てんかんとは、脳波の異常が見られ、けいれんや、失神など特有の発作を起こす疾患です。
日本では約100万人がてんかん患者だと言われています。
てんかんの治療は一般的に、抗てんかん薬という種類の医薬品が使われますが、てんかんの種類によって、薬を服用しなくても改善するもの、薬を長期間服用しなければいけないもの、薬を服用しているのに効果があまりない難治性のものなど多岐にわたります。
難治性のてんかんに苦しんでいる患者や、患者の家族はとても多いです。
いつ起こるか分からない発作に怯えている人もいますし、発作が起きるため、学校や職場に行きづらい、車を運転できないなど生活に支障をきたしている人もいます。
CBDは、抗てんかん作用はあるのでしょうか。
また、抗てんかん作用があるとしたらどのような種類のてんかんに効果があるのでしょうか。
今回は、てんかんに対するCBDの効果、犬のてんかんへのCBDの作用、日本で治験が始まったCBD製剤について、CBDをてんかんに使う際の注意点などを説明していきます。
CBDの効果や副作用の内容については、こちらの記事をご覧ください。
→ CBDの効果や副作用とは？効果を感じない場合の対処法も紹介
そもそもCBDとは？
CBDとは、カンナビジオールのことで、今世界中の人から注目されている健康・治療効果が期待されている成分です。
CBDは、大麻草の成分の一つであり、ほとんどのCBD製品のCBDは大麻草から抽出されています。
大麻草の持つイメージから、「使用したらハイになるのではないか」「違法にならないのか」など心配する人もいますが、CBDは副作用があまりなく、安全性が高いことが証明されています。
従って、ハイになることは絶対にありませんし、違法にもなりません。
多くの人が大麻草と聞いて連想する人をハイにする成分は、THCという成分です。
THCが検出されるCBD製品を所持していると日本では大麻取締法違反になります。
THCもCBDと同じく大麻草から抽出されますが、CBDとは構造も性質も全く違いますので間違えないようにしてください。
CBDは、健康を維持する目的の他、医薬品で治療が難しい疾患の治療のために使われることもあります。
たとえば、難治性のてんかんは、医薬品では効果が出にくいため、CBDが治療に使われることがある疾患の一つです。
CBDのてんかんへの2つの効果
CBDは、難治性のてんかんに対して次の2つの効果を示すと考えられます。
1.難治性の小児てんかんに対するCBD効果
CBDは、レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群と呼ばれる2種類の難治性のてんかん発作に効果があると報告されています。
レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群とは、難病に指定されている稀なてんかんで、乳児期や小児期に発症します。
抗てんかん薬に抵抗を示す疾患のため、医薬品での治療によって発作を抑制することが難しく、難治性の小児てんかんとして知られています。
レノックス・ガストー症候群は、身体や手足に力の入る強直発作が特徴で、それに加えて様々な発作が起こります。
ドラベ症候群は、全身のけいれんと、成長するに伴って他の発作もあらわれます。
2019年にレノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群とCBDの海外の研究が行われました。
その結果、抗てんかん薬でも抑制が難しいこの2つの症候群において、CBDがけいれん発作を大幅に減少したことが報告されました。※1
この研究結果から、今まで医薬品で治療が難しかった小児てんかんの発作がCBDで治療できる可能性があるということが分かります。
2.難治性のてんかんに対するCBDの医薬品補助効果
抗てんかん薬での治療が難しいてんかんにおいて、CBDが医薬品の補助的な役割をし、抗てんかん作用が高められる可能性もあります。
2019年のCBDと難治性のてんかん（レノックス・ガストー症候群やドラベ症候群以外の難治性てんかんも含まれています。）に関する海外の臨床試験が行われました。
抗てんかん薬で効果が見られないてんかんにCBDと抗てんかん薬を併用したところ、てんかん発作の減少が見られました。※2
ただし、CBDと抗てんかん薬は相互作用を起こす可能性があるため、医師によるCBDや抗てんかん薬の用量の調節は必要になります。
従来の抗てんかん薬では効かなかったてんかん発作が、CBDで抑えられるかもしれないという結果は、難治性のてんかん患者やその家族に計り知れないほどの大きな希望を与えています。
THCが入っていない純粋なCBD製品でも十分な抗てんかん効果がある？
THCが入っていないCBD製品でもてんかん発作に効果があると考えられています。
しかし、てんかんに対するCBDの記録をインターネットなどで調べていると、海外での研究やてんかん治療において、CBD製品の中に少量のTHCが含まれたものが使われてたという記録を目にすることが少なくないのではないでしょうか。
てんかんに対するCBDの記録と言うと、CBDの知名度を世界中に広めたシャーロットという女の子の症例がとても有名です。この女の子の話からCBDが難治性の小児てんかんに効く可能性があるということを知った人も多いと思います。
＜難治性のてんかんを患っていたシャーロットの話＞
シャーロットは、難治性のドラベ症候群を患っていました。
抗てんかん薬が効かず、週に何百回ものてんかん発作を繰り返し、脳の損傷や死の危険性もあったそうです。
しかし、CBDオイルと出会い、摂取したところ、シャーロットのてんかん発作が激減したのです。
