくれますので、CBDについても質問しやすくなると思います。
Q.睡眠薬を服用していますが、CBDに替えたいです。可能でしょうか?
睡眠薬を中止してすぐにCBDに切り替えるのではなく、まずは医師に相談をしてみてください。
医師の治療プランがあると思うので、CBDへの切り替えが可能かどうかをまずは確認する必要があります。
また睡眠薬を服用しているということは、おそらくベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗うつ剤などが考えられると思います。
長期に渡って服用しているとしたら、中断した後に離脱症状が起こる可能性もあります。
ちなみに「長期」というのは、人によって変わってきます。
1、2か月服用しただけで離脱症状が起こったという例もあります。
離脱症状の恐れがある状態で睡眠薬を止めるには、医師の指示のもと、睡眠薬の用量を徐々に減らしていきながら中止することが必要です。
必ず医師の指示を仰いでください。