【医師監修】エンド・カンナビノイド・システム(ECS)とは?わかりやすく解説

「エンド・カンナビノイド・システムって何?」
「エンド・カンナビノイド・システムってどんな働きをするの?」
「調べてみても難しくてよくわからなかった」

このような疑問や悩みを抱えていないでしょうか?

近年人気のCBDやCBNといったカンナビノイドは、「エンド・カンナビノイド・システム」を通じて体内で作用します。実際に、CBDやCBNの製品を使用する方は、体内で効果を発揮するにあたって、エンド・カンナビノイド・システムがどう機能しているのか気になりますよね。

そこで今回の記事では、エンド・カンナビノイド・システムについて詳しく解説していきます。

CBDの効果や副作用の内容については、こちらの記事をご覧ください。
CBDの効果や副作用とは?効果を感じない場合の対処法も紹介

目次

エンド・カンナビノイド・システム(ECS)とは?

エンド・カンナビノイド・システム(ECS)は、心と健康のバランスをコントロールして病気を防ぐ、健康的に生きていくために必要な体内のシステムです。例えば、ECSは食欲や睡眠、代謝、免疫、感情、運動などの機能を調節します。

エンド・カンナビノイド・システムは、1990年代に大麻研究者によって発見されました。人の健康を維持するために必要なシステムにもかかわらず、最近まで発見されなかったとは意外ですよね。

大麻研究者によって発見されてから今日に至るまで、エンド・カンナビノイド・システムに関連する様々な研究が行われており、身体の様々な機能に影響を与えることが分かってきました。

下記では、エンド・カンナビノイド・システムのメカニズムや具体的な働き方について、詳しく解説していきます。

エンド・カンナビノイド・システムのメカニズム

エンド・カンナビノイド・システムは、鍵と鍵穴の関係のように、体内で作られる「内因性カンナビノイド」という物質が「カンナビノイド受容体」に結合することによって、人の健康を維持するメカニズムを持っています。

以下で、詳しく見ていきましょう。

体内で作られる内因性カンナビノイド

内因性カンナビノイドとは、体内で作られて分泌されるカンナビノイドで、これまでに104種類も発見されています。

カンナビノイドとは、麻に含まれる化合物を指すため、内因性カンナビノイドとは「体の内側にある麻の成分」のことです。

厳密に言えば、内因性カンナビノイドは人の体内で作られるため麻の成分ではありませんが、カンナビノイドと同じ受容体と結び付くので「内因性カンナビノイド」と呼ばれています。

この体内で生成される内因性カンナビノイドは、食欲や睡眠の機能調節などの健康維持に欠かせない物質であるため、不足すると体に不調をきたします。

カンナビノイド受容体と結合

内因性カンナビノイドは、麻の成分と結合する「カンナビノイド受容体」と結合し、体の不調を防ぐ働きをします。

カンナビノイド受容体の「受容体」とは、外界や体内から何らかの刺激(司令)を受け取り、身体の機能に関わる働きに変換する仕組みを持った構造を指します。

カンナビノイド受容体の中でも、脳や神経をはじめとして全身にCB1受容体とCB2受容体という代表的な受容体が存在し、それぞれ異なる働きをしています。

CB1受容体とCB2受容体はそれぞれ、どういった働きの違いがあるのでしょうか?

脳に分布するCB1受容体 

CB1受容体は、脳をはじめとした中枢神経系(精巣、子宮、消化管など)に多く存在し、痛みや運動機能、食欲、感情、幸福感などをコントロールしています。

全身に分布するCB2受容体

CB2受容体は、末梢神経(免疫細胞、扁桃腺、リンパ節など)に多く存在し、免疫機能や炎症の制御に関与しています。

内因性カンナビノイド以外のカンナビノイド

実は、先述した体内で生成される内因性カンナビノイドの他にも、カンナビノイド受容体と結合することで、恒常性を維持するカンナビノイドは複数存在します。以下にて、詳しく見ていきましょう。