その後シャーロットは、抗てんかん薬を中止することができ、入院の必要もなくなり、健常な子どもと同じような生活ができるようになりました。
現在、彼女の名前が入った「Charlotte’s Web（シャーロットの贈り物）」というCBD製品がアメリカで販売され、多くの難治性のてんかんの患者が使用しています。
実はこのCharlotte’s Web というCBD製品には少量のTHCが入っています。
海外ではTHCが合法の地域があるので、問題なく販売されているのですが、日本では少量でもTHCが検出されるCBD製品は全て、大麻取締法違反になるため、購入・使用はできません。
実際に小児てんかんにCBDを使い、発作が抑えられた症例において、実は使われたCBD製品の中に微量のTHCが入っていたということになると、日本で購入できるCBDのみではてんかんには効かないのかと不安になる人もいるのではないでしょうか。
THCとてんかん発作に関して、THCが含まれていないほうが良いという見解と、THCが含まれていたほうが良いという見解があるので、両方の見解を説明していきます。
また、THCが入っていないCBD製剤で日本での治験が始まっていますので、そのことについても紹介していきます。
THCの作用が身体に良くないという意見
THCにも抗けいれん作用があると言われてはいるものの、THCの作用における研究がまだ十分なため、さらなる研究が必要だという見解があります。
THCは、用量が多いとけいれん誘発作用を起こす可能性があることと、THCの中毒性のため、用量によっては身体に害を及ぼす可能性も否定できないからです。
けいれんを抑制したくてCBD製品を使ったのに、THCにより逆にけいれんを誘発してしまったら、治療が台無しになってしまいます。
先ほど紹介した2019年にレノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群とCBDの海外の研究では、CBDのみを使っててんかん発作を抑制したということが報告されました。
以上の結果などから、CBDのみでも抗てんかん作用が十分に期待できるので、THCが含まれておらず、安全性の高いCBD製品を使う方が安心なのではないかという見解になっています。
THCを含む方がCBDよりも効果的という分析結果
THCが身体に良くないという見解がある一方で、THCを含むCBDの方がてんかんに効果的だという見解もあります。
2018年に難治性のてんかんに対して、精製されたCBDと、THCを含む大麻草の抽出物の効果を比較した分析が行われました。
その分析結果において、大麻草の抽出物が、純粋なCBDよりも抗てんかん効果があると結論付けられました。※3
ただし、この結論を証明するためにはさらなる調査が必要であることも付け加えられています。
また、THCを使用することはリスクがあるため、THCの合法の地域で使用する際にも医師とよく話し合う必要があることが指摘されています。
日本で治験が始まったCBD製剤にはTHCは含まれていない
今日本で治験が始まっているCBD製剤について知ることにより、CBDのみで抗てんかん作用を示す可能性が高いことがより理解できると思います。
CBD製剤は、エピディオレックスという名前です。
エピディオレックスは日本ではまだ臨床試験中で、医薬品としてまだ承認されていないため、今の時点では処方してもらうことはできません。
アメリカではFDA（アメリカ食品医薬品局）により、2歳以上のレノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群を患っている患者の抗てんかん薬として2018年に承認されました。
2020年からは1歳以上の子供に使用することができるようになっています。
エピディオレックスは、CBDを主成分とするてんかん治療薬ですが、THCは含まれていません。※4
この事実は、CBDのみで抗てんかん作用を示すという見解にもつながります。
エピディオレックスには、ある程度の抗てんかん作用が見られ、重大な副作用がないということが報告されています。
現在、日本でエピディオレックスの治験が始まっています。
レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群を患う患者たちが、エピディオレックスの承認を待ち望んでいることでしょう。
CBDは犬のてんかん発作にも効く？
CBDは犬のてんかん発作に対しても効果を示すと考えられています。
犬も人間と同じようにてんかんを患うことがあります。
発作の度合いは様々ですが、重度の発作だと意識を失ったりすることもめずらしくありません。
飼っている犬がてんかんを患い、心配している家族もいるのではないでしょうか。
家族の一員が苦しんでいる姿を見るのはとても辛いことだと思います。
2012年にCBDの抗けいれん効果に関する動物実験が海外で行われました。
その結果、動物のてんかん発作の大幅な改善が報告され、CBDには効果的な抗けいれん効果があると結論付けられました。※5
この研究は、犬に対して行っているわけではないので、今後のさらなる研究が必要です。
犬のてんかん発作治療に対してのCBDの作用については、現在研究が行われています。
純粋なCBDが、犬のてんかん発作に効果を示すという結果が待たれますが、人や動物実験の結果から、犬のてんかん発作にもCBDが効く可能性は十分にあると言えるでしょう。
CBDをてんかんに使う際の2つの注意点
CBDを難治性のてんかんに使うときの2つの注意点について説明していきます。
1.医療の専門家に確認する