植物性カンナビノイド  

植物性カンナビノイドとは、麻などの植物から抽出されるカンナビノイドのことで、100種類以上存在するといわれています。

1899年、初めて麻からカンナビノイドを抽出することに成功し、その抽出当時を皮切りに様々なカンナビノイドが発見されてきました。

カンナビノイドとは、一般的には麻に含まれる化学物質の総称ですが、内因性カンナビノイドや後述する合成カンナビノイドと区別するために、植物性カンナビノイドと呼ばれています。

合成カンナビノイド

合成カンナビノイドとは、THCやCBDなどの植物性カンナビノイドを元に、人工的に合成されたカンナビノイドを指します。

1980年代、ファイザー製薬が鎮痛作用を期待し、先陣をきって合成カンナビノイドを作り始めました。現在、合成カンナビノイドは複数の医薬品として使われており、がんやエイズの治療にも利用されています。

医薬品は、天然および合成品を含めてカンナビノイド医薬品と呼ばれていて、海外では下記のような商品名で販売されています。

商品名使用用途
ドロナビノール(マリノール)がん治療の副作用に対する吐き気や嘔吐の治療または予防、及びエイズ患者の食欲増進に使用されている。
セサメット(ナビロン)エイズ患者の食欲不振と体重減少に使用されています。

また、植物性カンナビノイドで、精神活性作用のあるTHCの化学構造に似せて作られた危険ドラッグも、合成カンナビノイドの1つです。危険ドラッグは、THCと同じような精神活性作用を持っていますが、化学構造がTHCとは異なるため、違法にならない「脱法ドラッグ」として販売されていました。

エンド・カンナビノイド・システムの働き

エンド・カンナビノイド・システムは、私たちの体内にあり、健康を維持するために必要不可欠なシステムです。

具体的に、エンド・カンナビノイド・システムは私達の体内でどのような働きをしているのでしょうか?

恒常性を維持して病気になるのを防ぐ

エンド・カンナビノイド・システムによって、睡眠の質や食欲、体温などの体内の恒常性(ホメオスタシス)が維持され、私たちは健康状態を保つことができています。

※恒常性とは、生きていくために様々な環境の変化に身体が対応して、状態を維持する現象のことです。

ストレスを受けた際のバランス調整

エンド・カンナビノイド・システムは、外部から肉体的・精神的なストレスを受けた際に、心身の健康状態を調節する働きをします。

エンド・カンナビノイド・システムはストレスによって受けたダメージを調整し、病気を防ぐ働きをしていますので、ストレス社会と言われている現代社会には特に重要な体内システムと言えるでしょう。

武井智昭(高座渋谷つばさクリニック院長)
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは、全身にネットワークとして働く神経系の調節因子であり、神経細胞の活動調節に大きな影響を与え、精神状態、自律神経失調、新型コロナウイルス・インフルエンザウイルスを含めた感染に対しての免疫機能向上となる可能性があります

内因性カンナビノイド欠乏症とは?

内因性カンナビノイド欠乏症とは、ストレスや生活習慣の乱れなどによって、体内で十分な内因性カンナビノイドを作ることができなくなり、身体機能に悪影響を及ぼす症状を指します。

現代人の中には、この内因性カンナビノイドの欠乏によって、エンド・カンナビノイド・システムが正常に働かない状態の「内因性カンナビノイド欠乏症」に陥っている人がいます。

内因性カンナビノイド欠乏症の症状

内因性カンナビノイド欠乏症になると、

  • 頭痛
  • 吐き気
  • 胃腸の不調
  • 記憶力の低下

といった症状が体に現れます。

内因性カンナビノイド欠乏症の原因

内因性カンナビノイドが欠乏する原因として、生活習慣の乱れにより、内因性カンナビノイドの生成に必要な栄養素のアラキドン酸といった必須脂肪酸が不足すること、が挙げられます。 

内因性カンナビノイドが不足すると、健康状態を維持することができず、体調を崩してしまうので、何が原因となって症状を引き起こすのか事前に理解しておくことが重要です。

以下では、内因性カンナビノイド欠乏症を引き起こす原因を解説していきます。

食生活の偏り

内因性カンナビノイド欠乏症の原因として最初に挙げられるのは、食生活の偏りです。

特に、アラキドン酸といった必須脂肪酸などの栄養素が不足することで、内因性カンナビノイドを体内で生成できなくなり、エンド・カンナビノイド・システムの働きが悪くなることが海外の研究から判明しています。