難治性のてんかんにCBDを試す時は、摂取を始める前に医療の専門家に確認しなければいけないことがあります。
相互作用を確認する
CBDは、副作用がほとんどなく、安全性の高い成分であることが確認されていますが、他の医薬品と相互作用を起こす可能性があります。
難治性のてんかんを患っている場合は、いくつかの医薬品をすでに服用している可能性が高いですし、中にはその医薬品とCBDを併用してみたいという人もいると思います。
CBDを安心して摂取するためにも、服用薬とCBDの相互作用を医療の専門家である医師や薬剤師に確認することはとても大事です。
CBDは、肝臓の薬物やアルコールを解毒する酵素を阻害する働きを持っています。
そのため、服用している医薬品にもよりますが、作用を必要以上に増強してしまったり、副作用を出やすくしたり、医薬品が身体の中に長時間残ったりすることも考えられます。
たとえば、バルプロ酸という抗てんかん薬を服用している場合は、CBDを併用すると肝機能に問題を起こす可能性があります。
また、クロバザムという抗てんかん薬をCBDと併用すると、血液中のクロバザムの濃度が上昇し、クロバザムの作用や副作用を増強させてしまうかもしれません。
今服用している薬とCBDを併用したい場合は、このような相互作用の問題を回避するため、服用薬の用量を減らすなど、調節などが必要です。
CBDを摂取する前に必ず医師に相談しましょう。
治療方針について確認する
医師はそれぞれの治療方針に従って、患者の状態を把握しながら治療しています。
患者がCBDで治療していることを医師が知らないと、治療方針がくるってしまう原因にもなるので、CBDの摂取をし始める前に、CBDを治療に加えたい旨を医師に伝えておくことが大切です。
たとえば、CBDで症状が良くなったとしても、医師がそのことを知らないと、医薬品で良くなったのだと思ってしまいかねません。
その結果、その時に処方している薬をずっと処方し続け、効果のない薬を飲み続けなければならないことになることも考えられます。
医師の治療方針によっては、CBDを使わないという選択をする場合もあるので、CBDを摂取し始めても大丈夫かどうかを医師に確認してください。
2. 質の高いCBD製品を選ぶ
CBD製品の中には、海外から直輸入されたものもあり、違法なTHCが混入していたり、農薬や重金属など身体に害をおよぼす成分が入っている製品も中にはあります。
そのような悪質な商品を摂取してしまうと、大麻取締法違反になる可能性もありますし、THCなどによりてんかんの症状が悪化してしまう恐れもあります。
実際に店頭で購入したTHCなどが混入している可能性のあるCBDを摂取して、発作が増加してしまった例もありますので、CBD製品を購入するときは、必ず品質の高い物であることを確認してから購入するようにしてください。
高品質の製品を取り扱っている業者は、第三者機関に検査を依頼して、検査結果を公開しています。
検査結果をよく見て、危険な成分が含まれていないことを自分の目で確認してから購入しましょう。
高品質なCBD製品であれば、安全性が高く安心して摂取することができます。
てんかんとCBDについてのよくある質問
Q.エピディオレックスが承認されるまでCBD製品で代用できますか？
エピディオレックスの主成分はCBDですが、インターネットやドン・キホーテで売られているCBD製品は、エピディオレックスと全く同じではありません。
アメリカでは、エピディオレックスは医薬品ということで、市販のCBD製品よりも高い製造基準で作られていて、FDAによって規制もされています。
日本で承認された場合も同じことが言えるでしょう。
一方で、市販されているCBD製品は、政府機関による規制がないため、中には大麻取締法違反になるTHCや、身体に害を及ぼす危険な化学物質が混入している悪質なものもあります。
従って、CBD製品を購入するときには、医薬品を服用するよりも品質に対して慎重になることが必要です。
必ず信頼できるメーカーかどうか確認してから商品を購入してください。
品質検査をきちんと行っているかや、検査結果を公開しているかがポイントになります。もし、公開していない場合は直接メーカーに問い合わせてください。
高品質な商品を購入することで、安心してCBDを摂取することができます。
Q.シャーロットの贈り物は購入できますか？
Charlotte’s Web（シャーロットの贈り物）は、0.3％未満のTHCが含まれています。
つまり、THCが合法の海外の地域では購入できますが、日本では大麻取締法違反になってしまうため購入できません。
海外の現地に行けば購入することはできます。
しかし、それを日本に持って帰ってきてしまうと違法になり空港で捕まります。
THCが入っていない純粋なCBDも抗てんかん作用があるという研究結果が出ているので、日本で購入できる品質の高いCBD製品を選んで頂きたいです。
Q.犬にCBDオイルを使う場合、どのように飲ませたらよいですか？
犬のてんかんにCBDオイルを使う場合は、まず獣医師に相談してください。
獣医師の了解を得たら、犬が摂取しやすいCBD製品を選んで始めてみると良いと思います。
CBDオイルをスポイトで直接摂取させても良いですし、食べ物に混ぜても良いです。
または、ビスケットなどCBDが入っている食べ物を摂取させるという方法もあります。
通常は、1日2回の摂取をするとてんかん発作の軽減が期待できると言われています。
ただし、摂取させるべきCBDの用量は、犬や症状によってそれぞれです。
適切な量を見つけるためには少量から開始して、効果が見られるまで少しずつ増やして摂取させてください。