必須脂肪酸(アラキドン酸、など)を摂取するには、肉や卵、乳製品などを日常の食事に取り入れることが必要です。

加えて、魚やくるみに含まれる「オメガ3脂肪酸」を摂取すると、CB1受容体の発現が促進されます。また、黒こしょうやシナモンといったスパイスや香りの強い葉野菜を複数種類摂取することで、CB2受容体が活性化されます。

一方で、忙しい現代の食事で摂りがちな炭水化物や砂糖、アルコールなどの過剰摂取は、エンド・カンナビノイド・システムを低下させてしまうので、摂りすぎには注意してください。

睡眠不足

睡眠不足になると、内因性カンナビノイドの分泌に影響を与えてしまうため、エンド・カンナビノイド・システムのバランスが崩れる原因となります。

仕事や家事を理由に忙しく、なかなか質の高い睡眠を取ることが困難な方もいるかと思いますが、エンド・カンナビノイド・システムを正常に保つために、なるべく十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。

運動不足

実は、運動不足が続くことも内因性カンナビノイド欠乏症の原因になりかねません。なぜなら、内因性カンナビノイドは、運動をした後に体内で放出されるためです。

内因性カンナビノイドを増やすために必要な運動量は、20分以上の「ややきつい強度の運動」とされています。

そのため、体内の内因性カンナビノイドを増やすために、キツい筋トレなどの運動を短時間行うよりも、ウォーキングやランニングといった運動を20分以上の長い時間続けると効果的でしょう。

ストレス

しごとや家庭、人間関係などによるストレスのため込みも、内因性カンナビノイドを低下させる原因になり得ます。

心身ともにストレスにさらされると、内因性カンナビノイドを破壊するFAAHという物質が活性化するため、健康状態の維持に関わる内因性カンナビノイドの量が減少します。

ストレスの軽減には、ウォーキング以外にもヨガや散歩がおすすめです。飲酒や喫煙、暴食などでストレス解消をすることが多い方は、かえって逆効果になりかねませんので注意しましょう。

現代社会において、完全にストレスフリーな状況を作り出すことは難しいですが、適度な息抜きや自分に合ったリラックス方法を見つけ、ストレスを溜め込まないようにしてください。

内因性カンナビノイド欠乏症にはCBDの摂取が有効

体内の内因性カンナビノイドが不足する、内因性カンナビノイド欠乏症の対策には、CBDやCBNなどの植物性カンナビノイドを摂取することが有効です。何故なら、植物由来のカンナビノイドを摂取することで、欠乏した内因性カンナビノイドを補えるからです。

植物性カンナビノイドは、不足している内因性カンナビノイドの代わりに、カンナビノイド受容体に結合することで、エンド・カンナビノイド・システムの機能の維持に役立ちます。

CBNについては以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご参照ください。
CBNとは?違法・危険じゃないの?効果や使い方を紹介

まとめ

今回ご紹介した通り、エンド・カンナビノイド・システムとは、心と健康のバランスをコントロールすることで病気を防ぐ、健康的な生活を営むために必要な体内のシステムです。

ただ、現代人は様々な要因で内因性カンナビノイドが欠乏しやすいため、CBDなどの植物性のカンナビノイドを摂取することで、内因性カンナビノイド欠乏症に対処することが必要です。

頭痛や吐き気、胃腸の不調など「日常生活でなんとなく不調を感じている」という方は、エンド・カンナビノイド・システムの働きが弱まっている可能性があります。

生活習慣を整えることに加え、CBDなどの植物性カンナビノイドを日常生活に取り入れることで体の不調を改善し、快活な生活を送りましょう。

この記事を書いた人

[監修]武井智昭のアバター [監修]武井智昭 高座渋谷つばさクリニック院長

2002年 慶應義塾大学医学部卒業。2002年から2004年まで慶応義塾大学病院研修医。2004-2011 平塚共済病院 内科・小児科医長。2012年より神奈川県内のクリニックを経て、2017年なごみクリニック院長、2020年高座渋谷つばさクリニック院長(内科・小児科・アレルギー科)

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